ことねの気持ち
文化祭の喧騒の中、ことねと湊は仲良く歩いていました。 二人は並んで文化祭を巡っているのでした。
「負けちゃったよ! 私の引っ掛けが通用しなかった!」
「⋯⋯まあ、それはことねがわかりやすいから」
ことねは、湊に抱きつきながら話を続けました。
「それにしても、凄いね文化祭! めちゃくちゃ賑やかだよ!」
「ことね、この学校の伝統行事だぞ! 創立からどんなことがあっても中止したことがないんだ!」
「へ〜、文化祭もそうなの! すごいね~」
「凄いねじゃなくて、ことねにはとても関係ある話なんだぞ!」
湊が説明モードに入ってしまう中、ことねは考えていました。
ーーたしか、原作でも文化祭は開催されなかった。 ことねが文化祭の当日に突然現れて、邪神を復活させるはずだった。 湊との恋に破れて絶望した心を、理想の信者に利用されて、そのまま川端ことねは消失した。 その後ーー
「おい、ことね! 俺は大切な話をしてるんだぞ! そんな暗い表情でまったく別のことを考えているなんて⋯⋯ことねは、俺と一緒が嬉しくないのか?」
「あ、ごめん。 ちょっと真剣に考えていただけ⋯⋯ねぇ湊、聞いてもいい?」
「なんだよ、そんなに改まって⋯⋯あ! 駄目だぞ! 屋台のご飯の食べ過ぎは! ⋯⋯ただでさえ、家には大食いがいるんだ! ことねまでそうなったら⋯⋯調理時間が半端ないって!」
やれやれという表情をする湊。 ことねは表情を変えず、湊の方を見つめました。
その様子に応えるように、湊は真剣な視線をことねに向けました。
「湊はさ、⋯⋯私のことを川端ことねという、一人の女性として見てる? ⋯⋯それとも、川端家の神子として見ているのかな?」
ことねはそう言うと、湊から視線を外した。
何故だろう、今はまともに湊の顔が見られない。 ことねはそう思いました。
気づけばことねは、俯いてしまっていました。
そんな様子のことねに、湊は特に思うことがなかったようでした。
「どうしたんだ? 胸焼けか? だから言っただろ、美羽と一緒にご飯を食べるなって! ⋯⋯アイツまた、『さてウォーミングアップはこれぐらいにして、これからが本番ですわ! 屋台の食べ物を、全部喰らいますわ!』とか言い残して、どこか行くし⋯⋯」
「湊はさ⋯⋯もうちょっと私の気持ちを理解して欲しいな⋯⋯つまり、私のことどう思ってるか、聞いてるんだけどな〜」
ことねは、前世の記憶を思い出した時、そして湊の顔を見た時に、心の中で一番心配だったことを思い出していました。
たしかに原作とは状況が違う。 それでも彼女は、川端家の神子なのでした。 湊が自分のことをどう思っているのか、ことねはそれがずっと気になっていたのです。
今だってそう、湊はことねの前で別の女の話を始めていました。
ことねは実は、嫉妬深い性格だったのです。
彩乃が初めて湊に接触した時、ことねは内心ビクビクしていました。 彩乃に湊が取られるんじゃないかと、机で寝たフリをしながら、本当は嫌で仕方なかったのです。
美羽のこともそうでした。 ことねは二人が再会して仲良く話すのを、気づかれないように見ていました。 その後、知らないフリをして、二人に話しかけたのです。
本当にショックでした。 だってそこに、ことねの知らない湊がいたのですから。
ずっと一緒に居て、なんでも知っていると、ことねは勝手に思い込んでいたのでした。 馬鹿だったと、ことねは思いました。 それから、二人がコソコソ何かしているのを、彼女はずっと気づかないフリをしていました。 まあ、それが大食いの件だとは思わなかったようですがーー
そして毎日悩んでいる中で、ことねは閃いたのでした。
湊が、みんなを好きと思っているように考えればいいとーー




