第7話 この世界は攻略可能らしい
ここ数日、『Timeless Days 完全攻略ガイド』なる攻略本(?)から得た知識を使って行動した。
まず攻略本の内容が正しいのかどうか。
とんでもないことだが、攻略本はヒロインとされる女子たちが放課後に行く場所を見事に当てている。
津宮椿がバイトしているパン屋。
鵜川須美が使っている第三自習室。
柿森海香が通っている病院。
確かに彼女らは、その通りの場所にいた。
柿森さんの病院については、日にちと曜日まで当てている。
主人公の放課後の動き方によってルートが変わるという攻略本の書き方は正しいように思える。
次は、ヒロインとの個別の邂逅を振り返ってみる。
津宮さんとのやり取りは、想定外のものではあった。
だけど、攻略本に描かれていた主人公のムーブを意図せずになぞってしまっていた。ムーブとか以前に、俺の挙動不審が引き起こした事象。
だが得た気づきがあった。
俺が主人公に成り代われるのかもしれないという可能性。
ここから俺は少し動きを変えてみることにしたのだ。
鵜川先輩。
攻略本の記載と同じように自習室で時間を過ごしたら、先輩が話しかけてきた。
まあ、ただ単にイヤホンの音漏れのせいかもしれないが。
翌日は、もっと意図的に動いてみた。
先輩が自習室で勉強をしていないことを指摘すると起きる会話……それを本当に発生させることができた。
柿森さん。
定期的に病院に通っている彼女に、時間を合わせて接触できた。
これだけでも攻略本の記載に正確性があることが分かる。
会話の入りも攻略本に書いてあった通りだった。
しかし柿森さんについては、もっと攻略本を読み進めないと分からないことが多い。ただ、情報は合っている。
これらの事象からある程度言えるのは……。
「攻略本の内容は正しい、そして主人公の役割を乗っ取れる?」
イベント・会話の発生を攻略本は当てている。
→これらのことから攻略本は信頼できる。絶対か、までは分からないけど。
主人公の役割を乗っ取れる? かについては確証はない。
だけど、主人公という役割が流動的なところから説明できなくもない。
このギャルゲー、Timeless Daysの仕様として主人公の入る部活や放課後の動きなどを自由に選択できる幅の広さがある。
こうなってくると思いつく考え方は二つ。
①主人公はスライムのように変幻自在でプレイヤーによって都度、個人情報が異なる存在として世界に生み出される。
②学校の男子生徒がプレイヤーの操る駒。選択された情報によって、選ばれる駒が異なる。
ただ①は否定しないとやってられない。
姉貴が大学の授業で習った~w とか言っていた世界五分前仮説みたいなものだ。
その仮説は文字通り五分前に世界はできて人生や歴史が設定として突然作られたという考え方らしい。
その体で考えるなら、この世界がプレイヤーのゲーム起動によって生み出されたものになる。この世界の歴史や記憶、知識がそこから生えてきた。
ただ、これに関しては否定できなくもない。
だって、仮にそういう世界なら俺が主人公の行動をトレースして排除されないはずもない。バグとして処理されるはず! もしくは俺がライバルキャラみたいな立ち位置に組み込まれるか……主人公の存在が定かじゃないからよく分からないが。
だから、②学校の男子生徒がプレイヤーの操る駒。選択された情報によって、選ばれる駒が異なる。
の考え方の方が有り得そうだと思ってしまう。
その考察で行くなら、俺は主人公の役割を乗っ取れてしまう。
なぜなら、主人公の属性はヒロインの攻略にあまり関係があるわけではないからだ。すべての部活や放課後活動に関わらずヒロインたちとの日々を過ごせる→特定の活動に依存したイベントは少ない、またはない。あっても大勢に影響ない。
「つまり……このギャルゲー世界は俺でも攻略可能ってことなのかな?」
色々、考えをこねくり回したけど都合よく考えている可能性はある。
何故なら、俺はゲーマーだから。
でもこの世が自分が大好きなゲームだって言うなら、ワクワクしないわけにもいかない。
そして、その可能性が高いなら、やりたいことは一つ。
ずっとそれを考えて動いていた。だから攻略本も先まで読んでいない。
「このギャルゲー世界、Timeless Daysの世界、俺がハッピーエンドでクリアしたい! ゲーマーならこれ以上テンションが上がることないって!」
Timeless Daysにバッドエンドがあるかは分からない。
ゲーム世界だからと言って、俺の手にリセットボタンはない。
失敗すれば終わりかもしれない……だからと言ってビビッてはいられない。
最高に楽しそうなものを目の前にして、止まれないから!
何かあったら攻略本もあるし! やるっきゃない!




