寝るだけで水かけられます
私は大通りを歩きながら、街中の看板を見上げた。
「ん?あれ?……読める」
『冒険者ギルド』
『武具店』
『宿屋』
『食堂』
「はぁぁぁぁぁぁぁぁ!?管理者めぇぇ!!」
街中に絶叫が響く中、半透明のポップウィンドウが立ち上がり、
そこには、特典:文字の読み書きと表示された。
「文字の読み書きぃ!?だからなに?!?」
尻尾が有るなら、ビタンビタンと打ち付け、
地面に穴が開く勢いだが、今は普通の人間、
しかもちびっこい女の子がわめいているだけ。
「私ね、今まで犬だったの!『わん』だけで生きてこれたの!困ったこと一回もないの!」
通行人がぎょっとして振り返るが、空を睨みつけてるサリーは止まらない。
「文字なんて、見てればそのうち覚えるでしょ!
言葉なんて、相手の顔見てれば何となく分かるでしょ!
それを特典って言われても、うれしくないの!!
……
ねぇ、チート特典ってさぁ……普通はもっと夢があるじゃん
ミルク飲み放題とか、1日3食ミルク付きとか、おやつ永久支給とか、そういうのじゃん……」
ガックリ肩を落とし、深いため息をつく。
「やんなる……管理者、絶対犬飼ったことない。センス無さすぎだよ、ヘタレ。ハゲ。」
はぁ、ここで文句言っても、仕方ないか。
働くならギルド行くしかないよなぁーとしぶしぶギルドへ向かって歩き出したが、
「はぁぁぁ……さっきご飯食べてから、寝てないし眠い……
おっ!ちょうどいい階段~ラッキ~!ギルドは、起きたら行くぞ〜」
太陽で温められた石階段に自然と体を丸め、膝を抱え、くるん。
自然と瞼が閉じた、お日様当たって気持ちいい~
すぅ……すぅ……
バシャァァァッン!!
「ひゃぁぁぁっ!!」
全身に冷たい水がかかり、飛び起きた。
髪から服から、ぽたぽたと水が滴る。
「な、なに!?」
目の前には、バケツを持った男が立っていた。
「こら!スラムの人間はここで寝るんじゃないよ!
これから営業なんだよ!邪魔だ。さっさと行きな!」
「え?寝てただけだよ?」
「だから邪魔なんだよ!」
「えぇ……まじかよ……」
男は追い払うように手を振る。
「ほらほら!どっか行った!」
「……人間ってさぁ、階段で寝てるだけで水かけられるの?」
自分の袖をぎゅっと絞ると、ぽたぽたと水が落ちた。
「犬だった頃は、道端で寝ても、誰も水なんてかけなかったのに!
犬の方が生きやすいじゃんかよ」
くぅぅぅ……。
「お腹すいた~ミルク飲みたいよぉぉ」
青空広がる街の中に私の声は溶けていった。




