アタイって弱いよな……
「ちっ。 ずらかるぞ!」
「集団で襲うなんて、大人げないですよ〜」
「まあいいや。 投稿完了。 題名は『弱々おさげ女をいたぶったら、黒ずくめの集団に襲われました』っと」
三人組のギャルどもは、いつの間にか姿を消していた。 アイツら、逃げ足だけは早ぇんだからったく。
ーー後日。 アイツらは、暴行罪で捕まった。 決めては、SNSに投稿された動画だらしいぜ。 アタイは、何もやっていないぜ。
それから、なにが起きたか知らねぇが、アイツらの学校は、廃校になったらしい。
その学校って言うのが、実は中高一貫?って奴で、両方セットでおじゃんだそうだ。 会見で先生やら、校長やらが「関係ない! 知らない!」とか言ってたけどな?
アタイは、舎弟たちに聞いた。 なぜ、この場所が分かったのかを。
答えは、誰かからのタレコミがあったからだそうだーー
◇◇◇ 倉石瑞稀視点
「つまらないな〜 つまらないな〜 こんなオチなんてつまらないな〜」
アイツらには、もっと、もっと! もっと!! 苦しんでもらう予定だったのに。
「本当につまらないな……責任とってもらわないとな? ぐっ、ぐっふふ」
◇◇◇
家に着いた頃には、すっかり夜だった。 玄関の鏡で自分の顔を確認する。 頬に張り手の痕、口の端には乾いた血。 制服のリボンも歪んでいた。
自室に入ると、ベッドの上で丸まっていた塊が、むくりと顔を上げた。
茶トラの猫が、にゃあ、と一声鳴いて、しっぽをぴんと立てる。
アタイが拾ってきた野良猫だ。 最初は警戒してアタイの手に爪を立ててきたくせに、今じゃこの部屋の主みたいな顔で寝てやがる。 名前はトラだ。
私服に着替えて、傷の手当てをして、ベッドに倒れ込む。
トラがのそのそとアタイの胸元まで歩いてきて、ぐいっと額を押し付けてきた。
トラの背中に手を伸ばすと、ごろごろと喉が鳴り始める。
縞模様の温かい体を抱き寄せて、頬をすり寄せた。
「アタイさ。 強くなりてぇんだよ。 姉御としてよ!」
トラがアタイの頬を、ざらざらした舌で舐めた。 その瞬間、堪えていた何かが目の縁から零れた。
トラは構わずアタイの顎の下に頭を突っ込んで、ぐりぐりと押し付けてくる。
ーーかわいいな、お前は。
学校じゃ「吉澤さん、おしとやかですよね」なんて言われてる猫被りのアタイでも、こんな態度は取れないぜ。
トラの体温が、ぽかぽかとアタイの胸に伝わってくる。 ごろごろという音が、子守唄みたいに響いていた。 トラを抱きしめたまま、アタイは目を閉じた。




