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第46話 攻略本の真実

 だが、その文字列には不思議と既視感があった。

 意味不明に既視感もクソもあるのか? とも思うがあったのだ。


「先輩……この『るそやたのといややよけ』ってどこかで見たことあるんですけど」

「奇遇だな! 私もだよ」


 先輩も見たことがある。

 つまり二人で見たことがある。


「……先輩、前に一緒にゲームしたとき暗号解きませんでしたっけ?」

「……! エスケープ因習村! たしかあれに使われているのは、シーザー暗号とアトバシュ暗号。前者は時間がかかるから、後者からやってみよう」


 先輩が『るそやたのといややよけ』を変換していく。

 アトバシュ暗号は、アルファベットとか五十音の並びを反対に入れ替えるやつだったはず……多分。


「できた。『るそやたのといややよけ』は『かみさまにひをささげよ』……言葉としてはつながった! このまま変換続けていくから、待ってて!」


 鵜川先輩は真剣に机に向き合い、暗号解読を開始した。

 俺はその様子をただ見守っていた。


「解読終わったよ。読んで」

「ありがとうございます! 読みます」


 先輩に渡された解読済みの文章を見る。

 そこに書いてあったこと――。


『かみさまにひをささげよという暗号を覚えているか。

 こんにちは過去の俺。

 この本は当時から半世紀経った俺が書いている。

 本に書かれているバッドエンドは全て本来の歴史で起こったことだ。

 本来の俺はもっと時間が経ってから三人の女子たちと関わることになり、その破滅を見ていることだけしかできなかった。

 ずっと悔やんでいた俺はタイムマシンを開発して、過去を変えることにした。

 攻略本という形をとったのは過去の俺が興味を抱いてくれると思ったからだ。

 津宮椿と鵜川須美を救う道筋はある程度、推察できたから俺を誘導した。

 恐らく過去が変わるタイミングでイレギュラーが起きただろうが、この本の暗号までたどり着けた俺なら大丈夫だと踏んだ。

 だが、柿森さんを救う道筋だけは俺には考えつかなった。助けになりそうなものは入れたつもりではあるが。

 今でもハッピーエンドへの道があると信じてる。よろしく頼んだ』


 読み終えて、俺は――。


「…………そういうことだったのか」


 納得できるかできないかでいえば、できる。

 ギャルゲー世界よりも、タイムマシンの方がまだ現実チックだ。


 だけど、本来の俺が辿ったルートは……。

 津宮さん、鵜川先輩、柿森さんが全員悲惨な最後を迎えている。

 ハッピーエンド厨の俺が、それに耐えられるわけもない――。

 それでも未来の俺は、諦めなかったのか……凄いな。


 俺なんてこの本を持っておきながら、一度柿森さんを救えないと思って折れたのに。


「物部くん……大丈夫か?」


 先輩が心配そうに声をかけてくれる。

 

「……大丈夫です。色々と腑に落ちるところはありましたし、未来の、今よりも酷い人生を送ったのに諦めてない自分に励まされました」

「そうか……」


 先輩は俺の答えを聞いて、優しそうに微笑んでいた。


「この暗号にあった助けになりそうなものというのは――この、無駄にいっぱいある金策、宝の地図のことだな」

「そうだと思います」

「恐らく未来で発見されたものなんだろうが、これをどう使えというのだろうね?」


 先輩はそう疑問だけ提示した。

 全部の宝を取りに行って、研究費を確保できたとしても柿森さんの治療には間に合わない。それこそ時間の問題が、未来の俺でなければ手に入らないだろう……?


 逆に考えれば未来の俺になら手に入る?


「先輩、タイムマシンってこの攻略本程度なら過去に送れるってことですよね?」

「そうなんじゃないか。何か制約がある可能性は否めないが、私には分からないよ」


 それならもしかして――。


「宝の地図で資金を手に入れて、それを宝石病の研究費にしてもらう。将来的に完成した新薬を未来の俺が、過去に送ってもらうという作戦はいけるでしょうか?」


 今完成できないのなら、未来から送ってもらえればいい。

 それが俺の柿森さんを救うための作戦だった。

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