帰りましょう ーーエタナ視点
幻覚から解き放たれた三人は、状況が呑み込めずにいました。
健太はエターナルパーフェクトがサッチーの創作ではなかったのかと叫び、彩乃はこんな展開は原作にないと戸惑い、邪神の存在をめぐって考察を始めました。
彩乃は、原作で川端ことねがぶつぶつ呟いていた邪神のことを思い出し、最後に邪神もどきと対峙する流れだったと述べました。
なぜサッチーが自分こそ本物の邪神だと言い張るのか、なぜ悪霊が謝っているのか? 三人は次々と推測を重ね、すっかり考察に花を咲かせていました。
バトルもできて考察もできるとは欲張りなものだと、サッチーは少々羨ましそうでした。
その時、青年はある可能性に気づき、失礼を承知でサッチーに尋ねました。
貴方が現界した依代は、田中という名ではありませんか、と。 サッチーが、いかにも我が依代は田中だと芝居がかって応じると、悪霊ーーいえ、その正体である青年は、はっと声を上げました。 お菊、小太郎、待たせた、と。
彼は平八郎と呼ばれた人物であり、サッチーのご先祖であるお菊の夫だったようです。
青年の霊体は、季節外れの蛍のように淡く舞いました。
サッチーはその幻想的な光景をすかさずスマホで撮影し、瑞稀へ自慢の投稿を送っていました。
古い祠に舞う蛍、と。 ほどなく瑞稀から返信が届きました。
胸騒ぎがする、身近な人が危ない目に遭っていないか心配だ、という内容でした。
サッチーは、この世界が瑞稀をどう扱おうとしているのか、何かを思ったようでした。
物思いを破ったのは、彩乃の抗議の声でした。
自分の出番を返せ、ピンチに陥ったその時こそ秘めた力が覚醒して悪霊を倒す予定だったのだ、と泣き崩れたのです。
湊も健太も同様で、奇跡の必殺技で悪霊を貫くはずだった、ことねの意思が乗り移って倒すはずだったと口々に嘆き、中二病に先を越されたとまで言い出しました。
ーーもっとも、あなた方も立派に中二病でしょうに、と私は思いました。
サッチーは自分こそ救世主だと胸を張り、三人を説教にかかりました。
深夜の山頂に、若者たちの悲鳴が響いたのでした。
やがて、瑞稀がやって来ました。 皆が無事なことを不思議がる彼女に、私は告げました。 おかしいのはあなたです、瑞稀、と。
瑞稀は、今回のことも、あの三人組のことも、すべて自分の存在のせいなのだと自らを責めました。 私は、立場上それを否定はしませんでした。 ですが、貴方は気にしすぎです。
ずっと心配していたからこそ、こんな所まで来て幻覚にもかかってしまった。 私がいなければ、今頃あなたは廃人になっていたでしょう。 瑞稀は、彩乃にこの場所を教えたのは自分なのだから、何が起きても仕方なかったと諦めるように言いました。
私は、ただ静かに帰宅を促しました。 疲れたでしょう、帰りましょう瑞稀、と。
私も疲れました。 後は頼みましたよーー
以上、ここまでの語り部は、エタナがお送りしました。




