第9話 この世界にセキスイはないようなので
一章
第9話 この世界にセキスイはないようなので
「といううわけで、村長宅のアプデをやる」
元村長宅。
現在人口8人。
明らかに手狭だった。
特に女子側。
二階からは毎朝、
「踏んだ!」
「蹴った!」
「こはる飛ぶな!」
が聞こえる。
「うわ、自分だけ快適に!ずるっ!」
のんちゃんがドン引く。
「個人宅も建てる?」
ひーちゃが聞いた。
すると、
たにしは首を振る。
「いや、それやるとポイント飛ぶ」
「ひどっ!自分だけ!ひどっ!」
「うるせぇ!話聞け脊髄反射!」
「家って基礎設備も全部別になるだろ」
たにしは木板に図を書き始めた。
「トイレ、水回り、キッチン、資材」
「おぉ」
「それぞれ建てるより、今の村長宅増築した方が絶対安い」
「現実的だな」
たくろーが頷く
「で、こう」
たにしが図面を広げる。
一階。
共有リビング。
キッチン。
トイレ。
男子部屋兼作業スペース。
二階。
各母娘部屋。
女子共有スペース。
「うわ」
のんちゃんが声を漏らす。
「ちゃんとしてる」
「たにしくんこういうの好きやもんな」
たくろーが苦笑する。
「ゲームのハウジングで家具配置八時間やってた」
「狂気じゃ?」
れんかが真顔で言う。
「ロマンだろうが!」
たにしが即ツッコむ。
さらに木板へ書き足す。
「あと作業場兼ねる」
「あー」
あっくんが頷いた。
「料理」
「そう。あっくんキッチン占領するだろ絶対」
「……する」
「即答」
たくろーも図面を見る。
「俺も鍛冶スペース欲しいな」
「だから一階男子部屋、半分仕事場にする」
「村長してるじゃん」
「うるせぇ」
のんちゃんがニヤニヤした。
「でもこれさぁ」
「ん?」
「実質、たにしさんだけ個室では?」
空気が止まる。
「あ」
「ほんとだ」
「最低」
「待て待て待て!」
たにしが立ち上がる。
「違う!事務所、書斎兼だ!」
「村長権限の私物化」
「横領」
「汚職」
「言い方ぁ!」
「じゃあお前ら村長業務やるか!?」
「「「大丈夫です」」」
「即答ぅ!」
笑いが起きる。
その時。
れんかが図面を見ながら眉をひそめた。
「……風呂」
「そこ気にしすぎだろ」
「重要」
「まぁでも家風呂は無理だな」
たにしはUIを開いた。
【家風呂機能:未解放】
「うわほんとだ」
「開拓レベル足りんっぽい」
「じゃあ無理じゃん」
れんかが不満そうに言う。
すると、
たにしは別の項目を指差した。
【簡易共同浴場】
「これならいける」
「共同……」
「嫌そうな顔すんな」
「でも毎日入れる?」
「多分」
「……ならいい」
「風呂への信頼度高すぎん?」
のんちゃんが笑う。
「でだ…」
たにしがUIを指さす
【村長宅アップグレード】
【必要ポイント:300】
全員、無言。
「高ぇ」
「今何ポイント?」
たくろーが確認する。
【現在ポイント:78】
「全然足りねぇ」
「地道にデイリー貯める?」
「問題はそこでなぁ。風呂と合わせて380Pだからなぁ。時間かかるよなぁ」
たにしが腕を組む。
すると。
コンコン。
「んー?」
ベルクだった。
「おや、皆さん揃ってますね」
「どうした」
ベルクは少し困った顔をする。
「実は街道の方に山賊が出まして」
空気が少し変わる。
「最近、荷馬車襲われてるんですよ」
「物騒だな」
「このままだと、この辺の交易かなり減ります」
「……つまり?」
ベルクは苦笑した。
「討伐依頼です」
その瞬間。
【討伐クエスト:街道の山賊を討伐せよ】
【報酬:開拓ポイント+200】
「うわ」
「美味しい」
「いや危ないだろ」
たにしが顔をしかめる。
だが、
その横で。
れんかが真顔で言った。
「風呂まであと少し」
「お前の原動力風呂しかねぇの?」




