第83話 前夜
第四章
第83話 前夜
夕方。
白虎城。
来賓室。
「おぉぉぉぉぉ!!」
城の廊下に叫び声が響いた。
原因。
若頭だった。
「でけぇぇぇぇ!!」
「うるせぇ」
「いや、おやっさん!」
若頭が振り返る。
「城っすよ!?」
「見りゃ分かる」
「でけぇっすよ!?」
「だから見りゃ分かる」
会話になっていなかった。
その後ろ。
アフロ。
ドレッド。
スキンヘッド。
その他山賊達。
全員。
テンションが高い。
観光客だった。
完全に。
「温泉旅館よりでけぇ……」
アフロが呟く。
「比べる相手おかしいだろ」
たくろーが突っ込んだ。
その時。
廊下の向こうから。
「あー!」
「わかー!」
「あふろー!」
あいりとこはるだった。
若頭が笑う。
「おー!チビたちー!」
二人も嬉しそうだった。
「冒険してきたかー!」
「してきたー!」
「きたー!」
元気だった。
その横で。
アフロ達も手を振る。
「白虎楽しんでるかー!」
「たのしいー!」
「おこのみやきたべた!」
「あっくんがおみせ!」
静かになる。
若頭達。
顔を見合わせた。
「何言ってるか分かんねぇ」
だろうな。
その時。
「ただいまー」
聞き覚えのある声。
あっくんだった。
大量の荷物。
持っている。
まだ増えていた。
「なんだそれ」
たにしが聞く。
「食材」
「なるほど?」
たくろーが突っ込む。
「どれだけ買ったんだ」
少し考える。
「あそこから」
「あそこまで」
両手を広げた。
意味が分からない。
◇
「で、お前らなんで来たんだよ」
たにしが聞く。
すると。
若頭達はキョトンとした。
「ヒトデっすよ」
「それは見てたわ。何しにきたんだっつの」
「あ!っそっちっすね!」
若頭が胸を張る。
「俺らも参加するっす!」
「武闘大会出んの?」
「応援っす!」
なるほど。
観客だった。
「選手じゃねぇのか」
「争い事は得意じゃないっす!」
「お前ら元山賊だよな?」
改心しすぎ。
「おやっさん達を送ったヒトデが戻ってきて」
「俺等も行きたいな!いいな!って言ってたら」
「乗せてくれたっす!」
「っす!」
アフロも頷く。
「白虎行くなら乗れって!」
ドレッドも頷く。
「優しかったっす!」
スキンヘッドも頷く。
静かになる。
「お前ら」
たにしが言った。
「なんで通じてんだよ」
全員。
止まる。
少し考える。
そして。
「ノリ?」
◇
そして女子組も戻ってきた。
のんちゃん。
ひーちゃ。
れんか。
そして。
大量の荷物。
と、虚ろな目のチンピラ3人
「おー!」
若頭が手を振る。
「若じゃん」
のんちゃんが笑う。
「来たっす!」
「出んの?」
「出ないっす!」
「そっか!」
話が早い。
「さっそく白虎にも舎弟っすか!さすがっす!」
チンピラを見ながら言う。
「あー。そうじゃないけど…」
その時。
コンコン。
部屋の扉が叩かれる。
「皆様」
カエデだった。
「夕食の準備が整いました」
「お」
「飯!」
「お城の飯!」
「白虎の飯!」
山賊達がざわつく。
だが。
若頭は首を振った。
「俺らは遠慮するっす!」
全員見る。
「ん?」
たにしが聞く。
「ベルクのオジキに頼まれた事あるんで」
若頭が答えた。
「ベルク商会の白虎支店寄るっす」
「ああ」
たにしは納得した。
「その後は?」
「そこらの宿っす!」
若頭が笑う。
「城なんて緊張するっす!」
後ろの山賊達も頷いた。
たしかに。
山賊達が城で一晩過ごすのは落ち着かないだろう。
「じゃあ明日っすね!」
若頭が手を振る。
「おう」
「応援するっす!」
「ほどほどにな」
無理だった。
全員分かっていた。
若頭達は騒がしく手を振りながら去っていく。
その姿を見送り。
たにしは窓の外を見た。
夕暮れの白虎。
街の至る所に旗が飾られている。
明日はいよいよ武闘大会。
白虎で一番賑やかな日が始まる。




