悪霊が封印される話
ここは、山頂の寺。 そこに暮らす者の名前は川端。
ここの主である川端十三郎は、この寺で剣道場を営む男でした。
「お師匠様、本日も指導いただき、ありがとうございました」
「うむ。 また明日来るがよい」
「はい! 失礼します!」
最後の門下生の『高坂』と『櫻井』を見送った十三郎は、側で自分のことを見ている娘に声をかけました。
「さて、ことね。 今日の晩御飯を作るぞ」
「うん。 父上」
ことねは、まだ片手で数えるほどの歳でした。 だが、幼いながらも立派に見えました。
今日もこれから食事をして、後は寝るだけーー十三郎はそう思っていました。
しかし、夜になると、不穏な気配を感じました。
「⋯⋯気配がするな。 ことね。 ついて来い」
「はい、かしこまりました父上」
未知の状況で離れるのは悪手。 そう判断した十三郎は、ことねを連れて外に向かいました。
かくして、そこにいたのはーー
『ここから感じるでござるぞ⋯⋯霊力を!』
黒い影のような霧状の悪霊でした。
そして、その悪霊は霊力の高い子供ーーことねを狙っていました。
『その女を拙者によこせ。 その女の魂。 そして、お主の絶望を喰らい、拙者の糧になるのだ!』
「させるわけがないだろう、悪霊め! 成敗してくれる!」
十三郎は手元の刀を抜き、悪霊に斬りかかりましたが、相手は霧状の無形物ーー攻撃はまるで通りませんでした。
「父上⋯⋯」
「大丈夫だ、ことね。 ⋯⋯悪霊め! うちの娘には、近づけさせんぞ!」
十三郎は首に下げていたアクセサリーを、悪霊に向けました。
その途端、悪霊は苦しみ出し、やがて遠くに飛んで行きました。
「父上!」
「ふぅ、危なかった。 このアクセサリーのおかげか⋯⋯」
十三郎は、首元のアクセサリーを見つめました。 これは、今は亡きことねの母が持っていた形見でした。
十三郎はそれを、ことねに渡しました。
「ことね! ⋯⋯奴はまた来る。 次は護りきれないかもしれない。 だから、ことね! お前があの悪霊を封印するんだ!」
「このアクセサリー、不思議だね。 なんだか、力が湧いてきたよ」
「⋯⋯そうか。 なら、やっぱりこれはお前が持っていた方がいいな」
十三郎は、ことねを優しく抱きしめると、一緒に部屋の中に入って行くのでした。
ーー数年後。
ーーエターナルパーフェクト様! 拙者に力を! 拙者は! 貴方様の使徒! 必ずや貴方様のお役に立って見せます! 拙者のすべては貴方様のためだけに!
『ヨカロウ、オマエハイイ、ワレノコマダ』
ーーそう。 この悪霊は、別の悪霊に取り憑かれていたのです。
黒い影が再び、山頂の寺にやって来ました。 悪霊はこれから味わう感覚を想像して、興奮していました。
悪霊が目的の人物を見つけると、彼女はこちらに振り向きました。
『その魂、今喰らってやろう!』
「悪霊封印陣発動!」
『なに! なんだこれは!』
「悪霊よ、その魂をこの場に閉じ、力を封じ、この世界から隔離する!」
『貴様!』
彼女ーー当時は少女だったことねは、悪霊を祠に封印することに成功しました。
悪霊にとってのひと時は、幼い少女を、立派な祓い屋にするには十分でした。
「ことね! 大丈夫か!」
「父上! 私、やり遂げました! 悪霊を封印できました!」
悪霊を封印できたことを喜ぶ二人ーーそして、これからこの家は代々この場所を守って行くのでした。
『オノレ、イマワシキ、カワバタコトネ。 ノロウ、エイエンニ、ノロッテヤル』
◇◇◇
柳田家で健太と秀五郎に話を語る湊。
「以上が川端家とあの悪霊の繋がりというわけだ⋯⋯そうなんだろ、高坂湊」
「はい、その通りです。 そして今、その封印が解けそうになっています」
「⋯⋯使いの者の報告によると、不思議とあたりが暗く感じるそうだ」
「ことねは、悪霊を封印できるのか?」
「いいえ。 ことねは、この件には関わりません。 代わりに⋯⋯」
「⋯⋯私が、悪霊を倒します!」
そう言って柳田家に現れたのは、桐原彩乃でした。
「⋯⋯ふむ、チェンジで」




