女性の最低必要品はラビリンスである
「グレン様、査定が終了しました。
受付カウンターまでお越し下さい。」
アナウンスが入り
「まぁーグレン、明日の昼までには名前ぐらい知っておけよ」
笑いながら副ギルド長はカウンターの奥に消えていった。
精神がゴリゴリ削られたグレンは受付嬢から
「先程の必要な日用品リストです」
「あっ、そうだった!悪いありがとう。
えーと、石鹸、歯ブラシ、タオル……」
女の子と言えど必要な物は変わらないな。
グレンはこのまま靴を買い、
ご飯は屋台でいいだろうか?
そんな未来に進むはずだった。
しかし――
「ん?2枚目?」
紙をめくった瞬間、手が止まる。
『髪留め』
『フェイスタオル』
『クレンジング』
『洗顔料』
『化粧水』
『美容液』
『乳液』
「えっ?……なぁこれって」
「はい?」
「呪文か?」
「日用品リストです」
「……」
さらに目を下にすると、
『導入化粧水』×
『パック』×
『毛穴専用クレンジング』×
「このバツは?」
「今回は必要最低限なので外しました」
「これで最低限?」
「はい」
彼の中でドラゴン討伐より難しい何かが始まった。
「まだありますよ。裏をご覧下さい」
「まだ?」
『シャンプー』
『コンディショナー』
『リンス』△
『トリートメント』
『洗い流さないトリートメント』バツ
『ヘアオイル』バツ
『ヘアブラシ』
『ボディソープ』
『ボディスポンジ』
『髪パック』バツ
『集中トリートメント』バツ
『ボディスクラブ』バツ
『ボディクリーム』△
「髪を洗うだけでは?」
「だめです」
「本当なら、寝る前にはアイマスク、
美容リップ、ハンドクリームも必要です」
「これは……どこで買える?」
「ギルドでは扱ってません。
ポーション類ならありますが」
「そうだよな、買えないよな?」
受付嬢は笑顔で答えた。
「一番おすすめは、一箇所で購入しないことです」
「え?」
「髪、肌、保湿。それぞれ専門店があります」
グレンは遠い目をした。
「俺は、マルタばぁさんの店で揃うが?」
「男性でしたら、それで十分かと。
ですが今回は、女性の最低日用品ですので」
グレンは悟った。
女性の『必要最低限』という名のラビリンスは、
ダンジョン踏破より難しい!
「あっ、ありがとう」
その後グレンは、ピンクのフリフリ、華やかなパステルカラーや、
色とりどりの香りに囲まれ、店に入る前から大敗。
結局、マルタばぁさんにメモを見せ、笑われながらも何とか揃えた。
HPが10%以下のグレンは、もうご飯食べて寝よう、
今日はもう何もしたくない。
色々あの子にも聞きたいが、明日にしよう。
屋台で適当に購入した、ご飯と戦利品を両手に抱えながら、
ガチャッ。
鍵が回る音で、サリーの脳が一瞬で覚醒する。
(帰ってきた!?ご飯の匂いする……!!
今日ご飯ある!昨日の人は『くれる』と言ってくれなかったけど、
やっぱり、当たりだ!ご主人認定で問題なし!
ごは~ん、ご飯持って帰ってくるご主人は信用できる!)
玄関の扉が開いた瞬間、
「…………は?」
グレンは固まる。
玄関に、毛布もなく、床に直で寝てる少女。
「おかえり〜」
「え?え?え?
なんで玄関で寝てるんだ!?
寒くないのか!?
ていうか床!?
えっ?えっ?えっ?」
サリーはご飯の袋だけを見ている。
(まずご飯渡せよぉ。犬飼ったことないのか?
はっ!あれか!芸ってやつか?それをしないからか?
ならはやく!!!回転まで1発で決めるよ~
はやく~帰宅したらご飯を渡すのが礼儀~)
「……ご飯?マテ?」
「俺『家の中に居ろって』言ったよな?!」
「ん?……いるよ?」
(なんで怒られてるんだ?
ソファやベッドは高確率で怒られる。
床も場合にはよっては駄目だった。
指示がない時は、玄関もダメなパターン??)
「なんで駄目かわからないけど」
「は?」
「ご飯食べたら外に行くよ。ごめんな玄関で寝て」
「違う!!そこじゃない!!!」
「え?」
「なんで家から出ていく話になるんだ!?」
「え?」
「…………」
「…………」
「と、と、とにかく!とにかくだ、
今度から玄関では寝るな!わかったな」
「わかった」
(なんだ?結局居ていいのか。
ご飯が食べれればいいや、
ミルクも冷蔵庫にあるし~ご飯ご飯♪)
「すまん。好みが分からないから適当だけど」
「んーん、めっちゃくちゃ、美味しそう~
ありがとう♪」
「おっおう……」
(満面の笑顔……頑張ってよかった)
グレンは冷蔵庫からビールを取り出しながら、
「お前なに飲むんだ?」
「ミルク」
「……ご飯と合わないだろ?」
「合うよ?ミルク最高じゃん!」
「そうか?……まぁ人それぞれだからな……」
(今日は本当に疲れた~女の子って大変だなぁ
はぁ……もう風呂入って寝たい)
「お前、風呂どうする?あっ!いや!
変な意味で聞いてるんじゃないぞ!!俺はただ……」
「お風呂はいらない。あの身体濡らすやつでしょ?」
「いらないって……遠慮しなくていいぞ」
「遠慮?……してないよ?」
「だが……あ~もういい!先に入れ!」
(え?ご飯食べてますが?
まじか~なんだかなぁ……)
「いま?」
「なんでそうなる……ご飯食べた後でいい。
……頼む、俺はお前と普通の会話がしたい」
(もうやだ……女の子って怖い……)




