第74話 装備更新
第三章
第74話 装備更新
◇
カンカンカン!!
昼。
工房区画。
すでに騒がしかった。
◇
机の上には。
ヒトデ素材。
鱗。
牙。
爪…などなど。
そして大量の設計図。
◇
「すごいやる気だな」
たにしが苦笑する。
「遠征前ですからね!!」
スズが胸を張った。
「装備更新イベントです!!」
「急なゲーム感」
れんかが呆れる。
◇
「まず誰から聞く?」
たくろーが図面を広げながら言う。
「タンクからです!!」
スズ即答。
「じゃ、俺からか」
たくろーが答える。
「希望あります!?」
スズが身を乗り出す。
「丈夫で長持ち」
「雑です!!」
スズが叫んだ。
「いやでも実際そこだろ」
「白虎の連中、火力高そうだし」
「なので考えてます!!」
スズが勢いよく図面を叩きつける。
「竜鱗大盾です!!」
「うわロマン」
のんちゃんが笑った。
「ヒトデちゃんの鱗、耐衝撃性能イカれてるんですよ!!」
「しかも魔力通るんで、防御魔法との相性も最高です!!」
「100人乗っても壊れません!」
乗らないから。
「重さは?」
たくろーが聞く。
「そこ今調整中です!!」
「よしじゃぁそこら詰めよう」
シゴデキ会話。
「次、のんちゃん」
たくろーが視線を向ける。
「うーい」
「希望ある?」
「軽くして」
「あと動きやすく」
「あと火力」
うん、脳筋。
「防御は?」
スズが聞く。
「避ける」
「感覚派すぎ」
れんかが呆れた。
「弓も更新したいねぇ」
のんちゃんが言う。
「ヒトデ素材なら、もっとしなり良くならない?」
「なります!!」
スズが即食いつく。
「髭も拝借してあるので、弦も強化します!!」
ヒトデ、拝借させすぎだろ。
「あとナイフ類も増やします?」
たくろーがメモを取る。
「投擲用も欲しいか?」
「あ、それいい」
完全に実戦派だった。
◇
「次、れんか」
「……」
本を読みながら顔だけ上げる。
「言うてもドラゴン素材で使えるようなのは少ないか」
たくろーが短く聞く。
「軽く」
「うん」
「目立たなくていい」
「うん」
「魔力通ればいい」
「装備で言うと魔導書とローブだしなぁ」
たくろーが頷く。
「となると魔力強化の装飾系か」
「それでいい」
「火と氷メインなら、魔力変換効率上げるか」
「それがいい」
会話が早い。
「次、ひーちゃ」
「はぁい」
「杖どうする?」
たくろーが聞く。
「持ち運びやすいのがいいですねぇ」
「今の木の杖、かさばるのでぇ」
「持ってるとこ見たことないが」
「採集用バックに入れっぱなしぃ」
「なるほど…」
装備とは。
「性能面は?」
スズが聞く。
「回復の補助かなぁ?なくてもいいけどぉ」
「あとかわいいの」
「そこ重要なんだな」
「でもぉ」
ひーちゃがにこにこしながら言う。
「ヒトデちゃん素材なら、殴っても強そうかもぉ?」
一瞬止まる。
「……え?」
「回復しながら殴れそうかなぁ?」
「物理ヒーラー爆誕」
たにしが真顔になる。
「いやでも実際、強度ヤバいんですよ!!」
スズが乗っかる。
「鈍器運用できます!!」
「ヒーラーとは」
◇
「次、あっくん」
「んー?」
「武器どうする?」
たくろーが聞く。
「包丁」
「一旦料理から離れてくれ」
「巨槌は?」
「使うけどー」
「ハンマーは肉が柔らかくなるならどんなんでもいい」
「包丁が料理人の武器。こだわる」
もう、ブレないね。うん。
「ヒトデ素材包丁……」
スズが震える。
「ギコギコしません!スーッと!なやつですね!!」
「お前なんでそんな嬉しそうなん?」
「……で、たにしくんは?」
たくろーが聞く。
「おれ?」
たにしが首を傾げる。
「なんでもいいけどなぁ」
「確かに、その辺のモンで戦ってた記憶しかないな」
たくろーが苦笑する。
「あーでも、双剣が若干慣れてっかもなぁ」
たにしが顎へ手を当てる。
「確かに、色んなモン両手で使ってた感はあるな」
たくろーも頷いた。
「斧二本とかやってたし」
「鍋とツルハシ持って戦ってたこともあったよねぇ」
のんちゃんが笑う。
「双剣って言うか、両刀遣い」
「れんか。それはちょっとなんか語弊がある」
「たくろーにバックハグされてた」
「お前!意味わかってていってんだろ!!」
「つまり器用万能型ですね!!」
スズの目が輝く。
「いい風に言うな」
たくろーが頭を掻いた。
「双剣ベースで、予備武器多めにするか?」
「んー、色々持ち歩くのめんどいな。2本でいいわ」
「了解」
「よし来たぁぁぁ!!」
スズが図面へ飛びつく。
「ヒトデ双剣作ります!!」
「名前、弱そう」
れんかがぼそっと呟いた。
「あいりも装備欲しい!」
あいりが身を乗り出す。
「いや、あいり戦闘しないだろ?」
たくろーが言う。
「しなくても欲しい!」
「マント!!」
即答。
「あと剣!!」
「戦わないよな?」
たくろーが確認する。
「かっこいいじゃん!!」
「ゴーグルも欲しい!!」
「スズみたいなの!」
「分かってますねぇ!!」
スズが握手した。
◇
「こはるのも!作ってあげて!」
あいりが言う。
「こはるにもかぁ。いらんだろ」
「仲間はずれかわいそう!」
「わかったわかった」
諦めたくろー。甘い。
「こはる、どんなのがいい?」
ひーちゃが優しく聞く。
「んー…」
とこはるは考え。
「ひとでになりたいー」
ふわっと答える。
「難題来たな……」
たくろーが呟く。
「キラキラでー」
「ふわふわでー」
「あったかいのー」
「…うん、全くわからん」
たくろーが真顔で困る。
「いや待ってください……」
スズが急に真顔になる。
「ヒトデとこはるちゃんの親和性考えると……」
「軽量化して……」
「魔力循環を……」
「あーじゃぁそれはスズに任せるわ」
たくろーが丸投げた。
「了解です!!」
スズが叫ぶ。
「……まぁ楽しそうだしいいか」
たにしが苦笑しながら言う。
◇
「たくろーさん!!」
スズが図面を抱えながら叫ぶ。
「時間足りません!!」
「だろうな」
「徹夜です!!」
「だろうな」
「燃えてきましたぁぁぁ!!」
スズの目が完全に職人だった。
「こっちは素材整理しとくか」
たくろーも立ち上がる。
「鱗は防具系」
「牙と爪は武器回すぞ」
「了解です!!」
会話が早い。
完全に仕事モードだった。
「おぉー……」
あいりが目を輝かせる。
「なんかほんとに冒険前って感じ!!」
「かんじ!」
こはるも真似して手を上げた。
「白虎行く前に工房が死にそうだけどねぇ」
のんちゃんが笑う。
「いや実際死ぬっすよこれ」
スズが真顔で返した。
「人数多すぎます!!」
「自分で全員分作る気になったんだろ」
たくろーが呆れる。
「でもぉ」
ひーちゃが楽しそうに工房を見回した。
「なんだか文化祭前みたいだねぇ」
その言葉に。
「あー……」
「確かに」
「わかる」
妙にしっくり来た。
◇
遠征。
武闘大会。
ドラゴン移動。
装備更新。
大イベント前。
なのに。
空気はどこか。
学生の旅行前みたいだった。
◇
「よし!!」
のんちゃんが立ち上がる。
「白虎行くまでにテンション上げてくぞぉー!!」
「おー!!」
あいりが両手を上げる。
「おー!!」
こはるも続く。
◇
その横で。
「……まずは徹夜確定ですね」
「だなぁ」
工房組だけは現実を見ていた。




