第82話 白虎の朝
第四章
第82話 白虎の朝
翌朝。
白虎城。
「頭いてぇ……」
たにしが額を押さえた。
昨日飲みすぎた。
完全に自業自得だった。
「飲みすぎ」
れんかが本を読みながら言う。
「お前は元気だな」
「飲んでないし」
当然だった。
「それもそうか」
たにしは深いため息を吐く。
その横。
たくろーは普通に朝食を食べていた。
「よく平気だな」
たにしが聞く。
「途中で水に切り替えた」
たくろーが答える。
「偉い」
「お前が飲みすぎなだけだ」
正論だった。
「そういやあっくんは?」
たにしがひーちゃにキュアをかけられながら聞く。
二日酔いを魔法で治さないで。
「あっくんなら」
れんかが本から目を離さず答える。
「朝市」
「朝市?」
「明け方出ていってた」
静かになる。
全員。
「あいつ元気だな」
たにしが呟く。
「それしか目的ないかのかも」
れんか。
納得だった。
その時。
コンコン。
部屋の扉が叩かれる。
「おはようございます」
カエデだった。
「本日は特に予定はありませんが、案内など必要でしたらお申し付けください」
「明日は午前より武闘大会開会式となります」
「それまでご自由にお過ごしください」
完全な自由日だった。
朝食を終え。
それぞれ予定を考える。
「服見たいなぁ」
のんちゃんが言う。
「アクセサリーも見たいねぇ」
ひーちゃも頷く。
「本」
れんか。
相変わらずだった。
「白虎なら色々ありそうだもんねぇ」
「だよねぇ」
その時。
「あいりもー!」
「こはるもー!」
幼女二人が飛び付いてくる。
静かになる。
のんちゃん。
ひーちゃ。
顔を見合わせる。
服屋。
アクセサリー屋。
本屋。
そして。
全力で走り回る幼女二人。
「無理だねぇ」
「だねぇ」
苦笑するママ二人。
その時。
たくろーが手を上げる。
「じゃあ俺が見といてやるよ」
全員が見る。
「いいの?」
のんちゃんが聞く。
「どうせ暇だし」
たくろーが肩を竦めた。
「城下町くらい案内できる」
元住人だった。
土地勘もある。
「あいり」
「なにー?」
「こはる」
「なにー?」
「屋台でも見に行くか」
「いくー!!」
「いくー!!」
即決だった。
「助かるー」
のんちゃんが笑う。
「休日のパパ」
れんか。
「お願いしますぅ」
ひーちゃも頭を下げた。
「任せろ」
面倒見が良い男だった。
「じゃあ俺も適当に――」
たにしが言いかけた。
バァン!
扉が開いた。
嫌な予感。
当たりだった。
「たにしちゃーん!!」
お豆ちゃんだった。
朝から元気だった。
「何だよ」
「でーとしよ!」
「間に合ってます」
即答。
「誰とよ!?殺っちゃうし!」
「サイコパスだな!」
お豆ちゃんはずんずん近付いてくる。
「白虎案内してあげる!」
「住んでたんだけど」
「でーとだよ!」
「人の話聞け」
聞いてない。
いつものだった。
「よし行こっ!」
お豆ちゃんが腕を掴む。
「離せ」
「嫌だ!」
「離せ」
「嫌だ!!」
「おい」
「いーやーだ!」
全く離さない。
のんちゃんが吹き出した。
「仲良いねぇ」
「良くない」
即答。
ひーちゃもくすくす笑う。
「いってらっしゃいぃ」
れんかは本から顔も上げず。
「ご愁傷様」
味方が居なかった。
結局。
たにしはそのまま拉致された。
「でーとだー!」
「違う」
「でーとだー!」
「違う」
騒がしい声を響かせながら。
二人は城を出て行った。
こうして。
ルノア組はそれぞれ白虎の街へ散っていった。
◇
観光。
買い物。
食べ歩き。
市場巡り。
思い思いの時間を過ごす。
そして。
夕暮れ時。
白虎中央広場。
それぞれの用事を終えた面々が自然と集まり始めていた。
「あ!」
こはるが空を指差した。
「ん?」
たにしも顔を上げる。
空。
遠く。
何かが飛んでくる。
速い。
どんどん近付いてくる。
ゴォォォォォ!!
強い風が吹き抜ける。
広場の人々がざわつく。
「なんだ?」
「鳥か?」
「違うぞ!」
やがて。
その姿が見えてくる。
カエデ。
そして。
その背中には見覚えのある顔が並んでいた。
若頭。
アフロ。
ドレッド。
スキンヘッド。
その他山賊達。
「白虎だぁぁぁぁぁ!!」
若頭が叫ぶ。
「うおぉぉぉぉぉ!!」
山賊達も叫ぶ。
観光客だった。
完全に。
広場中の視線が集まる。
たにしは思った。
明日。
絶対うるさい。
間違いなかった。




