探
「それ多分、私の里の人達。私達も探してる奴等がいるから。」
少年はまじまじと楓の顔を見ると、「あ」と一言漏らし、気まずそうに目を泳がせた。
「何?」
「……別に。」
綿布に薬を染み込ませて傷口に当て、楓は着物の端を破いて、包帯代わりに巻く。
その行為に少年は少し驚いた顔をした。
「変な女。」
「……は?」
明らかにムッとした声で聞き返した楓を無視して、少年は立ち上がると大きく息を吸い込みながら辺りを見渡し、楓を振り返る。
「アンタの仲間、何人?」
「私を含めて六人。人によっては使妖を連れて歩いてるはずよ。」
「……六人? ふぅん。」
人数を聞いて少し首を捻った少年だったが、すぐさま行く方向を決めたようで、すたすたと歩き始めた。傷の痛みは感じさせない。
「手伝ってくれるって言ったよね?」
「え、うん。」
「手伝わなくて良いから、仲間の人達、里に帰して。あとアンタも。」
「??」
少年の要求を理解するのに少し時間が掛かった。
誰かを探すのならば人数が多い方が良いはずなのに、帰れと言われるとは思わなかったのだ。
「無理よ、私達だって探す人が……」
「嘘つき。」
子供のように口を尖らせる少年に言い返せないでいると、彼は楓に背を向けた。
「じゃ、もういいや。」
「あ、ちょっと!」
特に怒った様子もなかったが、止める楓を他所に、少年はずんずんと歩を進め、彼女の元から離れていった。
「何なの、あの子……。」
唖然と少年の後ろ姿を見送る楓。
突然現れた山犬と少年。彼らが探している「悪い奴ら」の存在も気になる。
――悪い奴らを探してる。オレ達の大切なモノを盗んだ奴ら。
「盗んだ……盗人……?まさかね。」
楓たち里の人間が探しているのも、神器や御神体を盗んだ盗人だ。
もしかすると目的は一緒なのではないか? そんな考えも浮かんだが、あの少年や山犬がそんな物を大事にしている姿は想像出来ず、すぐ否定した。
「嘘つき。」
少年の言葉がぐるぐると頭を巡る。
今頃、優秀な里の仲間たちは使妖を使って盗人を探しているだろう。一方、少年は一人と一匹だけで探している。
「飛燕! あの山犬の気配を辿って!」
楓は意を決して飛燕を呼び寄せる。飛燕は眼が使えない分、気配を追うのを得意とする。
「私は、“探すのを”手伝うって言ったの!!」
もう既に去ってしまっている少年に言い返しながら、楓は山犬の気配を察知した飛燕の後を追った。




