第71話 友好の形
第三章
第71話 友好の形
◇
「今日は泊まっていくの?」
のんちゃんが笑いながら聞いた。
「いえ、さすがに帰る予定ですが……」
カエデが答える。
その後ろでは。
「うおおおお!!」
「マツコちゃんいけぇぇぇ!!」
まだ盛り上がっていた。
「じゃぁ、もうちょっとだけ騒いでいきなよ。まだ夕暮れですらないしさ」
のんちゃんが肩を竦める。
「あいつら楽しそうやん」
目の前のテーブルでは。
アフロとウメコが、恋愛相談?をしていた。
「つまり、押しが大事ってことっすか?」
「お、押す……?」
「いやでも……優しさも……」
「難しいっす!」
「ア、アフロさん……好きな人いるん……ですか?」
「いや、いないっす!」
「いないんだ……じゃぁこれなんの……は!(私!?)」
妄想爆走で赤面し、モジモジするウメコ。
「……」
カエデが静かにその様子を見る。
他の親衛隊達も。
山賊達も。
みんな楽しそうだった
「たまには息抜きもさ」
のんちゃんが笑う。
「カエデも、ほら座って飲みな」
「はい……では頂きます」
「カエデもお豆ちゃんも酒豪だもんなぁ。私は食べ専だけど」
そう言いながら、のんちゃんはひっくり返った椅子を戻して隣へ座る。
「おーい!!」
のんちゃんが室内へ向かって叫ぶ。
「たにしさん達に声かけてこーい!!」
「あと!飯追加してこーい!!」
「二次会だぁぁぁ!!」
「うおおおおお!!」
山賊達が盛り上がる。
「いやっほぉぉぉ!!」
「肉追加っす!!」
「酒もいるっす!!」
「机はもう無いっす!!」
「それは知らん!!」
のんちゃんが爆笑した。
◇
「……本当に自由ですね、この村」
カエデが呆れ半分で呟く。
「今さら?」
のんちゃんが笑う。
「そして……平和ですね」
カエデがぽつりと呟く。
「ん?」
のんちゃんが山賊焼きを頬張りながら聞き返す。
「いえ」
カエデは室内を見回す。
騒ぐ山賊達。
笑う親衛隊達。
恋愛相談。
筋トレ。
ポージング。
壊れた机。
散らかった床。
空き瓶、食べかけだらけのテーブル。
なのに。
嫌ではない。
「姉様がたにしさんを気に入る理由が分かる気がします」
カエデが静かに言った。
「居心地いいっしょ?」
のんちゃんが笑う。
「……はい。そうですね」
カエデも少しだけ笑った。
「まぁ、たにしさんだけでってわけじゃないけどね」
のんちゃんが笑いながら言う。
「それはもちろんです」
カエデは静かに頷く。
「ですが、たにしさんの周りに集まった人達が作った空気というか……」
視線の先。
山賊達が笑っている。
親衛隊達も笑っている。
ぐちゃぐちゃなのに。
不思議と空気は温かかった。
「まぁ確かに、変人ホイホイみたいなとこはあるね」
のんちゃんが笑う。
「あ、私もか?」
「否定はできません」
カエデが真顔で返した。
「そこ否定するとこじゃない!?」
のんちゃんが爆笑する。
「まぁもう、カエデもその周りの中の一人になってるかもよ」
「お豆ちゃんごとね」
その言葉に。
カエデは少しだけ目を丸くした。
室内では。
「うおおおおお!!」
「アフロぉぉ!負けんなぁぁぁ!!」
まだやっていた。
ウメコは。
「が、頑張ってください……!」
完全に応援側へ回っていた。
「……そうかもですね」
カエデは小さく笑った。
その表情は。
最初に村へ来た時より、ずっと柔らかかった。
◇
結局。
この宴は朝まで続いた。
◇
早朝。
ルノア組前。
「大変お世話になりました」
カエデだけが、ケロッとした顔で立っていた。
その後ろ。
親衛隊達。
ぐったり。
完全に敗残兵だった。
「……まだ戦える……」
「……恋愛は……難しい……」
「何学んで帰る気なの君ら」
のんちゃんが笑った。
その横では。
山賊達も並んで見送りに来ていた。
アフロは眠そうに手を振り。
スキンヘッドは地面で寝ている。
ドレッドはずっと何を吐いてる。
若頭だけは元気だった。
「また来いっすよー!」
「次は机もっと用意しとくっす!」
「恋バナの続きもまたするっす!」
「お前はもう寝ろ」
ドレッドがアフロを蹴った。
「ア、アフロさん……」
ウメコがモジモジしながら前へ出る。
「その……また……」
「おう!またっす!」
即答だった。
ウメコが真っ赤になる。
「ふふっ」
マツコが笑う。
「本当に変な村だな、ここは」
「褒め言葉っすよね?」
若頭が笑った。
◇
「それでは、改めて」
カエデが軽く頭を下げる。
「楽しかったです」
「こっちもー」
のんちゃんが手を振る。
山賊達も一斉に手を振った。
◇
ちなみに。
他のメンバーは
何かを察したかのように、一度も近寄らなかった。




