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第14話 アイス食う

「アイス……いいですね!」


 バイト終わりだと言うのに、顔つきが一気に明るくなった。

 攻略本に書いてあった通りだ。

 津宮さんの好物はこの嬉しそうな反応からアイスだと言うのは間違いないようだ。


「なんか駅前の方に遅くまでやってるアイス屋さんがあるらしいので、そこでどうですか?」

「ぜひぜひ、行きましょう!」


 二人並んで歩く。

 こういう時の無難な会話って何なんだろう。攻略本はそこら辺の詳しいことまで書いてないので、自分で考える必要性がある。

 

 どうしてあんなにシフト入っているのかが一番聞きたい。

 だけど、もしマイナスな理由でバイトをしているのなら、俺に話したくないこともあるはず……というか今までやったゲーマーの勘として、何らかの伏線になっているのはさすがに分かる。

 重大な問題に触れるのなら、そのタイミングは推し量る必要性がある。


「津宮さんは高校生活には慣れました?」


 というわけで、何気ない会話をすべきなんじゃないかと思った。

 だけど津宮さんは、「あはは……」と乾いた笑い声をあげていた。


「宿題の量が半端じゃないですね……ちょっと時間が足りなくて、大変です」

「あ~、分かります!」


 中学とは量も違うし、理解が難しいことも多い。

 入学したては躓きそうになるのも分かる。


「先輩、乗り越えるコツありません?」

「えっ……うーん」


 津宮さんは本気で困っているのだろう。

 長時間バイトもしている以上、帰宅部を極めていた俺より時間がないのは明白。

 俺はちょっとだけゲームの時間を削ったは答えにならないだろう。


「まあ、頑張ってやるしかないですよね。あ~時間が勿体ないな~」


 共感を示そうとしたけど、それしかしてないな俺。

 忙しい津宮さんのために、何かしてあげられることはないか。

 何か閃きそうで、微妙にいい案が出てこない。


 上手い答えが出ることなく、だらだらと会話が続いた。

 そのまま歩いていると、目指していたアイスクリーム屋さんに着いてしまった。


「ここずっと来たかったんです!」

「それなら良かったです」


 偶然! のような反応を装ってはいるが、知っていた。

 駅前のアイス屋くらい、暇なときに行けばいいのに。やっぱり忙しいんだろうな……とさっきのヘルプが頭にちらつく。


「遠慮しないで好きなもの食べてください。おごります」

「わ、わかりました。でもどうしよう。バニラに、チョコレートに、ストロベリー、どれも美味しいらしいし……」


 どうやら、津宮さんは三種類で悩んでいるらしい。

 ここの最適解を俺は知っている。

 うわあ、攻略本で見たところだ! ただちょっと恥ずかしくはあるのだが。


「津宮さん、じゃあ三つとも頼みましょうよ」

「えっ、それはさすがに悪いですよ……」

「大丈夫、大丈夫! 俺、来月からはバイト代もらえるので! 店員さん~、注文良いですか? バニラとチョコレート、ストロベリーをトリプルで。あと、ラムレーズンください」


 津宮さんに止められるよりも早く、注文してしまった。

 彼女を見ると、あわあわとして困っているように見えた。


「す、すいません。勝手に注文しちゃって……」

「…………」


 津宮さんは顔をそっぽ向けて黙ってしまった。

 こ、攻略本!? これが正解の選択肢じゃなかったの?


 コーンに乗せられたアイスを受け取る。

 津宮さんは黙ったままだが、自分の分は取ってくれた。

 お金を払い終わり、席に座る。


 彼女は無言で、一番上に載っていたバニラアイスを食べた。

 そして小さな声でボソッと呟く。


「……お、おいしいです。とても」

「よ、よかったです。勝手に頼んでごめんなさい……」


 反省の意を表して、頭を下げる。


「そんなに謝らないでください。なんていうか、どうしたらいいか分からなくなって黙っていただけなので、怒ったりはしてないんです」

「でも自分で言うのもアレですけど、過ぎたるは及ばざるが如しなので……」


 ちょっと意味が違うのは分かってる。

 けど、互いの関係的にはやりすぎ感があるのは間違いない。


「……じゃあ、どうして奢ってくれたんですか?」


 事実だけを答えるなら、好感度を上げたいから、になる。

 しかしそんなことを言うわけにもいかないし、言いたくない。


「自分のため、かな?」

「どういう意味なんですか?」

「バイトでこれからもお世話になるし、頑張っている津宮さんにはちょっとでもリラックスして欲しいと思ったからかな」


 攻略したい! も本音だけど、頑張っている彼女に対して何かしてあげられることはないだろうか……と思っているのも本音なのだ。

 

「そ、そうでしたか……ありがとう、ございます」


 津宮さんはちょっとだけ目が細くなった。

 俺の言葉を聞いて安心してくれた……とかなら嬉しいが。


 自分で思考をまとめていて思ったが、津宮さんのために動きたい気持ちがある。

 こういう間接的なケアも悪くないけど、やっぱり彼女の勉強の大変さを軽くしてあげる何かが欲しい。


「そうだ……話変わるんですけど、もしよかったら今度、勉強会しませんか?」


 だったら、たいして勉強できない俺だけど、一年先輩のアドバンテージを生かす!

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