私はあの駄犬とは違うのです(管理者)
翌朝、メリッサはいつも通りの笑顔でギルドへ出社した。
「おはようございます」
職員たちからも、いつものように挨拶が返ってくる。
何も変わっていないはずなのに、
昨日の事を思い出すと、胸の奥がざらついたままで、今も本当は、可哀想な人だと思われてるのではと言う思いが纏わりつく。
『私は間違っていない』と言っても無駄なのは理解したからこそ、
今は証拠を集めなきゃ!
メリッサは謝罪と今後の話をする為に、ギルド長の所にすぐ向かい、
「ギルド長、昨日は申し訳ございませんでした」
深々と頭を下げる。
「ああ」
「もう体調も問題ありません」
笑顔を崩さずに言い切る。
「それで、昨日受付嬢のミアさんから連絡があり、《白銀の戦慄》の皆さんの案内を任される聞きました。
王都でもよくお話をするSランカーチームで、とても気さくな方達ですが、
国の調査団の方も一緒にとなると、ミアさん1人で受け持つのは大変です。彼女と二人で担当させて欲しいです」
(大丈夫。私はまだ出来る、こんな所で終わるもんですか)
胸の奥では昨日の悔しさがまだぐちゃぐちゃに渦巻いている。
それでもメリッサは、それを押し込めるように笑顔を保った。
ギルド長はそんなメリッサを見たあと、少し考え短く頷いた。
「ああ、分かった。なら2人で問題なく事を終わらせろ」
「はい!ありがとうございます」
メリッサは明るく答え、まだ自分の要望も通る
(大丈夫、頑張ろう!)
前向きな気持ちでギルド長室を出た。
朝のミーティングで、副ギルド長から本日の予定が告げられ、
国の調査団に加え、Sランカーチーム《白銀の戦慄》も来訪。
対応を任されるのは、メリッサとミアの名前が挙げられた。
その後も細かな打ち合わせが続き、
一通りの確認が終わったところで、メリッサがミアへ笑顔を向ける。
「ミアさん、お互い頑張りましょうね」
「はい!」
ミアは笑顔で答えながらも内心では身構え、
(はいはい、《白銀の戦慄》の担当を自分がするからって言いたいんですよね?
で、す、が、譲れないんですよ!
私がギルド長に指名されたんですから。
『ギルド長に指名されたのは私です』って、はっきり言ってやる)
「そこで担当なんだけど」
「はい」
(きたきた)
「私、調査団を受け持つので、
あなたに《白銀の戦慄》を基本お願いできるかしら?」
「いいえ、私がギルド長から指名……えっ?」
ミアの言葉が止まった。
「……あの?今、なんて?」
「私が調査団を受け持つので、白銀さんを受け持って欲しいと、揉めなくて良かったです。
ギルド長からの指名との話ですので、ミアさんにお任せします」
「……はい」
ミアが呆然としている間に、
メリッサはもう副ギルド長へ向き直っていた。
「副ギルド長、調査団の方のことでお聞きしたいことがあるのですが」
「ああ、何だ?」
「昨日、少し気になったことがありまして」
(国の調査団なら、上級魔導具や他の異常についても詳しいかもしれない。
昨日調べたログ1つとっても、理解できない方が多かった。
聞き慣れない言葉が多い。頑張らないと)
国の調査団と《白銀の戦慄》が到着すると、
ギルド職員たちが出迎えに集まった。
その中にメリッサの姿を見つけた瞬間、
《白銀の戦慄》のリーダーゼルクが、隣の仲間へ小声で声をかける。
「うわ……」
「ん?なんだ?」
ゼルクは視線だけを動かし、
少し離れた場所にいるメリッサを示した。
「あの受付嬢がいるギルドなのかー」
「ん?ああ、あの人?」
「いやー、なんかあの受付嬢、苦手なんだよね。グイグイ来るからw」
「あー、まぁ、お前さんほどの実力と顔ならな」
「重そうだし、味見程度では手が出せなくてさぁー、顔はいいんだけど、美味しく感じないんだよなぁ」
「クズな発言ありがとよwリーダー」
仲間の呆れた声に苦笑していると、
話題のメリッサと目が合う。
ゼルクは反射的に何事もなかったような笑顔を浮かべ、軽く手を振る。
「そういう所じゃね?」
「うるせぇw」
だが、メリッサは一瞬だけこちらを見ると、軽く会釈しただけだった。
そのまま視線を逸らし、国の調査団の方へ向かっていく。
「…………あれ?」
「……あれ?」
二人で顔を見合わせ、
「なんだよ。大したことねーじゃん。
誰でもお前に気があると思うなよ、リーダーw」
「いや、今までなら絶対もっと……」
「知らねーよw」
◇ ◇ ◇ ◇
ふぅ……危なかった。
この私が一人の運命を変えてしまうところだった。
周りをキョロキョロ見回しながら、
『私は、こんな所で終わるような人間じゃない』
その一文を、
『まだ自分の要望も通る』
に、ちょっとだけ書き換えた。
「……よし」
何事もなかったような顔で、
画面に映る数多の世界を、そして、その安定を確認する下級管理者。
サリーが元・犬なのをうっかり忘れたせいで、
上級登録魔道具の表示が「人型」で反応。
それがメリッサの運命をここまで、大きく狂わすとは思わなかった。
あの一瞬で、跳ね上がった乖離率。
慌てて人族に直したけど、
たった一瞬で、厄災育てるなんて、
「サリー怖いわ~なんなのあの子、クラッシャーすぎるでしょ〜」
『お前が雑な仕事するからだろ!』と
サリーがここにいたら文句が出てるところだが、本人は寝ている。
管理者は、メリッサのオリジン運命との最終乖離率、15パーセントの数字を見て、少し高いが、何も問題ない。未来は決まっていないし、15パーセントなら許容範囲内!
でも乖離率98%と厄災級5%発生は駄目なんです!
そして、完璧に処理したと思っている裏では
その一部始終を、上級管理者は見ていた。
ボーナス査定の評価は減
書き換えができるからと……
「しちゃ駄目ですよ」
未来を書き換えることはできます。
でも……自分勝手に書き換えない。
そういう選択をしてほしかったですね
まあ今回は、見て見ぬふりをしてあげましょう。
あの子も中級、上級を目指して頑張っていますし、
ふふ……色々頑張りなさい、LM-107
失敗をし挫折をしないと成長はしませんからね。
そして、チラッと手元のグレン・ハルヴァードの画面を見ると、
ふふふ……LM-107壊れないといいですね
上級管理者は楽し気に自分の席に戻った。




