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第8話 津宮椿ルートへ

 攻略本のページを捲る。

 最初に描かれている個別ルートのヒロインは、津宮椿。


 柿森さんはルートの解放条件があるし、残った鵜川先輩もネタバレ防止の観点から無し。先に攻略すべきは津宮さんだろう。


「やりますか……!」


 俺は津宮さんルートへ移行するために必要なものを買いにコンビニに寄ってから、学校へと登校した。


◆ ◆ ◆


 放課後、俺は買ってきたもの――履歴書を机に広げた。

 このまま書いて、津宮さんが働いているパン屋に持っていこうと思っていた。


「な~にやってるの? 物部くん?」


 隣からヒョコっと柿森さんが顔を出してきた。

 可愛らしい顔が近くて、心臓が飛び出そうになる。


「何って、履歴書書いてるんだけど」

「リレキショ? 何に使うの?」


 柿森さんは首を傾げていた。

 髪が揺れて、シャンブーの匂いがぶわっと香って来た。

 距離感が近いので、高頻度で女の子らしさを感じる。


「バイト始めようかと思って」

「ば、バイト!? 物部くんが?」


 急に大きい声を出す。俺が働き始めることが驚愕だったらしい。


「……そんなに驚く?」

「いや、物部くんってゲーム最優先だと思ってた!」


 隣の席だからなのか、俺のことをよくわかっている。

 確かに柿森さんの言う通り。

 俺はゲーム一筋。


 そして、今回はこのギャルゲー世界の攻略のため。

 という話があるのだが、それを柿森さんに伝えるわけにもいかず。


「ゲームのやりすぎで小遣いが足りなくて……」

「あ~、なるほどね。それは深刻」


 実際には小遣いの範疇で上手くやりくりしてるから問題は無い。

 けど、こう答えるのが一番それっぽいはず。


「でも、バイトかあ……ちょっとだけ憧れるなあ」

「憧れる!? 労働も勉強もクソ!」

「え~全部楽しいよ。きっと!」


 これだからキラキラ女子高生は……!

 

「そうだったら良いけど」

「まぁ、実際には嫌なことも多いかもしれないけど……受かったら今度遊びに行くね」

「…………お好きに」

「すごい間があったね」


 ちょっとだけ考えてしまった。

 俺は今、津宮さんのルートを攻略しようとしているわけで、そこに柿森さんが絡むとどうなるのか? 分からないので、すぐに口が動かなかった。


「……まあ、いっか! とにかく面接頑張って!」

「それなりに頑張るよ」


 柿森さんはキラキラとした笑顔をばら撒きながら、友達の方へと向かっていった。

 

 ……それなりに、とは言ったけど。

 かなり頑張りたい。だって、そうしないと津宮さんルートに入れないし!


◆ ◆ ◆


「いらっしゃいま……って本当に来たんですね?」


 パン屋の中に入るとレジに立っていた津宮さんが迎えてくれた。

 ジトっとした視線が向けられる。

 これ……あんまり歓迎されてなかったり?


「まあ、はい。履歴書持ってきたので、採用担当の人を呼んできてもらっていいですか?」

「……わかりました」


 一人ぽつんと店内に。

 待ち時間ってこんなに緊張するのか……。

 心臓が飛び出してしまいそうだ。


 少し経って、店の奥から出てきたのは二十代後半くらいの柔和な笑みを浮かべるお姉さん。怖そうな人じゃなくて良かった~。


「え~っと、物部くん、じゃあ今から面接始めたいけど問題ないかな?」

「はい。大丈夫です!」

「お、思ったより元気あるねえ。じゃあ、やろっか。こっち来て」


 頑張って声を大きくした。一応面接対策だ。

 そのまま店の奥へと連れていかれた。

 なんか書類がごちゃごちゃと置いてある空間で、狭い。


 それで店長、俺が対面で座る。

 もう一人、なぜか津宮さんが店長の横に座っている。なんで?


「じゃあ、面接を始めたいと思います。よろしくお願いします」

「よろしくお願いします」


 それから基本的なことを聞かれる。

 年齢、職業、シフトの希望、志望動機などは答えた。

 ここら辺は聞かれるかなと思って、対策してきたつもりだった。

 だけど、あんまり考えていなかった質問が飛んできた。


「長所と短所を教えてもらっていいですか?」


 面接、何聞かれる? と姉貴に相談したところ、バイト如きで長所短所なんて聞かれないって~と言われたから想定から外していた。


 なんて答えよう、と悩むけど、この場で考えるのは難しい。

 こうなったら素直に答えるしかない。


「長所は意思の強さです。やりたいと思ったことは絶対にやり通します! 短所は……そのせいで他のことを疎かにしがちなところです」

「ゲームやるためのお金を稼ぐのが志望目的だもんね。一貫してるねえ……まぁ、じゃあ聞きたいことは大体終わったかな。今日はありがとうございました」

「こちらこそありがとうございました!」


 大体終わったみたいだけど、結局津宮さんは何でここで面接を聞いてたんだろう。

 

「それで合否なんだけど……どう、椿ちゃん?」


 なぜ津宮さんに意見を仰ぐのか?

 もしかして、彼女がこの店の裏支配人!?


「……あたしの意見、要ります?」


 振られて当人も分かってないのかよ!

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