閑話 魔法のクッキー
三章
閑話 魔法のクッキー
◇
お昼。
村長宅。
昼食も終わり。
大人達がそれぞれ午後の作業へ戻る前にくつろいでいた。
台所では。
「クッキー焼けたよー」
「焼けたー!」
「やけたー!」
手伝ったあいりとこはるが、バスケットを抱えてやってくる。
「クッキーできたー!!」
「できたー!!」
ちょうどそこに居たのは。
たくろー。
れんか。
のんちゃん。
ひーちゃ。
「お、ありがとう」
「ありがと」
「わぁい」
「おいしそぉ」
全員食べる。
「おいしい!」
大人達の評価に幼女二人はご満悦。
その横。
「たにしもー」
「んー……」
二日酔いだった。
「後でもらうわ……」
ソファへ沈む。
二度寝開始。
「もう、たにしにはあげない!」
そう言いながらも。
嬉しくなった幼女達は。
自分達で食べるのも忘れ。
「みんなにもあげる!」
と家を飛び出していった。
ここまでは。
いつもの平和な昼下がりだった。
◇
チャンチャンチャンチャチャラ!!
チャンチャンチャン!!
フッフー!!
爆音。
「……んぁ?」
たにし起床。
事務所の方向が騒がしい。
「たくろーとれんかで事務処理すると言ってたよな……」
嫌な予感しかしない。
扉を開ける。
爆音。
机の上。
扇を持ったたくろー。
「ウェェェェェェイ!!!」
腰を振っていた。
「たっくんマジ卍ぃぃぃ!!」
「チョベリグーー!!」
れんかがはっちゃけている。
「パーリナイッ!!」
なんだろう、いたたまれない。
その時。
「あ、起きた?」
あっくんだった。
妙に饒舌。
妙に理路整然。
「状況を説明するね」
早口。
「まず原因はクッキーに混入した未処理の紫キノコで」
「摂取者の潜在性格が誇張されて」
「精神的抑制が解除され」
「結果として──」
「あっくんも食ってるな?」
「うん」
即答だった。
「こいつらここから出すな」
たにしがたくろーとれんかを指差して真顔で言う。
「色んな意味でルノアが終わる」
「任せて」
あっくんがハンマーを持って頷いた。
◇
――数時間前。
「後はナッツ乗せて焼くだけ」
あっくんが幼女二人へ言う。
「あいりやるー!」
「やるー!」
元気よく挙手。
「じゃぁお願い。ちょっと倉庫行ってくるから、戻ったら一緒に焼こう」
「はーい!」
「はーい!」
良い返事。
小さく微笑み。
あっくんはキッチンを離れた。
「ねぇねぇ」
あいりが棚にナッツを見つける。
そしてその隣にあるものへ気付いた。
「これおいしそう」
紫色のキノコ。
「きのこー」
こはるも興味津々。
「あっくん、いつも料理に入れてるよね?」
「いれてるー」
「美味しいよね!」
「おいしい!」
「じゃあ入れたらもっとおいしいじゃん!」
「てんさい!」
「てんさい!」
数分後。
刻まれた紫キノコが生地へ混入された。
善意100%だった。
あっくんが戻ってくる。
「できたー?」
「うん!」
「うん!」
良い返事だった。
焼く。
焼ける。
いい匂い。
「できたー」
あっくんが一枚食べる。
もぐもぐ。
「うん。おいしい」
気付かない。
「やったぁ!!」
幼女達大喜び。
リビングへ突撃した。
――という事があったと後に判明する。
◇
家を出たたにしは。
まずジージ宅へ向かった。
「ソニア!チビらのクッキー……!」
扉を開けながら叫ぶ。
だが。
状況を見て固まった。
「現在のルノア経済圏における発展速度は──」
ジージ。
なにやら使徒を殲滅しそうな姿勢で小難しい事を喋っている。
対してソニア。
「医療制度改革案についてですが」
「午前中までにまとめました」
「あと十年で人口予測は、パターン青です!」
「勝ったな……」
「うん、お前らはなんならそのままでいいわ」
たにしは真顔で言った。
◇
次。
薬小屋。
ひーちゃに解毒薬を作ってもらおう。
扉を開ける。
「ひーちゃー」
「うっせぇわぼけぇ!!」
怒鳴られた。
たにし閉める。
深呼吸。
もう一回開ける。
「ひーちゃ?解毒薬を……ね?」
「今やっとる言うとるじゃろうが!!」
広島弁だった。
机の上。
確かに解毒薬らしきものを作っている。
「えっと……理性も残って……らっしゃる?」
「残っとるわぼけぇ!羞恥じゃぼけぇ!」
「他のモン見てこんかい!ぼけぇ!」
「はい」
即退散。
怖い。
◇
次。
ルノア組。
静かだった。
嫌な予感しかしない。
扉を開ける。
若頭が居た。
そして。
のんちゃん。
スズ。
二人が若頭を壁際へ追い詰めていた。
「若ぁ♡」
半裸の胸を人差し指でツーッとなぞるのんちゃん。
「ねぇ♡」
若頭の腕へ胸を押し付けるスズ。
「ひぃっ」
若頭。
いつになく怯えている。
周囲の山賊達。
距離を取る。
「見ちゃいけないっす」
「若ぁ……頑張れ……」
「助けろ」
「無理っす」
即答だった。
たにしも若頭と目が合う。
「おやっさ……」
助けを求める目だった。
たにしは静かに扉を閉めた。
見なかった事にした。
◇
そして。
ルノア組の屋上。
そこに。
犯人達が居た。
「ひとでー!」
「ひとでー!」
ヒトデと遊んでいた。
「たのしかったねー!」
「ねー!」
「なくなっちゃったねー!」
「ねー!」
「またつくろー!」
「つくろー!」
「二度と作るな……」
たにしが頭を抱える。
◇
ウェェェェェイ!!
事務所。
じゃけぇぇぇぇ!!
薬小屋。
若ぁぁぁ♡
ルノア組。
「はぁ……」
たにしは空を見上げた。
なお。
翌日。
被害者達は全員。
死んだ魚のような目をしていた。




