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「和磨くん!」

楓の声がして数秒後、勢い良く鍛冶場の引き戸が開いた。

「やっと来た〜。うわっ外、暖かい。」

身震いをしながら和磨が外に出てきた。

「どうしたの?」

「どうしたもこうしたも、何かずっと扉ガタガタガリガリいったり、部屋の中むちゃくちゃ寒くなったり、おかしいんだって。でも楓ちゃん、中にいてって言うから出ちゃいけないと思うじゃん?…あー、お照りがありがたい…」

寒そうに身体を擦る和磨。楓は苦笑いを浮かべ、喜助は上の方を口を開けて眺めている。

「?」

喜助の視線を辿るが、和磨には青空しか見えない。

「で、二人はここに俺を置いて何しに行ってたわけ?これで風邪引いたら二人とも看病しにきてよね?」

「和磨くん、一緒に来てほしいところがあるの。」

愚痴を零す和磨に楓が一歩、歩み寄る。

「どうしたの?真面目な顔して…_?」

引き締めた楓の表情に首を傾げる和磨。その目の前に何かが落ちてきた。

「何これ…花?」

和磨の足元に、一輪の花が落ちている。植物には詳しい筈の和磨も見たことのない、不思議な色味をした花。拾い上げると、ふわりと柔らかく甘い香りがした。

(…匂いも嗅いだことないな。)

上を見上げても花が落ちてくるような要素は無い。不思議に思いながら目の前の楓に視線を戻す。

「……あれ、それって…飛燕?」

楓の肩に燕が停まっている。

「そ、そう…!」

目を擦る。少し前まで、和磨の目に見えていた飛燕は黒いふわふわした塊でしかなかった。今は、しっかりと輪郭を持った燕だ。

「その花…持ったまま、付いてきてくれる?」

「えぇ?…良いけど、それ今じゃなきゃダメ?俺、まだ片付けが…」

妙な物音や寒気で捗らず、鍛冶場の片付けはほぼ進んでいない。後ろ髪引かれる思いで鍛冶場を振り返る和磨。

「え…ぇええ?!」

目を疑う光景が広がっていた。

見たこともない生き物、何かがおかしい動物、人のような何かが屋根の上や鍛冶場の周りに群がっている。

「あの!驚かないでって言っても無理なんだけど、悪い妖じゃないの。ずっと、和磨くんを待ってて…」

「ちょっと…意味、わかんないんだけど…」

「お願い!騙されたと思って!」

理由はわからないがものすごく必死に頭を下げる楓。助けを求めて流した視線の先の喜助は口をへの字に曲げ、曖昧に肩を竦めて何回か頷いた。

(わかんない…けど、助けてもくれないのだけはわかる…)

困惑はあった。…困惑しかない。だが__

「わかったから、頭上げて?」

楓に頭を下げたままにさせておくわけにもいかない。同行を了承すると楓はようやく顔を上げた。自分の要望が通った満面の笑顔が浮かぶのかと思ったが、安堵と、どことなく不安をまとった笑みで楓は「ありがとう」と礼を言った。

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