第70話 異文化交流
第三章
第70話 異文化交流
◇
ルノア組へ戻ってきた三人は。
違和感に気付いた。
「……あれ?」
のんちゃんが首を傾げる。
表に誰も居ない。
いつもなら。
木材運び。
筋トレ。
昼寝。
なにかしら山賊が転がっている。
なのに。
今日は妙に静かだった。
◇
その代わり。
建物の中がやたら騒がしい。
「嫌な予感しかしない」
カエデが真顔になる。
「まぁ……ウチの連中っすからねぇ」
若頭は対して気にする様子もなく言った。
◇
のんちゃんが扉を開ける。
瞬間。
熱気。
酒臭さ。
肉の匂い。
そして。
長机。
大量の酒。
大量の肉。
腕相撲。
ポージング。
なぜか肩を組んでいる山賊とアマゾネス。
完全に宴会だった。
「盛り上がってんねぇ」
のんちゃんが笑う。
◇
「マツコちゃん!!押せぇぇぇ!!」
「スキンヘッド負けんなぁぁぁ!!」
盛り上がる室内。
しかし。
アマゾネス達が、入口の三人に気付いた瞬間。
「……!!」
ハッと我に返る。
ババッ!!
酒を置く。
背筋が伸びる。
一瞬で整列。
完全に親衛隊モードだった。
◇
「…………」
カエデが無言になる。
対して。
山賊側。
「お、姐さん達おかえりっすー!!」
「若ぁー!マツコちゃん達バカ強ぇっす!!」
「見てくださいよこの机!!」
「壊れたっす!!」
まるで悪びれていなかった。
◇
「ち、違うんですカエデ様!!」
ウメコが真っ赤になりながら前に出た。
「これはその……交流というか……!」
クネクネ。
モジモジ。
視線が泳ぐ。
◇
「ウメコちゃん顔真っ赤っすよ?」
アフロがニヤニヤしながら言う。
「ひゃい!?」
ウメコが飛び上がった。
さらに赤くなる。
◇
「いやぁー、でも最初マジで気まずかったんすよ?」
ドレッドが笑いながら言う。
◇
少し前。
ルノア組。
残された山賊達とアマゾネス達。
気まずい。
とにかく気まずい。
「……」
「……」
誰も喋らない。
◇
若頭も。
のんちゃんも。
カエデも居ない。
現場に残されたのは。
コンパ初めましてな男女だった。
なお、幹事不在。
◇
耐えきれなくなったアフロが立ち上がる。
「あ、姐さんら肉食うっすか!?」
「プ、プロテインもあるっす!!」
「座布団使うっすか!?」
必死だった。
◇
「……頂こう」
タケコが頷く。
そこからだった。
◇
「マツコちゃん酒いけるっすか?」
スキンヘッドが酒瓶を持ち上げる。
「無論だ」
マツコが答える。
「おっ」
「ほう」
火が点いた。
◇
「マツコちゃんいけるなああああ!!」
「そっちこそだ!!」
「勝負だぁぁぁ!!」
気付けば酒盛りが始まり。
腕相撲が始まり。
筋トレが始まり。
ポージングが始まり。
恋愛相談まで始まった。
◇
「す、好きな男のタイプとかあるんすか!?」
アフロが勢いで聞く。
「つ、強い人だ……」
ウメコがクネクネしながら答える。
「おおー!!」
山賊達が盛り上がる。
「あと、その……優しくて……」
モジモジ。
「うわ純情だ!!」
◇
「やっぱ姐さんらって強い男が好きなんすか?」
ドレッドが聞く。
「当然だ」
タケコが即答した。
「背中を預けられる男でなければ困る」
「うわ本物だ……」
ドレッドが感動していた。
◇
一方。
アマゾネス側も山賊達を観察していた。
「……意外と悪くないな」
マツコが酒を飲みながら言う。
「もっと野蛮な連中かと思っていた」
「分かる……」
「なんか……思ったより優しい……」
ウメコがモジモジしながら言う。
ひそひそ話。
聞こえている。
山賊側が照れる。
◇
「ルノア組は強いな……」
マツコがアフロを見る。
「ん?」
「こんな男、白虎にもそう居ない」
「へへ、照れるねぇ」
アフロが頭を掻いた。
「そっちこそ、こんなにみんな可愛いのに強いわぁ」
「ばっ!かっ…かわいいとかいうな!」
とマツコ慌てて酒を飲み干す。
みたいなことがあって、今っす!っとドレッドが言う。
のんちゃんはずっと腹を抱えて笑ってた。
◇
その時。
「若頭ぁ!!」
スキンヘッドが叫ぶ。
「マツコちゃんバカ強ぇっす!!」
「お?」
若頭がマツコへと近づく。
背筋を伸ばし直立不動のマツコ。
若頭は徴発するように腕を組みながら笑う。
そこで。
マツコは、一度カエデを見る。
「……カエデ様」
「なんでしょう」
「この男と、勝負しても?」
カエデは。
机。
酒。
酔っ払い。
壊れた椅子。
現場を見渡して。
静かに目を閉じる。
「……好きにしてください」
完全に諦めた声だった。
◇
「許可出たっすね」
若頭が笑う。
「うむ!」
マツコも笑った。
◇
腕相撲開始。
「うおおおおおお!!」
周囲が盛り上がる。
若頭とマツコの腕がぶつかり合う。
ギリギリギリギリ……!!
「おお……」
初めて。
アマゾネス側が驚いた。
互角だった。
◇
数秒後。
ドゴン!!
机ごと吹き飛んだ。
「あーーー!!」
「また机がぁぁぁ!!」
山賊達が盛り上がる。
◇
「はっはっは!!」
マツコが豪快に笑う。
若頭も笑った。
「姉ちゃん強ぇっすねぇ!!」
「貴様もな!!」
完全に体育会系だった。
◇
カエデは。
盛り上がるアマゾネス達と山賊達を見ながら。
静かに目を閉じた。
「……頭が痛いです」
「だろうねぇ」
のんちゃんだけが、腹を抱えて笑っていた。




