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第21話 宝さがし(後編)

 津宮さんが滑落するなんて攻略本には書いてなかった。

 どうしたらいい……!

 なんでこんなに大事なイベントが書いてない!

 

 分かってる。分かってる、とりあえず警察と姉貴を呼ぶべきだ。

 スマホを使って電話をかける。

 その両者、警察と姉貴に連絡して言われたこと。


「助けに行かないでください」


 それで、そこから? 

 ここで俺は待ってれば良いのか?


「津宮さん!」


 大きな声で彼女の名前を呼ぶ。

 だけど、返事が返ってこない。


 ど、どうしたらいい? 


 勝手で、嫌な想像が頭の中を埋め尽くす。

 実は落下した際に木などで切って出血している、変なところを打って命の危機がある状況。今すぐ治療しないと、将来的に障害が残る可能性。

 嫌な想像しか浮かばない。


 だめだ、何を考えても良い方向に転ばない!

 

 これからする自分の決断が愚かなことは分かっている。

 でも、ここで動けないくらいなら――死んだ方がマシだ。


 津宮さんを助けに行く。

 絶対にハッピーエンドで終わらせるんだ!


◆ ◆ ◆


―津宮椿視点―


 痛った……。

 全身くまなく痛いけど、一番痛みが強いのは足だった。

 体が動かないし、頭をぶつけたのか意識が朦朧としている。


「津宮さん!」


 遠くから先輩の声が聞こえる。

 あ、そうだあたしは――斜面に足を取られて、落ちたんだ。


「せ、せんぱい」


 あの人の声に応じるように声を出すが、どうしても大きな声は出なかった。

 これじゃあ、先輩を心配させちゃう……。


 あたし、このまま死ぬのかな。

 そんな輪郭のない未来が、なんとなく向かってきている気がした。


 でも、それでも良いのかもしれない。

 

 こんなときに――こんな時だからこそ、考えるのを止められれない。

 頭の中に浮かび上がるのは家のこと。


 両親、特にお母さんがあの闇金業者から臓器売買の条件を飲んだことに、裏側的な理由があったのを何となく分かっていたからだ。


「お兄ちゃんのいる世界に行きたい」


 両親は死を望んでいるのだ。

 だから、エスパーとかいう意味の分からない希望に手を伸ばせた。

 失敗しても死ねるから。


 私もその考えに……どうなんだろう。

 両親の前では納得していた。


 二千万の借金なんて返せるはずもないのに、バイトして抗ってた?

 それとも闇金業者に、返済の意思が全くないことを悟られないようにするためのアリバイ作りだった?


 分からない。

 あたしには分からない。

 ずっと考えないようにしてた。


 けど、借金を返せると、あの金貨の山を見てワクワクした。


 もうあんな生き方をしなくて良い。

 普通の……幸せな暮らしをすることができるんじゃないかって。


 たぶん、アレがあたしの本音。

 

 お兄ちゃんには悪いと思ってる。

 本当にお兄ちゃんのことを想うのなら、両親のように早く死ぬことを目標にするべきなのかもしれない。


 あ、そっか――あたしは生きたいのか。


 死ぬ前に本当の気持ちに気づけただけ、ラッキーなのかな……?


 目を閉じようとした途端、目の前に人影が現れた。


「津宮さん! 大丈夫!?」


 物部次郎先輩。

 最近出会った、こんなあたしを気にかけてくれるヒーローみたいな人だった。


◆ ◆ ◆


―物部次郎視点―

 

 津宮さんはボロボロだった。

 土埃と落ち葉に体がまみれており、鮮血が足を赤く染めている。


「せ、せんぱい……?」

「……! 意識があるのは良かった」


 ケガ人を急に動かすのはリスクだ。

 だけど、この出血をこのままここで放っておくわけにもいかない。


「津宮さん、ちょっと担ぐね」

「は、はい……痛っ」


 津宮さんを背負ったはいいが、俺の足が悲鳴を上げている。

 普段の運動不足、山登りと金貨掘りで疲れた身体には重労働が過ぎた。

 それでも、一歩一歩、山中から抜け出すために進む。


「せ、せんぱい、無理なら、置いていってください」

「な、なにを言って……」


 津宮さんは余裕があるかのように、あははと笑う。

 

「あたし、今、結構幸せなんです。希望を、持つことができたこと、なんて、今日が初めてなんてです。だから――今、死ぬなら……」


 津宮さんは俺に体重を預けながら、ろくでもないことを言う。


「そんなの全然ハッピーエンドじゃない!」

「あたしに、とっては……」

「俺にとってのハッピーエンドじゃない! それに津宮さんだって、普通の高校生活を送りたいって言ってた。そこまでやってハッピーエンドだから!」

「で、も先輩……」


 ぬかるみに足をとられ、躓きそうになる。

 ぎりぎりのところで踏ん張る。

 

 ここまで来てバッドエンドなんて、絶対に許してなるものか!


「ハッピーエンドしか許さない! 俺は自分のプレイスタイルに嘘はつけない!」

「せ、ん、ぱ……」


 体が限界を迎えてからも、歩き続ける。

 津宮さんを一刻も早く病院に連れていく。


 ただ、津宮さんからの反応が薄くなってきている。

 いや信じる。俺が急ぎさえすれば、どうにかなる。


「ハッピーエンド……ハッピーエンド!」


 ぶつぶつと呟いて、精神を昂らせて歩き続けた。

 

 何十分か進むと、人だかりが見えてきた。

 俺はあれが呼んだ警察官たちだと決めつけて叫ぶ。


「要救助者ここです!!」


 聞こえたのか、彼らがこちらにやってきた。

 すぐに察したのか、津宮さんを担架に乗せてくれた。


「津宮さんをお願いします……!」


 ただ、自分もかなり限界だったのかその場に倒れてしまった。

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