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オフ会してたら異世界に飛ばされたのでゲーム脳で生き抜いてみる  作者: 元 智
そして迷う

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 第76話 いってきます

第三章


 第76話 いってきます



早朝。


ルノア村。


まだ日も昇りきっていない。


少し冷たい朝の空気。


なのに。


村の広場には人が集まっていた。


理由は一つ。


ヒトデ。


でかい。


とにかくでかい。


村の中央へ陣取る巨大な赤黒のドラゴン。


折り畳まれた翼だけでも家数軒分。


その姿は何度見ても圧巻だった。


そして。


その前には。


新装備に身を包んだルノア組。


たくろーは黒赤の大盾と剣。


のんちゃんは新しい弓を肩へ掛け、腰にはナイフ。


れんかは黒いローブの上から、いつものように本を抱えている。


ひーちゃは白木の杖を片手に、どこか嬉しそうだった。


あっくんは巨槌よりも、新しい包丁を眺めている。


たにしの腰には二本の双剣。


見慣れないはずなのに。


不思議と最初から使っていたように馴染んで見えた。


「どう!?」


あいりが胸を張る。


赤黒マント。


ゴーグル。


小さな剣。


本人は完全に冒険者だった。


「似合ってるよぉ」


ひーちゃが笑う。


「でしょ!」


あいりは満足そうだった。


その隣。


「がおー」


こはるが両手を上げる。


ヒトデを模した着ぐるみ。


赤黒の翼。


小さなしっぽ。


丸っこいお腹。


どう見てもドラゴンの子供だった。


「かわいい」


のんちゃん即答。


「かわいいな」


たくろーも認めた。


「がおー」


こはる満足。



広場では見送り組も集まっていた。


スズ。


ルーク。


ベルク。


ソニア。


ジージ。


工房職人達。


村人達。


山賊達。


かなりの人数になっている。


「ひーちゃさん」


ルークがひーちゃに声を掛ける。


「ルークさん。おはようございます」


ひーちゃが微笑む。


ルークは少し大きめの木箱を持っていた。


「これを皆さんに」


ぶっきらぼうに差し出す。


中には。


木彫りのアミュレット。


一つ一つ形が違う。


「おぉ」


たくろーが手に取る。


釣り竿と冠。


金槌と盾。


弓と太陽。


氷と火。


包丁と大槌。


筆とひまわり。


ヒトデとハナ。


それぞれの特徴を模した意匠になっていた。


「すごーい!!」


あいりが目を輝かせる。


「ひとで!!」


こはるが一つを持ち上げる。


そこには。


小さなドラゴンが彫られていた。


「がおー」


こはる満足。


「ぐるる」


ヒトデもなんか満足そうだった。


「ひーちゃさんにはこれを」


ルークが手渡す。


「わぁ…」


月に薬草の意匠。


「素敵…」


ひーちゃはあの日の夜を思い出して柔らかい気持ちになる。


「おーかわいい」


のんちゃんが、ひーちゃの手元を覗き込む。


「なんか、ひーちゃのだけ凝ってない?」


「そんな事ないと思いますけど」


ルークは真顔で答える。


「ひーちゃって月のイメージ?」


れんかもちょっと不思議そうに見る。


「ルークさんにはそうなんだろうねぇ」


ひーちゃはルークに微笑む。


「え?なになに?その二人通じ合ってる感!?なに!?」


のんちゃんヒートアップ。


「ふふふ…内緒」


ひーちゃが悪戯っぽく笑う。


「ロマンスの予感」


「では、皆様の旅の無事を願ってます。いってらっしゃい」


ルークは動揺などする様子もなく、柔らかく微笑んだ。


「はい、いってきます」


ひーちゃも柔らかく微笑み返す。


何か言いたげなのんちゃんが、れんかに引っ張られて行く。


空気が読める娘である。



「たにしさーん!!」


今度はスズが叫ぶ。


目の下にクマ。


酷い。


職人の限界だった。


「装備無くさないでくださいねー!!」


「寝ろ。つか無くすか」


たにしが言う。


「寝たら出発に間に合わないじゃないですか!!」


「もう終わっただろ」


「魂がまだ工房にあります!!」


完全に徹夜明けだった。


「スズちゃん寝なよ。疲労回復薬あげようか?」


ひーちゃが心配そうに言う。


「白虎からみんなが帰ってくるまで寝ます!!」


それは寝すぎ。とひーちゃが笑う。


「疲労回復薬はやめとけ…」


たくろーは遠い目をしていた。



「朝から大騒ぎじゃのぉ」


ジージが、ソニアとベルクと共にたにしに声をかける。


「ほんとにな」


たにしが笑う。


「まぁ留守はまかせとけ」


「おじーちゃん何もしないでしょ!」


「ふぉっふぉっふぉ」


「村長!ちゃんとベルクさんとやるので、ご安心ください!」


「ソニア、よろしく頼む」


「村長、向こうの支店に話通してあります。アテンダントも手配してありますので、お立ち寄りください」


「ホント、シゴデキだな。助かるわ。留守まで頼んですまんな」


たにしは頭をかきながら言う。


「いえ、いってらっしゃいませ」


ベルクは笑って答えた。


「よし、じゃぁ乗り込むかぁ!」


たにしが声をかける。


こはるはすでに、ヒトデの鼻先をよじ登っている。


「慣れすぎだろ」


「ぐるるー」


完全にいつもの光景だった。



荷物も積み込み終わる。


「ハンカチ、ティッシュ持ったかぁ!」


「おやつは500Gまでな!バナナはおやつに入らないぞ!」


「遠足じゃないから」


れんかが呆れる。


「よーし!」


のんちゃんが両手を上げる。


「それじゃ出発ー!!」


「おー!!」


あいり。


こはる。


ひーちゃ。


たくろー。


れんか。


あっくん。


のんちゃん。


そしてたにし。


順番にヒトデの背へ乗り込む。


「うおぉ……」


思ったより広い。


「だから何人乗りなんだよお前」


たくろーが呟く。


「ぐるる」


「余裕らしい」


「え?たくろーもわかるの?」


「ノリだ」


たくろーもちょっとテンション上がってるらしい。



全員が乗り込んだのを確認し。


ヒトデがゆっくり翼を広げた。


ゴォォォォ……


巨大な影が村を覆う。


風が吹く。


村人達が手を振る。


山賊達も手を振る。


「いってらっしゃーい!!」


「優勝してこーい!!」


「机壊すなよー!!」


「それはお前らだろ!!」


大爆笑。


ヒトデが前足を踏み出す。


一歩。


二歩。


そして。


ドォン!!


大地を蹴った。


「うわぁぁぁぁ!!」


あいり歓喜。


「ひゃぁ!?」


のんちゃん悲鳴。


「ママ楽しそう!」


「楽しくない!!」


風圧。


浮遊感。


一気に地面が遠ざかる。


村人達の姿が小さくなる。


広場。


工房。


市場。


畑。


東の橋。


ルノア温泉。


全部が少しずつ小さくなっていった。



「おぉ……」


たにしが思わず声を漏らした。


綺麗だった。


ルノア村。


自分達が作った村。


仲間達がいる場所。


帰る場所。


空から見ると。


それは思っていたよりずっと大きく見えた。


「すごーい!!」


あいりが身を乗り出す。


「おー!!」


こはるも両手を広げる。


「落ちるなよー」


たくろーが首根っこを掴んだ。


「むー!」


「むー!」


全く反省していない。


その様子に。


ひーちゃがくすくす笑う。


れんかは本を開き。


あっくんは既に弁当を広げ始めていた。


「早くない?」


「朝ごはん」


昼もあるのね。


「ぐるるるる」


ヒトデが気持ち良さそうに鳴く。


巨大な翼が空を切る。


その先には。


白虎。


武闘大会。


そして。


まだ見ぬ景色。


ルノア村一行を乗せたドラゴンは。


青空の向こうへと飛んでいった。



三章


  終


読んで頂きありがとうございます!


次章より、白虎武闘会編となります!


稚拙な文で読みにくい所も多いと思いますが、ノリで読んで楽しんでいただければ嬉しく思います!

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