作戦実行
文化祭当日の朝。 暗いカーテンで覆われた教室に、アタイは美羽を呼び出していた。
「ひとみ? こんな所に私を呼び出して、一体……」
美羽の言葉が止まる。 視線の先には、神子様像があった。 それに設置された、ビデオカメラーー
「これは?……ここは一体、なんですの……?」
「そこに座れ……美羽……」
美羽が、おそるおそるイスに座る。 戸惑っているようだな?
「お前に伝えないといけないことがあるんだ……実は、アタイはお前を利用するように命令されていたんだ……」
「……利用を命令?」
「ああ、お前を使って神子様を復活させる計画のな……」
「私を使って? 誰が、そんなことを……」
美羽の瞳が、不安に揺れる。 犯人に、心当たりがある顔だな? そんな訳ないと否定しようとしてやがる。
ーーああ、とってもいい顔だ。
お前は知らないんだろうな。 この儀式の最後のピースが、なんなのか。「犠牲」って言葉の、本当の意味を。
「美羽。 ……瑞稀はな、こう言ったんだ……」
アタイは蝋燭の炎を見つめながら、口の端を吊り上げた。
「生きる価値のない役立たずの存在だってな……」
「そんな。 ……私、信じませんわよ! 瑞稀はどこですの?」
ーー仕方ねえなぁ? あの廃人を呼ぶか。
「⋯⋯瑞稀。 準備はできてるぜ!」
「……私は、悪くない。 こんなの知らない……」
「……ひとみ? 瑞稀の様子が変ですわ……」
ーーチィ。 めざといお嬢様だなぁ?
美羽の心を折ろうと思ったが、全然折れねぇ。 ずっと瑞稀を信じてやがる。 だったら、プラン変更だ。
コイツがうるさいから、ちょっとわからせてやりたかったんだよなぁ。 ほら。 今もぶつぶつ呟いてやがる。
ーー血走った目で、美羽を見つける瑞稀は堕ちていた。
「……あ、ははは。 私は……」
「ひとみ。 ……貴方の発言は全て嘘ですわね。 全部、貴方が勝手に言っていることですわ! ねぇ? 瑞稀……」
美羽は、瑞稀に手を伸ばす。 しかし、その手は弾かれた。
「……本当だよ。 私も君も役立たずの無能な駒なんだ……生きる価値もない、神子様を蘇らせるためだけの……」
「……そんなこと、ありませんわ!」
席に着いていた美羽が、青ざめた顔で瑞稀を見上げている。 涙目で、唇を震わせて。
アタイは内心でほくそ笑みながら、表面では優しく微笑んでみせた。
「さあ。 早く言えよ! 本当のことをよぉ!」
「……私は、美羽のことが大……」
ーーその時だった。
暗幕が、突然払われた。
差し込んだ廊下の光に、アタイは思わず目を細める。 立っていたのは、舞香。
「みんな! こんな所でなにやっているの? 今、会場でここの映像が流れて、大変なことに、なっているのに……」
ーーちっ。 来やがったか、桐原舞香。




