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世界が滅びかけたので竜は旅に出る  作者: 火川蓮
第七章

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chapter45 迷宮攻略pt.9 鱗粉に侵される空域

side:ヴァリアス


風で押し返しているにもかかわらず、鱗粉は止まらない。


押し退けても、別の方向から流れ込んでくる。空間そのものが、粒子で満たされていく感覚だった。


「チッ……」


舌打ちが漏れる。


風を強める。だが、視界は徐々に白く霞んでいく。


完全に防げていない。


「キュイ……?」


子竜の一匹が、不安げに鳴いた。


その直後――


「キュッ、ケホッ……!」


咳き込んだ。


一匹だけではない。別の個体も、次々と喉を震わせ始める。


羽ばたきが乱れ、高度がわずかに落ちる。


「……吸うな」


短く言うが、無理な話だ。


この濃度では、呼吸を止めることなどできない。


私自身も、喉に違和感を覚え始めていた。乾いたような、焼けるような、不快な感触。


(やはり、ただの粉じゃないな)


風で散らしているはずなのに、むしろ舞い上がっている量が増えているようにも見える。


地面にも、白い層がうっすらと積もり始めていた。


(……密度が上がっている?)


押し返しているつもりで、拡散させているだけかもしれない。


「キュイッ……!」


子竜の一匹が体勢を崩し、落ちかける。


私は咄嗟に高度を下げ、その側へと寄った。


「落ち着いて。まだ大丈夫だ」


そう言いながらも、状況は明らかに悪化している。


視界は悪い。呼吸も乱れ始めている。


そして――終わりが見えない。


(このままじゃ、削られる)


即座に結論づける。


だが、決定打がない。


風では不十分。押し返すだけでは意味がない。


「……どうする」


思考を巡らせる。


鱗粉は舞い、積もり、空間を満たし続ける。


逃げ場はない。


選択を誤れば、そのまま沈む。


「――キュッ……」


子竜たちの苦しげな声が、背後で重なった。


その音を聞きながら、私は次の手を探す。


まだ、打開策は見えていない。

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