第85話 開会式 1
第四章
第85話 開会式 1
朝食を終え。
ルノア組はカエデの案内で城を出た。
白虎の街は朝から賑やかだった。
屋台。
商人。
観光客。
そして。
武闘大会を見に来た人々。
普段より明らかに人が多い。
「すごーい!」
「あっちもひとー!」
あいりとこはるが忙しい。
右を見る。
左を見る。
また右を見る。
いつものだった。
「迷子になるなよ」
たくろーが声を掛ける。
「ならない!」
「ならなーい!」
すっかりパパ定着。
◇
そのまま大通りを進む。
やがて。
見えてきた。
「おぉ……」
ひーちゃが思わず声を漏らした。
巨大だった。
円形の建物。
高い外壁。
白い石造り。
街のどこからでも見えそうな規模。
白虎闘技場。
武闘大会の会場だった。
「でかいねぇ」
のんちゃんも見上げる。
「城と同じくらいあるんじゃない?」
「あるかもな」
たにしも頷いた。
近付くほど大きい。
そして。
人も多い。
入口だけで数千人は居そうだった。
「すげぇ……」
今度はあっくん。
だが見ているのは会場ではない。
屋台だった。
「分かってた」
たくろーが呟く。
会場周辺。
屋台だらけだった。
肉。
魚。
菓子。
酒。
何でもある。
あっくんの目が輝いていた。
危険だった。
そのまま会場へ入る。
通路。
階段。
そして。
観客席へ出た瞬間。
全員。
少しだけ言葉を失った。
「おぉ……」
巨大。
本当に巨大だった。
中央には広い闘技場。
その周囲を囲む観客席。
上段までびっしり続いている。
既に多くの席が埋まっていた。
歓声。
笑い声。
屋台の呼び込み。
祭りの空気だった。
「すごーい!」
「おっきー!」
あいりとこはるは大興奮。
その時。
遠くから声。
「姐さぁぁぁぁぁん!!」
全員振り向く。
居た。
若頭だった。
観客席。
しかもかなり目立つ場所。
「あいつら」
のんちゃんが呟く。
「のんの姐さーん!!最強みせたれえええ!」
「俺等の時のようにしばいたれええ!!」
「のんの姐さーん!!全国制覇っすー!!」
若頭。
アフロ。
ドレッド。
スキンヘッド。
朝から全開だった。
周囲の観客が引いている。
そしてのんちゃんを見てなにやらヒソヒソ。
「姐さん全国デビューおめ」
れんかが言う。
「あいつらからしばきたい」
のんちゃんちょっと顔が赤い。
「お嬢もがんばれー!!」
「れんかお嬢!!俺の時みたいに無表情でやってまぇ!!」
「無慈悲のれんか!!空気も敵も凍らせる女れんかあああ!!」
「最強母娘のん!れんか!!いてこましたれええええ!!」
若頭達、良かれと思い。エールを送る。
周囲の観客、れんかとのんちゃんを見てヒソヒソ。
「れんかお嬢も全国区おめ」
のんちゃん、ニヤニヤ。
「ママ、援護して」
れんかが詠唱しだす。
さすがにたくろーが止めた。
◇
場内に鐘の音が響く。
ゴォォォォン。
ゴォォォォン。
ゴォォォォン。
歓声が少しずつ静まっていく。
「始まるみたいだねぇ」
ひーちゃが言った。
中央闘技場。
大きな壇上。
そこへ一人の女性が歩いていく。
お豆ちゃんだった。
歓声。
拍手。
口笛。
会場が揺れる。
領主は人気者だった。
お豆ちゃんは手を振る。
満面の笑顔。
そして。
魔導拡声具を受け取った。
「おはよー!!」
会場が沸いた。
「おはよー!!」
アイドルのライブか。
お豆ちゃんは満足そうに頷いた。
「今日は!」
「白虎武闘大会だー!!」
大歓声。
地鳴りのようだった。
「個人戦!」
歓声。
「団体戦!」
さらに歓声。
「いっぱい戦って!」
「いっぱい食べて!」
「いっぱい飲んで!」
「いっぱい楽しんで!!」
大歓声。
「それじゃ!」
お豆ちゃんが拳を突き上げる。
「武闘大会!」
一拍。
そして。
「開幕ー!!」
歓声が爆発した。
空気が震える。
観客席が揺れる。
白虎最大の祭り。
その幕が上がった。
そして。
開会式は続く。
各チームの入場紹介が始まろうとしていた。




