chapter44 迷宮攻略pt.8 鱗粉舞う領域
side:ヴァリアス
私たちは、次のエリアに足を踏み入れた。
その瞬間、空気が揺れた。
視界の奥――薄暗い空間の中で、何かが一斉に羽ばたく。蛾と蝶の大群だった。
「……来るか」
小さく呟いた直後、無数の羽音が重なり、空間を満たす。次の瞬間、きらきらと光る粒子がこちらへと押し寄せてきた。
まるで雪のように舞いながら、しかし明らかに自然ではない軌道で広がっていく。
「これは――」
一瞬で理解する。
「鱗粉か」
ただの視界妨害ではない。あの量、この密度――何かしらの効果を持っている可能性が高い。
「キュイ?」
子竜たちが戸惑ったように鳴く。
「触れるな。近づくな」
短く指示を飛ばし、私は翼を大きくはためかせた。同時に、風魔法を展開する。
押し返すように、正面へと風を叩きつけた。
鱗粉が弾かれ、空間にわずかな隙間が生まれる。蛾や蝶の体も煽られ、ふらついた。
だが――
すぐに、別の方向から粒子が流れ込んでくる。
(……広いが、閉じているな)
この空間は広さこそあるが、外へ抜ける道がない。押し返しても、結局は内部に留まるだけだ。
風を重ねる。
押し返す。
だが、完全には消えない。
「……厄介だな」
視界の端で、鱗粉がゆっくりと降り積もっていくのが見えた。
終わりは、まだ見えない。
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