第81話 お姫様
第四章
第81話 お姫様
白虎城。
夕食まではまだ時間があった。
「では」
カエデが全員を見回す。
「夕食までご自由にお過ごしください」
「市場」
あっくんだった。
早い。
「明日にされた方が、時間も多く取れるかと思いますが。朝市からご案内出来ます」
カエデが答える。
「あぁ……それはそうかも」
あっくんしょんぼり。
すると。
「城の厨房ならご案内できますが」
あっくんの顔が上がった。
「興味ある」
「行く」
もっと早かった。
「ではこちらへ」
カエデが頷く。
あっくんは迷いなく付いていく。
二人の姿はそのまま廊下の奥へ消えていった。
「相変わらずだな」
たにしが苦笑する。
「ぶれないねぇ」
のんちゃんも笑った。
その時。
「たんけんだー!」
「あいりもー!」
幼女二人が元気よく飛び出した。
「待ちなさーい」
のんちゃんが追いかける。
「走ったら危ないよぉ」
ひーちゃも続く。
結局。
あいり。
こはる。
のんちゃん。
ひーちゃ。
四人で城の探検へ向かう事になった。
残されたのは。
たにし。
たくろー。
れんか。
三人だけ。
静かだった。
「平和だな」
たにしがベッドへ倒れ込む。
「平和だな」
たくろーもソファへ沈む。
「今だけ」
れんかが本を開く。
確かに。
三人はしばらく何もせず。
久しぶりの静かな時間を楽しんだ。
◇
その頃。
「うわぁー!」
「あー!」
探検隊は元気だった。
中庭。
噴水。
長い廊下。
高い天井。
見るもの全部が珍しい。
「あれ見て!」
「みてー!」
完全に観光客だった。
「白虎のお城ってすごいねぇ」
ひーちゃが笑う。
「おっきい!」
「あいりの家にする!」
無理だった。
その時。
大きな窓の向こうに。
豪華な広間が見えた。
金色の装飾。
豪華な椅子。
真っ赤な絨毯。
「おぉ……」
あいりが目を輝かせる。
「おひめさまのおへやみたい!」
「おひめさまー!」
こはるも両手を上げた。
「なりたい!」
「あいり、おひめさまなる!」
「こはるもー!」
完全にその気だった。
すると。
「賑やかだと思ったら」
聞き覚えのある声。
振り向く。
笑顔のお豆ちゃんだった。
「あ!」
「おまめー!」
二人が駆け寄る。
「おひめさまなりたい!」
「なりたいー!」
お豆ちゃんは腕を組んだ。
数秒考える。
そして。
ニヤリと笑った。
「よし!」
嫌な予感しかしなかった。
「最高のプリンセスにしたげる!!」
数十分後。
白虎城の侍女達が総出で動いていた。
「あいりちゃんこっちです!」
「こはるちゃん動かないでくださいねー!」
「きゃー!」
「おー!」
大騒ぎだった。
さらに。
「のんちゃんさんも」
「え?」
「ひーちゃさんも」
「えぇ?」
逃げられなかった。
お豆ちゃんが満面の笑みで頷く。
「せっかくだしね!」
完全に楽しんでいる。
そして。
夕方。
大食堂。
先に来ていた。
たにし。
たくろー。
れんか。
「遅いな」
たにしが言う。
その時。
大扉が開いた。
「みてーーー!!」
あいりだった。
真っ赤な姫ドレス。
フリル。
リボン。
ティアラ。
完全にお姫様だった。
「おひめさまー!」
こはるも続く。
薄いピンクのドレス。
ふわふわだった。
「おぉ」
たくろーが思わず声を漏らす。
「お姫様だな」
たにしも笑う。
「でしょ!」
あいりが胸を張る。
「でしょ!」
こはるも胸を張る。
その後ろ。
のんちゃんが現れる。
深い青のドレス。
普段とは全く違う。
思わず。
食堂の空気が少し止まった。
「おぉ……」
たにしが漏らす。
「やめてよ」
のんちゃんが照れる。
少し顔が赤い。
さらに。
ひーちゃ。
白を基調にした上品なドレス。
柔らかい雰囲気によく似合っていた。
「露出多くないぃ?」
本人は落ち着かないらしい。
「似合ってる」
れんかがぽつりと言う。
「ありがとぉ」
ひーちゃが嬉しそうに笑った。
そして。
最後に。
「どうだー!!」
お豆ちゃん登場。
なぜか一番満足そうだった。
「お前の仕業か」
たにしが聞く。
「うむ!!」
胸を張る。
全く隠す気がなかった。
その時。
再び大扉が開く。
料理人達が料理を運んでくる。
その最後尾。
白いエプロン姿。
「あ」
全員気付く。
あっくんだった。
「なんでお前そこに居るんだよ」
たにしが聞く。
「手伝ってた」
当然のように答える。
後ろでは。
強面の料理長が豪快に笑っていた。
完全に気に入られている。
「何やってんの……」
のんちゃんが呆れる。
「料理」
あっくんは真顔だった。
こうして。
白虎最初の夜。
賑やかな夕食が始まった。




