狂人たちの化かし合い
神子様の復活のためには、大きな絶望が必要だ。 ありったけの絶望を、だ!
「倉石瑞稀。 テメには、櫻井美羽と絆を深めてもらう」
「……美羽に、何をするつもり? 吉澤ひとみさん」
警戒心を露わに、アタイを睨みつける瑞稀。
「なに。 希望を見せてやるのさ! ……そして、絶望の底へ突き落とす。 一度、つかんだ希望が絶望に変わった時、それがエネルギーに変わり、儀式が完成する……」
「私や美羽にいいことないじゃん! そんなの従う訳……」
「……実はな。 これは、美羽のためなんだ……」
まさかのアタイの発言に、瑞稀の目の色が変わった。
ーー堕ちたな。 一丁上がりだぜ!
「櫻井美羽は神子様の右腕になるためだけに生まれた存在。 ……しかし、今はどうだ? ただのメイド風情に成り下がってやがる。 神子様を復活させたら、美羽は自分の使命を取り戻すんだ」
「なるほどね……わかったよ。 私、頑張る!」
アタイの説明に瑞稀は納得したようだ。 その後、瑞稀は帰って行った。
◇◇◇ 瑞稀視点
「……まさか驚いたよ。 この力を欲しているのが私以外にいたなんて、ぶぶ」
笑みを堪えきれない。 だって残念だよね? もう、私が持っているのにーー
「もしもし〜 神子様〜 聞こえますかぁ〜 ギャハハハハハ」
◇◇◇
放課後の校舎。 生徒会室の前で、瑞稀と凛が睨みあっている。 瑞稀の奴。 生徒会用の服を着てやがるぜ。
「まあ。 ……倉石瑞稀。 今更現れて、なんのつもりかしら。 貴方の場所は、ここにはもうないわよ」
「えっと。 ……聞いたんです。 黒田凛さん、貴方は代理だって。 ありがとうございました。 もう大丈夫です」
「……っ!」
瑞稀の上からの発言に、凛は不意を突かれたようだな。
「そういうことだから、会議するよ……」
「……待ちなさい。 今更だって、言ったでしょう? 残念だったわね。 既に、文化祭の内容の変更はできないのよ、私にも忠実な部下がいてね。 貴方達の行為は、筒抜けなのよ。 さあ、どうするのかしら? 無力な生徒会長さん」
「……そ、そんな」
凛との会話の後、アタイと瑞稀は空き教室にいた。
「……なんだよ、瑞稀。 こんな所にアタイを呼び出して」
「そんなの、ひとみが一番わかっているんじゃない?」
瑞稀が、アタイににじり寄ってきた。 彼女は、血走った目でアタイを見ている。
ーーバレたか。 あ〜あ。 つまんねぇの。
「……なにがしたいの、ひとみ? 貴方と私は運命共同体のはずだよね? それなのに……意味がわからない……」
アタイは何も答えなかった。 ただ、弱そうな表情をして、オドオドしているだけ。
なぜかって? 誤解させるんだよ。 アタイが駄々の弱い人間だと思わせるんだ。
ーー誰にだって? それはなぁ。
「ねえ、ひとみが何を考えているか知らないけどさ……私はもう引けないんだ。 ……全ては美羽のためなんだから……」
おお、これは友情か? いいねぇ〜 お前は、アタイの嘘を愚直に信用しているんだなぁ?
ーーその時だった。 教室に第三者が来た。
「倉石生徒会長! ひとみさんに何をしているんですか!」
「……舞香。 君には関係ないことだよ……」
「ひとみさんが怖がっているじゃないですか!」
チッ。 やっときやがったか。 桐原舞香ーー
「……仕方ない、失礼する」
瑞稀はそういうと、教室から去って行く。
ーーふんチョロいもんだぜ。




