朝のひととき
今朝もいい天気だ。
朝食のテーブルには淡い青をしたシルクサテンのふっくらとした十センチ角の座布団が置かれている。そこの中心に澄子はいた。生成り色をしたつるりとした四センチ程の玉になった澄子が鎮座しているのだ。
今は、朝日を浴びて微かにレモンのような色を帯びて光を発している。
その姿を同じテーブルに着いている結が見つめていた。
澄子さん、美しいです。頭の中で結は呟いた。
シャリーン
──ありがとう、結。
そこへ朝食の料理を乗せたワゴンを押して羽那がやって来た。
「澄子さま、結さま、おはようございます」
「羽那さん、おはようございます」
結が軽くお辞儀をする。
羽那はテキパキと料理を結の前に並べていく。最後に甘い紅茶のマグカップを置いて
「ゆっくりお召し上がりください」
と言って、空になったワゴンを押してキッチンへ戻っていった。
「いただきます」
結は紅茶を一口飲んでから、フォークを手にしてチーズソースのかかった温野菜を口に運んだ。運びながら、チラチラと澄子を見た。そして、フォークを置くと
「澄子さん、私だけ食事をいただいてすみません」
小さな玉に向かって謝った。
シャリーン
──謝ることはありません。私に食事は必要ないのです。空腹や喉の渇きという概念がないのです。同じように暑さ寒さ痛さ辛さという感覚的なものもありません。ただ、結と羽那の嬉しいや楽しいという気持ちは感じるし、私も嬉しく思います。逆にあなたたちが悲しいとか辛いと感じていれば、私も落ち込むのです。なので結と羽那にはいつも幸せな気持ちでいて欲しいと思っています。さあ、羽那の手料理が冷めないうちに召し上がれ。私は、結が美味しそうに食事をするのをここで感じるのが好きなのです。
「はい」
澄子に言われて、結はモリモリと羽那の料理を美味しく食べた。
料理を口に運びながら、チラッと澄子の方を見る。
シルクサテンの小さな座布団の上で象牙のような玉は僅かに弾んでいるように感じたので
「澄子さん、なんだか楽しそうに見えます」
結は思わず言葉にした。
シャリーン
──ええ。結が美味しそうに食べるのを感じて、とっても気分が上がります。
そして
「ごちそうさまでした。羽那さん、今日も美味しかったです」
朝の食事を終えると結は立ち上がった。
シャリーン
──それでは結、今日も異形のものたちを退治しに参りましょう。
「はい」
結は座布団で淡く発光している澄子を手に取ると胸元の巾着袋に収めた。
「結さま、マントを」
羽那から受け取ったフード付き黒マントを結は纏い庭に出た。
「それでは出発します」
昨日と同じように羽那は妖獣になり、結は彼女に乗った。
ガアアアーー
羽那が雄叫びを上げて飛び上がった。




