第77話 白虎
第四章
第77話 白虎
空の旅は快適だった。
快適すぎた。
「すごーい!!」
あいりがヒトデの背中を走る。
「こら走るな」
たくろーが首根っこを掴む。
「むー!」
「むー!」
こはるも一緒に捕獲された。
全く反省していない。
そんな二人を見ながら。
ひーちゃがくすくす笑う。
のんちゃんは風に髪をなびかせながら景色を眺めていた。
「あーいいねぇ」
「飛ぶの気持ちいい」
「まぁ分かる」
たにしも頷く。
下には。
森。
川。
街道。
村。
全部が小さく見える。
鳥の視点だった。
旅を満喫している。
そんな平和な時間が続き。
昼を過ぎた頃だった。
「ぐるる」
ヒトデが鳴く。
こはるが顔を上げる。
「あれー!」
全員が前を見る。
遠く。
巨大な城壁が見えた。
その向こうには。
建物。
建物。
建物。
さらに奥。
空へ伸びる巨大な城。
白虎だった。
「おぉ……」
ひーちゃが目を丸くする。
「大きいねぇ……」
「でっか」
れんかも珍しく本から顔を上げた。
「都会だ!」
あいりが目を輝かせる。
「おっきー!」
「おっきー!」
こはるも大興奮だった。
城壁の周囲には畑。
街道。
商隊。
人の流れ。
遠目でも分かる。
ルノア村とは比較にならない規模。
まさに都市だった。
「市場楽しみ」
あっくんだけ感想がおかしい。
「まだそれ言ってんの?」
のんちゃんが笑う。
「料理が気になる」
ぶれない。
本当にぶれない。
その横で。
たにしは少し目を細めた。
懐かしい景色だった。
「変わってねぇな」
たくろーがぽつりと呟く。
「だねぇ」
のんちゃんも頷く。
見慣れた景色。
それが少しずつ近付いてくる。
「たにしさん達は初めてじゃないんですもんねぇ」
ひーちゃが聞く。
「まぁな」
たにしが答える。
「なんなら住んでたし」
「そう考えると不思議だよねぇ」
のんちゃんが笑った。
「今は村長だもんね」
「今が気楽で性に合ってるわ」
本音だった。
あの頃は。
まさか自分が村を作るなんて思ってもいなかった。
ヒトデが高度を下げ始める。
巨大な影が地面を走る。
城壁近くの人々がざわついた。
当然である。
空からドラゴンが飛んできた。
しかもかなり大きい。
「うわ」
「見ろよ」
「ドラゴンだぞ」
「本物か?」
「騎竜部隊か?」
下から声が聞こえる。
城壁の上でも兵士達が慌ただしく動いていた。
「あー……」
たにしが苦笑する。
「まぁそうなるよな」
完全に不審者である。
「大丈夫かなぁ?」
ひーちゃが少し不安そうに言う。
「招待されてるし平気だろ」
たくろーが答える。
「たぶんな」
「たぶんなんだ」
れんかが冷静に突っ込んだ。
その時だった。
城壁の上から大声が響く。
「おぉぉぉぉい!!」
聞き覚えがありすぎる声だった。
全員が顔を上げる。
いた。
城壁の上。
手をぶんぶん振っている赤髪。
「たにしぃぃぃちゃあああぁぁん♡」
お豆ちゃんだった。
「あー」
たにしが苦笑する。
「居るな」
「居るねぇ」
のんちゃんも笑う。
「居ますねぇ」
ひーちゃも苦笑する。
「居るわな」
たくろーも頷いた。
全く変わっていなかった。
お豆ちゃんは満面の笑みで叫ぶ。
「遅いぞぉぉぉぉ!!」
「招待が急なんだよ!!」
たにしも負けじと叫び返す。
そのやり取りを見て。
兵士達がざわつく。
「知り合いなのか?」
「知り合いっぽいぞ」
「めちゃくちゃ知り合いだろ」
そんな声が下から聞こえてくる。
白虎。
懐かしい街。
そして。
相変わらず騒がしい連中が待つ街だった。




