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第31話 潜入調査

 俺は鵜川先輩の母親の連絡先にメッセージを送ってみる。

 夜の時間帯だったこともあってか、すぐに返信が来た。


『初めまして。須美先輩の友達の物部次郎と申します』

『こんばんは。須美の母親です』


 俺は、まずは普通のやり取りを装うことにした。

 先輩思いの後輩を装って……別に事実ではあるけど。


『この前お会いしたときから思っていたんですけど、仲悪いんですか?』

『それ聞いちゃう?』

『気になったので』

『お恥ずかしい話なんだけど、ここ数年はずっとああなのよ。反抗期かしら』


 白々しい会話だ。

 誰が悪いかは明白。対面で話しているわけでもないのに。イライラする。


『もし良ければ須美先輩とお母さまの綱渡しをできませんか?』

『嬉しい! じゃあ、実際に会って話したいからここに来てくれないかしら』


 鵜川先輩の母親からお店のURLが送られてくる。

 それから、日時を指定して話を終えた。


「ここまでは計画通りか……」


 そのお店は招待制の喫茶店。

 鵜川先輩の母親はそう言っていたが、実際はバーである。大麻を吸う。

 未成年向きにもサイトを作っているあたり……悪質さに隙がない。

 そこに招待してくれるのも、攻略本の通り。


 あとは、証拠集めのための準備とリハーサル。

 攻略本に書かれている状況を全て暗記して、向こうでどんな事態が来ようとも切り抜けられるようにする。

 

◆ ◆ ◆


 鵜川先輩の母親と会う日。

 敢えて制服で行くことにしたけど……バレたら退学じゃ済まないだろ。

 ただ、もう覚悟は決めている。今更逃げたりはしない。


 店の近くで緊張しながら待っていると、鵜川先輩の母親がやってきた。


「そんなに緊張する?」

「……! 招待制のお店とか言ったことないので、どうしても」

「そういうものなのね。私が、貴方くらいの年のころはそういう大人びた場所に憧れていたけど」

「自分、陰キャなんで……」


 一瞬、ドキッとしたが上手くごまかせただろうか。

 信じないとやってけないが。


「それじゃあ案内するわ。お店に」

「お願いします」


 店の中に入ろうとするが、俺だけ止められた。

 入口には成人男性が一人……書いてあった通りだ。


「ごめんなさい。初見のお客さんには、一応荷物チェックをすることになってるの」

「そうなんですか?」

「ええ、そういうものなの。ごめんなさいね、一つ奢るから」

「ありがとうございます!」


 俺は学校で使っているリュックを渡した。

 隅々まで見られているが、そこには何も入っていない。

 ズボンのポケットにはボイスレコーダーが入っているけど。

 

 そのまま店内に入っていくと、そこには誰もいなかった。

 この店のオープンは十八時過ぎ、放課後すぐの時間帯である今は誰もいない。

 誰もいないというか、警戒させないためなんだろうけど。


 席に着くとドリンクを注文、俺は水でいいですと押し切った。

 それにしても、嗅いだことのない匂いが充満している。

 独特の甘い匂い……乾燥大麻なのだろうか。


「クッキーも頼むわね」

「あ、お願いします」


 先輩の母親が言っていたが奢り……奢りという名の大麻体験をさせられるイベントなんだろう。

 本当によく練られている。何の情報もなしにここに誘われれば、違法薬物を摂取させられること間違いなしだ。


 運ばれてきたコーヒー、水、クッキー。

 一応軽く匂いを嗅いだが、薬物は混じっていなそうだ。実際にはよく分からないが、飲まないわけにもいかないだろう。


「ここのお店はクッキーが絶品なのよ。食べてみない?」

「……実は俺、ここに来る前に買い食いしちゃって、お腹減ってないんです。でも、気になるので持ち帰っていいですか?」

「いいわよ! ぜひ、お家で食べてね」


 この提案の方が嬉しいはずだ。

 あのクッキーには麻薬成分が含まれている。家で家族に広めてもらえる持ち帰りは好都合なはず。俺も食べなくて済むし、証拠品もゲットできてウィンウィン。

 これで後は適当に話して帰ろう。


 それからは鵜川先輩について当たり障りないことを話した。

 開店時間が近くなったので、俺は帰ることに。


「送っていくわ」

「ありがとうございます」


 鵜川先輩のお母さんと並んで歩く。

 ここまでくれば、あとはどうにでもなる。人通りの多い場所で、周囲の眼が沢山ある。多少俺が言いたいことを言ってもトラブルにはならないはず。

 だからどうしても、この人に聞きたいことがあった。


「須美先輩と仲が悪くなった本当の理由、話してくれません?」

「……本当の理由って?」

「分かってましたよ。あそこが麻薬を吸う場所だって……先輩と仲が悪くなったのは、それが原因なんじゃないですか?」


 ずっと気になっていたことがある。

 鵜川先輩は賢い。だから、彼女のバットエンドにはおかしな点がある。

 その気になればいつでも両親を逮捕させることができたはずで、十八歳になってから自分もろとも逮捕してもらうというのは悠長が過ぎる。被害が拡大することが分かっていながら、先輩がそのリスクを放置したままにする理由。


 それは攻略本には書いていなかった。

 だからどうしても聞きたい。


「話さなけば、どうするの?」

「警察に出ます」

「いいの? 須美も捕まるけど」

「……とにかく話してくださいよ。そうすれば刑務所行きは勘弁してあげます」


 イライラする。

 どうして、この人はこちらが情報を握っているのに余裕そうなのか?


「ま、いいわ。話してあげる。私たち家族のことを」

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