お前のことは全部まるっとお見通しだ!
夜。 アタイは自室で、神子様の像を眺めていた。
お手製の等身大神子様像。 質感まで最高だぜ!
「アタイは、神子様のためなら、なんでもする……」
目的を遂行するためなら、他人の犠牲などどうでもいい。
そんな時だった。 チャイムがなったのはーー
「こんばんは、ひとみ。 ちょっといいかな?」
「なんだよ……」
瑞稀か。 アタイの妄想タイムの邪魔するなョ。
「……あれ? なに、その格好? ……黒ローブ?」
「……なにか用かよ?」
「ちょっと、上がらせてよ!」
そういうと、瑞稀はアタイの部屋へ向かいやがった。
「オイ! なに考えてやがるんだ! やめろ!」
「ひとみの部屋の探索しよっと。 私の部屋も見られたんだから、これであいこだよね? ……ドア開けるよ!」
瑞稀は躊躇なく、部屋のドアを開けた。
「……?! 川端ことね!? ひとみ、一体コレは……」
ーーあ〜あ。 見ちゃったなぁ? 瑞稀。
部屋の中は、ろうそく一本の灯りだけが揺れていた。
瑞稀が踏み込んだその先には、見渡す限りの神子様の写真。 壁という壁、隙間という隙間に、神子様の顔が貼り尽くされていた。
学校の制服姿、読書する横顔、棚に並んだ等身大には届かないフィギュアまで。
全部、神子様。
「なに、これ。 悪役令嬢 川端ことねの写真ばかり」
瑞稀の声が震えた。 無理もねェ。 神子様の顔に四方を囲まれて、平気でいられる奴なんていねェからな。
それに。 お前は神子様のおかげで引きこもりになったんだよな?
そんなビビって、フラッシュバックでもしたか?
数時間後、部屋の隅には、瑞稀がしゃがみ込んでいた。
メガネの奥の目を限界まで見開いて、ガタガタ震えながらこっちを見上げてやがる。 実に、哀れな奴だーー
「ひとみ……これ、貴方がやったの……?」
対するアタイはベッドの端に腰掛けたまま、足を組んだ。
黒ローブのフードを目深に被って、口元だけを見せて笑ってやる。
どうだ、これがアタイの本性だぜ!
「……瑞稀、これがアタイの秘密だ。 文化祭の当日にな アタイは、この人形に神子様の魂を入れる儀式を行う」
「あの女の魂だって? そんなのどうやって」
「おい? 伊達メガネ。 口に気をつけろよ?」
「……」
ここはアタイの聖域。 神子様に捧げる、信仰の祭壇だ。
その場で、そんな穢れた発言。 許せないよなァ?
真ん中で仁王立ちしてる神子様。 無表情で、瑞稀をじっと見下ろしておられる。
お前には、逃げ道はねェってことを、その立ち位置で教えてやってんのさ。
「なあ? 瑞稀。 勝手に人の部屋に入ってきて『あいこ』だなんて言ったろ? でもなァ……」
アタイはゆっくり立ち上がった。 ろうそくの炎が、影を壁いっぱいに引き伸ばす。
「見られて困るのは、アタイじゃねェ。 あんたの方なんだよ。 知っちまったな? アタイのことを……」
瑞稀の喉が、ひゅっと鳴った。
「神子様は。 全部お見通しなのさ。 あんたが本当は何を隠してるか。 誰を裏切ったか。 ……エターナルパーフェクト教団に、入信する準備はできてるか?」
瑞稀の震えが、ぴたりと止まった。 まるで合図を待っていたかのように。
「共に、契りを交わせ。 お前は才能があるぜ」
アタイは手を差し出した。 逃げられねェ夜の始まりだ。
「一緒に、神子様の御許へ行こうじゃねェか」
「……ひとみ。 狂っているね?」
「ハア? お前に言われたくネェよ、サイコパス」




