別
妖達は一通り和泉との別れを惜しみ、廃寺の裏に作った大きな墓へ、棺を納めた。
「ズミさん、そっちの一族の墓に入れるかい?」
烏天狗や雪女らのように、しっかりと知恵の付いている妖が和磨を気遣い、尋ねてきたが和磨は首を振った。
「父さんの為に建ててくれたんでしょ?ここにしようよ。こっちのが父さん、居心地良いと思う。」
数刻前、縁側で声を押し殺して肩を震わせていた和磨だったが、今はすっかり元通りだ。
「ちゃんと守っとくから、たまにはおいでぇな。」
和磨の言葉に妖たちも頷き、集まった妖それぞれが棺に花を供えていく。
「はい、はな。」
「関係無いのに良いの?」
楓と喜助も小さな花を藻助に手渡され、花を手向ける列に並ぶ。
(結構長い…)
列の長さが、和泉の交友の広さを物語っている。加えて一言二言、別れの言葉を告げているらしく、進みも遅い。
人間の葬式をよく観察している妖がいるのかもしれない。
列を眺める楓の視界の上からぽとりと和泉の棺目掛けて白い何かが落ちていった。
(花?)
一瞬ではっきりはわからなかったが、おそらくは花だった。
花が落ちてきたであろう上の方を見ると、見たことのある後ろ姿が去っていくのが見えた。
「…一応は来たか。」
阿蘭の呟きにあの後ろ姿が吽蓮だと納得した。
すぐ目の前には和磨が並んでいる。時折、妖に話し掛けられて受け答える和磨が不自然に顔を歪める瞬間があったが、楓にその意味はわからなかった。癖なのかもしれない。
回ってきた、和磨の順番。
彼はじっと父親の顔を眺め、一言「おやすみ」と言って花を胸元に置いた。まるで、一日の終わりにするような自然で穏やかな挨拶。
きっとこの後も、和磨の中で和泉は生き続ける。
確証はないが、楓には安心感が芽生えた。
(でも…)
それと共に、どうしても引っ掛かってしまう事がある。
本来、和磨は妖が見えない。流風に頼み、おそらくはあの白鴉が持ってきた花の効果で和磨は妖が見えるようになっている。この効果は長くは続かないはずだ。場所を覚えておいて墓参りは出来たとして、今のように妖と話したりは出来なくなる筈だ。和磨も何となくわかっている気はしなくもない。式を終え、妖と別れの挨拶をしている和磨をじっと見る。
「余計につつかんでえぇと思う。俺はな。」
喜助の抑えた声に楓も静かに頷き、もう見られなくなるかもしれない光景をただ眺めた。




