お着替え作戦
アタイは街の服屋に二人を引きずり込んだ。
「さあ! 服を着替えますよ!」
「……」
「……」
コイツら、店に入ってもお互いに一言も喋らネェ。 目を伏せて、店内のタイルを観察してやがる。 動くマネキンかよ!
今日のアタイのミッションは、この二人を仲良くさせること。
服選びを一緒にやらせて、自然に会話を生もうって作戦だぜ!
よ! さすがアタイ、頭いいぜ!
「はわ! 倉石さん。 これ絶対似合うと思います〜」
アタイは瑞稀に、水色のパーカーとジーンズを渡した。
実は、最初に瑞稀を起こす前にクローゼットをのぞいていたんだぜ! ぷぷ、瑞稀の奴、顔を真っ青にしてやがるぜ!
「……なんで? この服を選んだの?」
「はわわ。 倉石さんって、瑞稀じゃないですかぁ? 水色があってますよぉ?」
「……ヘェ、そう来たか……」
「……それに、ほら! ミステリアスな瑞稀にぴったりですよ!」
「はあ? この服のどこにミステリアス要素があるの?」
「えっと、この模様、ミステリアスだと思いません?」
ーー本当は、サイコパスだけどなぁ? 次は美羽だぜ!
「アワアワ。 櫻井さんはサラサラだから、なにを着ても似合っていると思いますよ? オマケにスタイルもいいんだから、ラフな格好でも……」
「……そんな格好。 メイドである私には……」
ーーなんだよコイツ。 暗すぎるぜ!
「舞香さんも言ってましたよ? 美羽さんの私服姿が見たいって!」
「……そんな。 私は……」
アタイは、そんな美羽に黒のセーターとジーンズを渡す。
美羽はなんとも言えない表情で、着替え室に入った。
試着室から出てきた二人を見て、アタイは首を傾げた。
瑞稀と美羽に渡したはずの服装と、まったく違う服装で現れたからだ。
そして、二人ともなぜか、してやったりの表情をしてやがる。
「な、どういうことだ?」
「こうなると思って、事前に服を用意してたんだ……」
「助かりました、倉石さん……」
ーーコイツ。 アタイの行動を予測してやがったのか?
動揺するアタイに、美羽がアタイの渡した服を返してくる。
「……吉澤さんも、何か買いません…?」
「……そうだよ。 吉澤さんも何か買おうよ? ……例えば、それとか」
「いや、アタイは別に……」
言い淀むアタイに対して、美羽が声をかけてきた。
「吉澤さんも、何か買うべきですの」
ーーの? 美羽から、自然にその語尾が出てきやがった。 続けて瑞稀がニヤニヤしながら、アタイに言った。
「はわわさんに似合うと思うな? この前も似合っていたし……」
ーーはわわさん? それってアタイのあだ名かよ!
結局、アタイも服を買わされて、三人で着替えて店を出る羽目にーー
「吉澤さん。 似合ってますわ、ラフな格好!」
「はわわさんらしい、格好だね!」
なんだよ、はわわさんらしい格好って! 馬鹿にしているだろ! 瑞稀の奴ーー まさか、猫被りばれてる?
そんなはずねぇ! アタイの猫被りは看破されないはずだ!




