閑話 白虎の街 その1
四章
閑話 白虎の街 その1
朝。
白虎城下町。
「たくろー!」
「あれー!」
「こっちー!」
たくろーは少しだけ後悔していた。
子守を引き受けた事を。
本当に少しだけ。
「走るな」
「やだ!」
「あっち!」
「あれ!」
聞いてない。
幼女二人は元気だった。
無限に。
おもちゃ屋。
噴水。
大道芸。
見るもの全部が珍しい。
「あれすごーい!」
「すごーい!」
「おぉー!」
「おぉー!」
忙しい。
完全に保護者だった。
その途中。
「お父さん大変ですねぇ」
露店のおばちゃんが笑う。
「違います」
数分後。
「良いお父さんだねぇ」
パン屋のおばちゃん。
「違います」
まただ。
さらに。
「可愛い娘さん達だね」
果物屋。
「違います」
誰も信じない。
「あいりこっちー!」
「おおすごーい!」
「こはるーこっち!」
「かっこいいー!」
本人達は楽しそうだった。
しばらく歩き回り。
昼前。
「あ」
あいりが止まった。
「おなかすいた」
「こはるもー」
だろうな。
「なんか食うか」
賛成二票。
即決だった。
市場へ向かう。
すると。
「あれ?」
たくろーが立ち止まる。
行列。
異常な行列。
屋台一つに。
人。
人。
人。
とんでもない列が出来ている。
「なんだあれ」
「おにく?」
「あっちー!」
幼女二人が走る。
引っ張られる。
たくろーも付いていく。
そして。
行列の先を見て。
止まった。
「……」
鉄板の前。
真顔。
焼いていた。
「何してんのあっくん?」
たくろーが聞く。
「露天?」
なぜ疑問系。
意味が分からない。
「あっくん!」
「あっくーん!」
幼女二人が飛び付く。
「うん」
あっくんは頷く。
そして。
また焼く。
ジュゥゥゥ……
良い音だった。
良い匂いだった。
客がどんどん並んでいる。
「いや、何があった」
たくろーが聞く。
すると。
屋台の親父が現れた。
「兄ちゃん救世主だ!」
満面の笑みだった。
さらに意味が分からない。
話を聞く。
元々この屋台、地元の食材を焼く鉄板焼だった。
ただ、あまり売れていなかったらしい。
「客来なくてなぁ」
親父が苦笑する。
そこへ。
朝市を歩いていたあっくんが来た。
「いい食材だね」
「そーだろ!うまいぞ!」
そんな話になったらしい。
「んで、兄ちゃん料理人だって言うからよ」
親父が笑う。
「ちょっとの間離れるからと見ててもらったんだ」
結果。
帰って来たらこうなってたらしい。
「なんでそうなるんだよ」
あっくん。
少し考えた。
荷物を漁った。
そして。
出てきた。
「なんで持ってんだよ」
たくろーが呟く。
オタフクソースだった。
「料理人は常備」
答えになってない。
さらに。
材料を指さす。
小麦粉。
卵。
キャベツ。
豚肉。
全部ある。
「いい食材は美味しく食べたい」
そして。
お好み焼きを焼いてみた。
食べてたら客が寄ってきた。
売った。
大ヒット。
今に至る。
「意味分からん」
たくろーが本音を漏らした。
「おいしい!」
「おいしいー!」
幼女二人は気にしていない。
既に食べていた。
すると。
美味しそうに食べる二人を見てまた客が寄ってくる。
◇
数分後。
「いらっしゃいませー!」
あいり。
「つぎのひとー!」
こはる。
売り子になっていた。
客が笑う。
「可愛いねぇ」
「二枚ください」
「はーい!」
さらに売れる。
「兄ちゃん」
親父が呟く。
「うん?」
「売上10倍だ」
あっくん。
少し考える。
そして。
「そうなんだ」
興味なさそうだった。
その後も。
焼く。
焼く。
焼く。
売る。
売る。
売る。
止まらない。
「観光は?」
たくろーが聞く。
「うん?」
あっくんが首を傾げた。
「いや観光」
「うん」
「うんじゃなくて」
通じない。
本人は。
ちゃんと観光しているつもりだった。
たぶん。
結局。
夕方まで屋台は大盛況。
帰る頃には。
親父と。
あっくんと。
あいりと。
こはるの四人で記念写真まで撮っていた。
「また来いよ!」
親父が手を振る。
「うん」
「またくるー!」
「くるー!」
元気な返事が返る。
その横で。
たくろーは思った。
白虎観光とは。
まぁ楽しそうだしいいか。
割と楽な子守だったしな。
たくろーも店主に小さく手を振った。




