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第44話 メインヒロインに攻略本がバレた

「先輩、何なんですかこれ!?」


 津宮さんは俺が普段座っているキャスター付きの椅子に座り、片手に本を持って問い詰めてきた。


「い、いやあ、何だろうね。それ……」


 まずい。非常にまずい!

 上手くごまかす言葉を考えないと……。

 必死に頭を捻ったが、津宮さんは中を開いてしまった。


「ヒロイン紹介……? わあああああ! 私の個人情報がこんなに……キモ! いやでも、3サイズ違うじゃん! あたしはもっと……!」


 キモは非常にその通りでございます。

 俺はその場で土下座した。


「誠にすいませんでした!」


 津宮さんは攻略本から目を離してくれた。

 だけど、頬が引きずっていた。


「なんの謝罪ですか?」

「勝手に個人情報を覗き見たことです! 本当にすいませんでした!!」

「……あれ? てっきりこの本、先輩が書いたもんだと思いましたけど……違うんですか?」


 津宮さんは首を傾げていた。

 深く考えるように天井を見上げていた。


「もうちょっと読ませてもらっていいですか? 断りませんよね?」

「は、はい……好きにしてください」


 津宮さんは真剣に読んでいるようだった。

 頬が緩むことが一切ない。

 どんな反応をされるか一切、予想がつかない。

 

「……読みました」

「はい」


 判決を下される前の被疑者の気分だ。

 ちょっとでも刑が軽くなると良いんだけど。


「先輩、本当にこの本、何なんですか?」


 津宮さんが出した判決は、改めての疑問だった。


「俺に対して幻滅しないの……?」

「そりゃしますよ」


 さも当然かのように津宮さんは言う。

 

「でも先輩が自ら動いてあたしを助けようとしたのは変わらないじゃないですか。だから、嫌いになったりはしませんよ」


 それもまた当然かのように語ってくれる。

 優しい。


「……ありがとう」

「それよりも、ですよ! 先輩とかこの本へのキモさの話よりも、この本の正体の方が気になるんですけど! 教えてくださいよ」


 津宮さんは身を乗り出そうとしてやめていた。

 ただ、やはり気になるようだ。

 バレた以上、このギャルゲーのメインヒロインで当事者の一人である彼女に黙ってもおけるわけもない。


「攻略本だと思ってる」

「こうりゃくぼん? なんです?」

「ネットが発達してない時期にあった、ゲームのクリアを補助してくれる本」


 津宮さんはかなり大きく首を傾げた。

 ゲームに詳しくもなければ、そういう反応になるのは頷ける。


「全く意味が分からないんですけど……」

「俺の予想だけど……この世界はギャルゲー、ヒロインと疑似恋愛するゲームね。『Timeless Days』の世界なんだよ。で、なんでか分からないけど、俺がゴミ捨て場でその攻略本を拾った」

「つまりあたしと先輩との間で起きた出来事はゲームのイベントだって言いたいわけですね……そしてその根拠はこの攻略本になるわけですか」

「そういうこと」


 津宮さんは自分で納得して頷いていた。

 だけど、再び天井を見上げて考え始めた。


「やっぱり、おかしくないですか?」

「なにが……?」

「だって、あたしが山で滑落したこと書いてませんよね。ここがゲームの世界で、そのクリアを補助する本だって言うなら、あんな大きなイベントを書かないとかあり得るんですか?」

「確かにそうだけど……バグじゃないの」

「バグ……? そういう考え方もできますけど。でも、それじゃあ説明もつかないこともありますよ」


 津宮さんは攻略本のあるページ、ヒロイン紹介のところを見せる。


「は、恥ずかしいんですけど言います……ここに書いてある3サイズ、全部が間違ってます。入学前に図ったときとも違うと思います」


 頬を赤らめる津宮さん。俺も恥ずかしい。

 それよりも、その指摘がかなり重要な発見なのは間違いない。


「ほ、ほんとう?」

「本当ですよ! ていうか、ここで嘘つく意味ないですって! 恥ずかしいんですから、言わせないでくださいよ」

「ごめん……」


 津宮さんは頬を膨らませてしまった。

 ただ、あまりにも重大なことのような気がしたので聞き返してしまったのだ。


「本当にこの世界を俯瞰して見れる存在が書いた攻略本なら、絶対にこんなミスはしないはずじゃないですか? だから、これがこの世界の攻略本だっていうことは、ちょっとおかしいような」

「確かに……!」


 首を傾げすぎて取れるかと思った。

 

 もしかしなくてもこの本にはまだ秘密がある。

 それを解き明かせば、何か他に見えてくるものがあるかもしれない。

 

 もっとこの本を分析してみよう。

 そのためには――鵜川先輩の力も借りたい。

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