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第45話 攻略本についての考察

 俺は翌日、鵜川先輩と待ち合わせた。

 場所は俺のバイト先のパン屋。


「――というわけになってったわけ」

「本当にお疲れさまでした……!」


 本題に入る前に最近の先輩のことについて聞いた。

 どうやら事件の関係者は大方逮捕されたらしい。それで先輩の身に差し迫った危険は無くなったと判断されたようで、現在は祖父母宅で暮らしていると。

 学校にも近日中に登校を再開すると言っていた。


「人生捨ててたから、今更大学進学とか言われてもねえ……でも、私なりに罪に償うためにはもっと勉強したいからね。頑張らないと」

「先輩なら楽勝なんじゃないですか?」

「どうだか?」


 先輩はフフッと笑っていた。

 そのまま緩い空気の中、本題へ足を突っ込もうとしていた。

 

「で、真剣な話があるって言ってたが、何だ?」

「先輩にある本の分析をお願いしたいんです。それがこれなんですけど」


 先輩は攻略本を見てギョッとしていた。 

 ここまで引きつった顔を見たことは今までになかった。


「な、なんだこれ!? わ、私が表紙になってるんだが……!」

「多分もっと驚くことになるので、先まで読んでください」

「どうぇ! 私の個人情報がこんなに……メインルート攻略? 物部くんと一緒にやったゲームとか、それに両親のことまで……!」


 先輩は都度反応しながら、攻略本を読んでいった。

 一通り読み終えたけど、困惑した表情を浮かべている。


「え? なにこれ? 君が作ったって言うなら、ドン引きなんだが?」

「いや、これはゴミ捨て場で拾いました。そして、俺はこの本を攻略本だと睨んでいました。この世界……『Timeless Days』というギャルゲー世界の」

「……!? シミュレーション仮説みたいな感じか! でも、この本は確かに神くらいしか生み出せないな……! おもしろっ!」


 先輩がわなわなと体を震わせていた。

 目に見えてテンションが上がっている。


「それが違うかもしれないって話をしたくて来たんですけど」

「ど、どういう意味だ!?」


 息荒げないでくださいよ……とは言いづらいのでそのまま話を進める。


「その本、重要なことなのに書いてないこととか、間違った記述があったりしません? 例えば先輩の罪悪感のことが書いてなかったり」

「言われてみれば……! そういえば微妙に私のプロフィールも違っていたしな。体重とか五キロくらい違うんだが」

「やっぱり、先輩もそうなんですか?」

「やっぱり!? やっぱりってなんだ?」


 俺は他のメインヒロインとも繋がりがあり、記述が違ったり書いてない出来事があったりするのを先輩に告げた。


「じゃあつまり君は、このギャルゲーの主人公の役割を乗っ取ってしまったと。滅茶苦茶面白いことしてるじゃん! もっと早く言ってよ~」

「言えませんて……」

「それはそうと、主人公の役割を乗っ取るなんて可能なのか? 本当に世界がギャルゲーだっていうなら、真っ先に君は排除される……私が開発者なら絶対消す。仮にこの世界が独自に動いていたとしても、主人公は別に出てくるんじゃないか? それで一度も接触されてないのはおかしいような。もっと別の見方をすれば、主人公は君である方がしっくりくるまである」


 先輩の考えにビックリする。

 かなり客観的だ。逆に俺がこの本を拾ったときにした考察の杜撰さが。


「先輩、俺はその本に出てくる第三のヒロイン……柿森海香さんを助けたいんです。この本の正体が分かれば、何か他に打つ手が出てくる可能性があると思うんです。だから、解析、分析をお願いできませんか?」

「え~~! 願ってもない! 楽しそうだからやる! それに君には世話になったからな。全身全霊でやらせてもらうよ」


 先輩は確かにはにかんだ。

 その眼にはワクワクとしたキラキラと、本気さが見える。


「はい! よろしくお願いします!」


 俺は先輩に頭を下げた。


 それから一日もしないうちに先輩から連絡が来た。


『攻略本についてわかったことがある。第三自習室に来てくれないか?』


◆ ◆ ◆


 柿森さんがいない学校。

 まだ治療のために入院しているようだ。

 彼女が隣で騒いでいてくれないのは……とても寂しい。


 放課後、俺は誰よりも早く教室から出て第三自習室に向かった。


 廊下を足早に歩き、目的地のドアを開ける。

 久しぶりに来たが、景色は一切変わらない。ただクーラーが稼働していて、夏の空間っぽくはなった。


 先輩は――いつもの定位置にいた。

 俺が入って来たのに気がつくと後ろを振り向いた。


「待ってたよ」

「来るの早すぎないですか?」

「まあ、秘訣があるんだよ」


 得意げに鼻を鳴らしていた。

 俺は先輩の隣の椅子に座る。


「それで、何が分かったんですか?」


 先輩は一枚のメモを俺に渡した。


「あの本、すべてのページに1、2文字の誤字がある」

「……?」

「流石に意図的じゃないかと思って、まとめてきたんだ。見て欲しい」


 先輩はそのメモを見せつけた。

 そこに書いてあったのは意味の分からない文字の羅列。


『るそやたのといややよけ――――』


 こんな感じで意味をなさない平仮名が連なっていた。

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