表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
原作では破滅の悪役令嬢〜でも色々違います?(再編集版)  作者: Masa(文章力あげたい)
本編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
71/112

原作世界 湊の記憶

 高笑いすることねの声が、生徒会長室に響く中、湊は意識を昔に戻していたーー


 湊が思い出すのは、あの日。 ことねに悪霊が取り憑いた日でした。


 幼いあの日。 湊はことねの家の中で、二人でお留守番をしていました。


 その時、ことねが、湊に向けてこう言いました。


 「湊! これからお出掛けしましょう!」

 「駄目だよ、いつも勝手に出歩いて怒られているだろ?」

 「⋯⋯父様も母様も私に過保護すぎるよ!」


 ことねは、この地において「神子」と呼ばれる、重要な存在だったのです。


 「当たり前だろ! ことねは、大事な存在なんだから……」

 「⋯⋯大事。 それって私のこと自身が? それとも存在が?」

 「え? そ、それは⋯⋯」

 「⋯⋯湊。 答えてくれないんだ⋯⋯」


 ーーあの時、なんで俺は答えなかったんだろう。 そしてなぜ今、あの時のことを思い出しているのだろう。 


 湊の脳裏に後悔の念が浮かびます。 そして、記憶は夜中の山中へ。


 「ことね! どこに行ったんだ! ことね!」

 

 真夜中に、一人の少女を呼ぶ湊の声が、響きました。


 ことねは、湊が親の元へ帰った後、姿を消したのです。


 すぐに捜査が始まりました。 湊も懸命にことねを探します。 心当たりを探しても見つからず、諦めて俯いたその時に、湊はことねの私物を発見しました。


 「ことねが、いつも履いてる靴! ⋯⋯この山道は!」


 湊は山へ駆け出しました。 冷静であれば、大人たちと一緒に向かうべきでしたが、それどころではありませんでした。 この山頂には祠があり、そこには、悪霊が取り憑いているというーー


 ことねは、自分の存在を否定したかったのでしょうか?  それとも、一人のただの少女として、みんなに見てもらいたかったのでしょうか?


 湊は、今日の彼女の問いかけに、答えられなかった自分を恨みました。


 「ことね! ⋯⋯! ことね!」


 湊は川端ことねを発見しました。 場所は山頂の祠の前でした。


 目の前には、禍々しい雰囲気が漂っており、彼女の手には破れた札がありました。

 

 「ことね! まさか⋯⋯」

 「湊⋯⋯これでもう私は、ただの一人の女の子だよ。 だから⋯⋯」

 『この気配は。 ⋯⋯お前が今代の川端の神子か⋯⋯』

 「え? 本当に悪霊がいたんだ……」

 「ことね! 危ない!」


 聞こえた声に呆然とすることねを、湊は後ろへ庇います。


 「なにあれ。⋯⋯もしかして、私はとんでもないことをしたの?」

 『ハハハ! 神子様は自分のやったこともわかっていないようだ!」

 「私はただ、一人の女の子として湊に見てもらいたかっただけなのに⋯⋯」

 「ことね! 悪霊の言葉に耳を傾けてるな!」


 湊は悪霊と対峙します。 しかし、体がいうことを聞きません。


 『所詮、ガキか⋯⋯その絶望! 心ごと喰らい尽くしてやろう!』

 「駄目! 湊に手を出さないで!」

 「ことね! なにを言って……」


 今度は、ことねが湊の前に飛び出しました。


 『ハハハ! 面白い! なら、俺の理想のために生きるのだな! お前の好きなコイツのために!』

 「はい、かしこまりました。 身も心もすべて貴方のために、捧げます⋯⋯」


 ことねは、前に立ち霊を迎え入れるように手を広げます。


 そして、悪霊がことねの体に、吸い込まれるように消えていきました。


 「ことね! しっかりしろ! 大丈夫か!」


 湊は、ことねを抱きしめようと手を伸ばしました。 しかしーー


 「⋯⋯ことね? 私は川端家の神子よ! これからはお嬢様と呼びなさい。 ⋯⋯感じるお前の絶望が⋯⋯私に力をくれるわ!」


 ことねはそういうと一人、山を降りていきました。


◇◇◇


 悪霊は彼女の周りをまるで蝕むように、孤立させていきました。 それでも、湊だけはことねから離れませんでした。


 ーーいいえ。 離れないのではなく、繋がれていたのです。 ことねは、湊の絶望を糧に動いていたのですからーー


 真実に気づき、心が沈みそうになった湊。 しかしそんな時、浮かんできたのは桐原彩乃の顔でした。


 彼女とは長い間、一緒に居たわけではありません。 しかし、彼女の目に宿る光に何故かいつも吸い寄せられた。 気づけば、ことねの指示ではなく、自分自身で彼女の元に向かっていた。 彩乃の頑張る姿を見るのが、湊の心の支えになっていたのです。


 湊は、ただ思いました。 桐原彩乃。 君に会いたいよーー


 その時、ドアが蹴破られる様に開きました。 中に入って来たのは、彩乃でした。 

 部屋の主であることねは、それを迎え入れました。


 「桐原彩乃⋯⋯貴方、本当にここまで来るとは思わなかったわ」

 「川端ことね! 貴方の独裁はもう終わりです!」

 「終わり? ⋯⋯ふふ、面白いことを言うのね。 桐原さん。 どんな手を使おうと、無駄よ! この学校は、私の掌の上にあるのだから……」


 ことねの声は氷のように冷たく、部屋は静まりきっていました。 


 その時、桐原彩乃の視線が、部屋の隅にいる、湊に向かいました。 そこには、廃人の様にぐったりと座り込む、湊の姿がありました。 


 彩乃は急いで湊に駆け寄りました。 その様子に、ことねは眉をひそめます。


 「⋯⋯ふん、何しているの? コイツは、私の駒のひとつにすぎないのに」

 「会長のことなんて気にしないでいい! 私と一緒に、もう一度立ち上がろう湊」

 「⋯⋯彩乃、ありがとう」


 彩乃は湊の手を握る。 湊は目を開きました。 心と体が少しずつ温まるのを感じました。 彩乃の暖かい言葉と手の感触が、絶望の闇に光を灯すのでした。 


 その様子を見たことねは一歩下がり、冷たい瞳で二人を見つめました。

 

 「⋯⋯なるほど。貴方のやり方で、この私に抗うつもりなのね⋯⋯いいわ。 全校生徒の前で、私と貴方たちで最後の勝負をする覚悟はあるかしら?」

 「もう、怖くない。 湊、私たち一緒なら絶対に負けない」

 「うん、彩乃⋯⋯君と一緒なら、俺はなんだってできる!」

 「この学校は私の王国。 私の理想に逆らう者は……粛清する」


 ついに、三人の学校をかけた闘いが始まろうとしていました。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ