すれ違う二学期の初日
二学期の始まりの朝、ことねはベッドで寝たふりをして、湊を待っていました。
ーーしかし、湊は起こしに来ません。 業を煮やしたことねは、キッチンへ向かいます。
「……湊?」
「よ! ことね、おはよう!」
快活に挨拶してくる湊に、ことねはお怒りでした。
「ちょっと! なんで起こしに来てくれないの!」
「なんでって…… 起きてんじゃん?」
湊の何気ないツッコミに、ことねは顔を顰めるのでした。
◇◇◇
時は過ぎて、ホームルーム。 担任の先生が教壇で声を張り上げました。
「⋯⋯ということで、今日から文化祭に向けて、みんなで精進してもらいたい。 まずは、このクラスでなにをするかだな。 クラスの代表者は委員長なんだが⋯⋯倉石は生徒会長だからな。 代わりに誰か代表者になってくれ!」
担任の先生の合図で、教室がざわめきました。 その後、一人の生徒が手を挙げます。 ピンク髪の少女ーー彩乃でした。
「私が代表になるわ!」
「⋯⋯桐原か、反対する者は⋯⋯いないな。 じゃあ後は頼むぞ……」
そう言うと、先生は教室から出て行きました。
「さあ、どうするか決めるわよ!」
彩乃は、やる気でした。 さっそく、美羽が手を挙げました。
「たこ焼きと焼きそばと焼きとうもろこしと⋯⋯」
「美羽。 それは、貴方が食べたいだけよね?」
「そうですわね。 全部食べたいですわ!」
クラスが笑いに包まれた。 とても自然な雰囲気でした。
「ねえ、ことねも食べたいですわよね?」
「⋯⋯私? そうね⋯⋯」
「じゃあ、屋台で決まりでいい?」
「まあ、好きしたらいいわよ……」
ことねが呆れた様子で相槌を打ちます。
「⋯⋯それで、瑞稀は、どう思う?」
「瑞稀! 当然いいですわよね?」
彩乃と美羽が瑞稀の方を見ると、クラスメイトたちも彼女の方を向いて様子を伺いました。
「……うん、いいんじゃないかな……」
「じゃあこれで決定ですわ!」
その時、ちょうどチャイムが鳴りました。 クラスメイトたちは、帰り支度を始めました。 瑞稀の元に、美羽と彩乃とことねが向かいます。
「瑞稀! 一緒に帰るのですわ! 文化祭のことをみんなで話しますわ!」
「そうね。 屋台の内容も決めたいし、私たちが立案者ですもの、しっかりと考えないと⋯⋯」
「私はびっくりしたわよ。 ……彩乃、どうしたのかしら?」
「どうしたのか聞きたいのは、私の方よ! ことね! キャラ変するなんて! あ! これが二学期デビューってことなの?」
なんと、ことねは副人格ではなく、本人格で教室にいたのです。
「……はあ。 『私』がちょっとね……」
「……なに、その言い方? 気になるわね……」
彩乃はまだ、ことねが二重人格であることを知りませんでした。
三人が楽しそうに喋っている中、真ん中にいる瑞稀の表情は、曇っていました。
「ごめん。 ちょっと用事があるから⋯⋯失礼するね」
瑞稀は、逃げるように、去って行きました。
「……なにかしら? 変な瑞稀」
「……瑞稀!? ……そんな、どうして?」
「ハア。 面倒ね……」
そんな状況の中、湊がことねに話しかけます。
「なんだ? お前たち、落ち込んで?」
「湊! 大変だよ! ハーレムの危機だよ!」
「ハア? ハーレムってなんだよ?」
湊は、頭を傾げるのでした。
「……なんで、湊と話す時だけ出てくるの? 『私』」




