第20話 宝さがし(中編)
津宮さんが、黄金……大判小判らしきもに手を伸ばした。
「ほん……もの……?」
「そうだと思います」
津宮さんは表裏を確認している。
そして、穴の中にあった金貨を取り出し始めた。
「百枚くらいありました。これが一枚二十万円くらいすれば……二千万」
「鑑定してもらわないことには分からないですけど……」
攻略本の方には何となくの値しか書いていなかったため、厳密な額は俺でも分からない。分かっていたけど、本当に見つかるとテンションが上がる。
あとはこれを持ち帰って換金さえすれば、借金を返済して鬱エンドは回避!
一方の津宮さんは風呂敷の上に置いた小判を見つめて固まっている。
「ほ、ほんとうに二千万なんですよね……」
「そ、そうだと、思うよ」
さっきまで疲れて津宮さんに瞳に異常なほどの熱がこもっていた。
動きたくてたまらないのか、全身が興奮で揺れている。
「これ、早く持って帰りましょう!」
津宮さんは早い手つきで金貨を包み、自分のリュックにしまっていた。
土で汚れた服を手で払って、俺を促す。
「でも、疲れてないですか? ちょっと休みません?」
宝だ! やったぜ!
という気持ちは当然あるが、正直疲れも凄かった。
俺と同じ作業をしていた津宮さんが疲れてないはずもない。
なのに、ギラギラと光るあの眼。上手くいっているのに、不安がつきまとう。
「大丈夫です! ここまで体の調子がいいのは、生まれて初めてだと思います。さぁ、とっと帰ってお祝いパーティーしましょう! 折角、今日のためにお母さんとお弁当を作って持ってきたので!」
津宮さんの手作り弁当は魅力的だ。
だが、そんなことはどうでもいいくらい、良くない予感がしている。
「絶対休んだ方が良いって」
危機感を伝えるためなのか、それとも自分にも余裕がないのか敬語が抜けてしまった。
「大丈夫ですって! さあ、早く帰りましょう! 置いていっちゃいますよ」
津宮さんは俺の静止を無視して動き始めていた。
山中で彼女を一人ぼっちにするわけにもいかない俺は、疲れた身体に鞭を打って立ち上がった。
足早に歩きながらも、テンションが上がりに上がった津宮さんは絶えずに話しかけてくる。
「これで借金返したら、普通の高校生できますかね?」
「俺はそうなって欲しいと思いますけど」
「先輩は良いこと言いますね~。私だって休日は友達と遊びに行ったり、部活始めちゃったり……か、彼氏なんかもできちゃったりするんですかね」
「最後の部分は知らないけど、前半二つはできるようになるんじゃないか?」
「うひゃー! これからの高校生活が楽しみ~!」
やっぱり俺の勘違いだった。
津宮さんは疲れが吹き飛んでいる。これならちゃんと帰れるはず。
「でも普通の生活ってよく分からないんですよね」
「そうなの?」
「だって、小さい頃から両親はお兄ちゃんに付きっ切りで。お兄ちゃんが亡くなってからは借金のことがあったりで、まともな生活ってしたことないんですよ」
津宮さんは、今まで溜まりにたまった感情の蓋が外れたのか、底抜けに気持ちがあふれ出している。過去の抑制、未来への展望。
生き生きと話している津宮さんを見てると、こっちまで楽しくなってくる。
もしかして、これが彼女の素なのかもしれない。
「あ、そろそろ出口ですね」
「だな」
車道に続く斜面を登る。
ここさえ、上がり切れば、もう本当にゴールだった。
「でも、やっぱりバイトは止めないかもしれません」
「……なんで?」
「先輩にお返しできてないからですよ! クレーマー、あの人は闇金業者の人だったんですけど……から助けてもらったりとか、アイス奢ってもらったりとか、お宝譲ってもらったりとか。いっぱいお返ししなくちゃいけないので。それ以外にも理由はありますけど――ね」
もう車道がそこまで迫っていた。
だけど、津宮さんが後ろを振り向いた。
「せんぱ――」
だが、足を捻ったのかよろけてしまう。
そのまま津宮さんは斜面に足を取られて、転がり落ちていった。
滑落……よくニュースで起こるような事故が起きてしまったのだ。
「津宮さん!」
俺は彼女の名前を叫んでいた。




