弔
「人間とは本当に脆い生き物だ。こうも早く逝ってしまうとは…」
「最後に話したのいつだったかしらねェ?こんなお別れになるなら遊びに行っとけば良かったよ。」
「こうして盛大に集まってんだ、当人も嬉しいだろうよ。」
聞こえてくる会話だけを拾えば、人間の通夜葬式で聞こえてきそうな会話だが、それを話しているのは見るからに人間ではない生き物だ。
「おや、たから。来たんだねェ。こっちさおいで。」
色白の、白い着物を着た女が和磨に気付いた。導くように和磨の手を取り和泉の枕元へと導く。その手は驚くほど冷たい。
「人間には寒いかね。でも…こうでもしないとズミさん、腐っちまうだろ?」
“ズミさん”。村で親交のあった人間からもそう呼ばれていた。今、その名で呼ぶ者はあの村には居ない。
「藻助も手柄じゃん。ちょいとオマケも来ちまったが…さすがに葬送の場を汚す野暮天共じゃねぇよなぁ?」
烏天狗だろうか、嘴と翼を持つ妖が入口付近に立つ楓と喜助に意味深な視線を送り、牽制ともとれる発言をする。
「…私達、出てた方が良い?」
「この人はそんなん気にする人じゃねぇよ。」
別のところから、別の声がした。人に見えるがここにいるという事は、何かしらの妖なのだろう。
頷いて楓は入口から少し離れて腰を落ち着けた。喜助もそれに倣う。
聞こえてくる木魚の音は気まぐれに鳴り、傍らで子供が真似するような中身のないお経が読まれている。
「息子、人間のお前さんからしたら葬式とはかけ離れとるじゃろ。」
老人の顔をした犬が話し掛けている。
「あー…、まぁ…」
「許しとくれよ。ズミさん、もし自分が死んだらこうしてあんたと私達に送られたい、なんて言ってたけど…こんな早く死んじまうとは思わなくて。みんな殆ど人間の葬式の知識なんて無かったのさ。布団もこんな薄汚れたのしか無くて。」
「儂ら妖は人間と違って持つ時間が長い分、悠長だからの。」
どう反応するべきかわからずに頷くだけの和磨の傍らで藻助がズビズビと鼻を啜っている。
「藻助!ズミさんは湿っぽいのは嫌いだから楽しく送り出そうって…みんなで、決めたじゃないのよさ!」
「雪女、お前も泣いてんぞ。」
「黙りな!」
おいおいと泣き始める雪女と藻助の傍ら、和磨はじっと和泉の穏やかな顔を眺めていた。




