余計な邪魔者は処分だぜ!
夕方。 とある、廃墟と化した工場にアタイはいた。 割れた窓から差し込む光が、瓦礫の上に長い影を落としていた。
なぜこんな所にいるって? コイツらを成敗するためだぜ!
なんたって、アタイの計画にはコイツらの存在が邪魔だからな!
アタイは前方の三人組を睨みつけた。
「あんたが吉澤ひとみ? なんか地味な子じゃーん」
「お前がわざわざこんな場所に呼び出したの? ウケる〜」
「ねえ写真撮っていい? SNSに上げるからさぁ」
三人組はアタイを見るなり、げらげらと笑い出した。 一人の女がガムを膨らませ、パチンと弾く。 腕を組んだ女がスマホをこちらに向けてくる。 ツインテールの女が口元を手で隠して、くすくす笑っていた。
「……あのあの。 倉石さんと櫻井さんに、謝ってくださいです。」
アタイがそう絞り出した瞬間、三人は腹を抱えて笑った。
「は? 何そいつら? いちいち覚えてないし……」
「ねえ聞いた今の? 『謝ってほしい』だってさ〜」
「そ、れ、に、お願いの仕方がなってないよぉ? ちゃんと土下座してみ?」
ーー駄目だコイツら、完全にアタイを舐めてやがる。 何を言っても嘲笑が返ってくる。
一言喋るたびに、げらげら、げらげら。耳の奥でその笑い声が反響している。
「ねえ、おさげちゃん? えっと? 名前なんだったけ……」
「今、暇だからさ〜 サンドバッグになってくれない?」
「はい、録画スタート! 『世間知らずのおさげちゃんを今から〜サンドバッグにします〜 どんな風に喚くのか、お楽しみに〜』
女の一人が床を蹴った。 アタイの顎に向かって、渾身の右ストレート。
ーーアタイは吹っ飛んで倒れこんだ。
「ゴ、ゴホゴホ」
「うわっ、なにこいつ! 弱っ!」
「拍子抜けなんですけど?」
「おい起きろよ、サンドバッグ!」
アタイはひっぱりあげられる。 そして、横から伸びてきた足がアタイの脇腹にめり込む。
「あははっ、弱っ! マジで弱っ!」
「ねえ撮って撮って〜!」
「コイツ、びびって漏らすんじゃね?」
髪を掴まれ、頬を張られ、腹を蹴られた。 瓦礫の床に転がされる。 口の中に鉄の味が広がった。 そして、スマホのフラッシュが何度も光る。
「クソ弱いじゃん〜」
「飽きてきたかも〜」
「クソザコ……サンドバッグだよな」
廃墟の床にアタイは大の字に転がった。 割れた天井から、夕日が差し込んでくる。
ーー完敗だ。 完敗。 でも、口の端が勝手に吊り上がっていた。 お前ら、絶対に許さねぇ。
その時、黒装束の集団が現れた。 その数は数十名にも及んだ。
アタイは場所を教えてないのに、どうやってこの場所を知ったんだ? ーーってか、人数増えてねぇか?
ーーまったく、しょうがない奴らだ。 アタイは単身でケリをつけたかったのに。
「テメら! 俺らの姉御になにしてくれてんだ!」
「姉御、しっかりしてください!」
「もう。 だから言ったじゃないですか! 姉御は、ウチらのマスコットなんですから、汚れたら駄目ですよ!」
ーーマスコット? アタイって、そんな立ち位置なのか?




