それぞれの夏模様
「⋯⋯⋯と言うことなの。 わかる?」
「えっと⋯⋯」
彩乃が言いたいことは、私がことねに対して、罪悪感をもっているということだったーー
「へえ〜 そうなの、瑞稀?」
「瑞稀! 反省するのですわ!」
気づいたら、二人も帰って来ていました。 姫様は興味深そうに、瑞稀を観察していました。 美羽は、雰囲気で文句を言っているだけでした。
「……まあ、貴方自身には認識はないはずよ。 でも、この世界は数々の因果で出来ているわ⋯⋯別の世界線の貴方の心の声が、強くて夢に出て来てもおかしくないわ……」
私は考えこむ。 夏休み前なら、笑って終わりにできた話。
だけど、実際は私の目の前で起こっている事実。
「面白いわね。 彩乃、もっと私について話してくれてもいいわよ」
「彩乃さん。 私はどうなのかしら? 緊張してきましたわ!」
「櫻井美羽についてはなにも知らないわよ、ガチで」
「そんな! ですわ!」
「倉石瑞稀についても、あまり詳しくないんだけどね⋯⋯最後の演説が心に残ったから⋯⋯」
彩乃が言うには、私はことねに対して謝罪するらしい?
「姫様! 申し訳ございませんでした! ……これで終わり?」
「瑞稀⋯⋯さすがの私でも、今ので終わりだとは、思いませんわ⋯⋯」
美羽は、瑞稀を一蹴しました。 ショックを受ける瑞稀。
「仕方ないわ。 瑞稀。 今回は諦めて、貴方のケアに集中するわ。 ⋯⋯私のことは『私』に聴くし⋯⋯」
「そうですわよ! 仕方ないですわね瑞稀!」
そういうと、美羽は瑞稀を抱き寄せます。
「今まで、見たことがない、表情をしますのね? ……大丈夫ですわ。 貴方が思っているよりも、私は貴方のことが好きですわ! ⋯⋯だから、大丈夫。 自分の本心と向き合って。 ⋯⋯そして私たちに本気で、向き合ってくださいまし!」
「……なにそれ?」
ーー私の本心と向き合え? 私が大好き? 意味わからない。 というか、ミウミウは『私』のこと、こんなのでわかった気持ちでいるんだ? 『私』の事情も知らないくせに? なにも知らないくせに! ふざけないでよ!
瑞稀はその瞬間。 心を閉ざしてしまいました。 しかし、それを美羽たちが気づくのは、もう少し後のことだったのです。
「あれ? 瑞稀寝た? ……私、まだ心当たりがあるのに……」
「心当たり? それは、なによ? 彩乃」
「……私と舞香の仇よ。 忌々しい悪霊……」
彩乃は、姫様と美羽に自らの因縁の話をするのでした。
◇◇◇
次の日の朝。 副人格『ことね』が目を覚ましました。
「あれ! もう朝だ! せっかくの女子会が! 楽しみにしてたのに!」
ことねは、横で寝ているみんなを見つめます。
「柳田健太。 ⋯⋯別にアンタに褒められても嬉しくないんだからね……」
「我々生徒会はリア充、撲滅法案を施行する!」
「ホテルの朝食、食べ放題ですわ!」
それぞれの寝言を聞いて、安心することね。
「みんな抱き合って寝ている、仲良しならよし!」
ことねは、離れたところで座っている、舞香に挨拶をしました。
「ありがとう、ことねちゃん!」
「どうしたの? 舞香ちゃん?」
「最近! お姉ちゃんが楽しそうなの。 ……ことねちゃんと会うまでは、お姉ちゃん毎日、笑顔を作っていたの。 でも知ってるの、毎日お姉ちゃん泣いてた。 私、知ってて、だけどなにもできなくて困ってたの。 でもことねちゃんがいて、みんながいる。 ありがとう、ことねちゃん⋯⋯」
「舞香ちゃん」
ことねは舞香を抱きしめました。 今から、過去には戻れない。 だけど、これからはみんなの笑顔を守って生きたいよ!
「なに、いい話風にまとめようとしてるのよ」
「そうですわよ! 美味しい朝ごはんが待ってますわよ!」
これから先ーー未来に、なにがあるかわからない。
でも進むんだ今日も、これからも、朝日が私たちを照らしてる!
ことねは、まだ寝ている瑞稀を起こします。
「朝だよ! 瑞稀ちゃん!」
「ことね! おはよう!」
「わあ! 瑞稀ちゃん! 朝から元気だね!」
「……そうだよ」
瑞稀は、空を見上げます。 空ってこんなに綺麗だったのか!
ーー私の心の中とまるで、正反対だね。 ただ、虚しいよ。
かくして、彼女たちの夏休みは終わるのでした。




