表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
オフ会してたら異世界に飛ばされたのでゲーム脳で生き抜いてみる  作者: 元 智
そして迷う

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
77/105

 第69話 ルノア村視察

第三章


 第69話 ルノア村視察



「じゃ、まず市場からいこーか」


のんちゃんが気軽な調子で歩き出す。


「お願いします」


カエデは静かに頷いた。


その隣を、若頭がふらふら歩いている。


「両手に華っすねぇ」


「お前は真面目に案内しろ」


のんちゃんが笑いながらツッコんだ。



朝の市場。


すでに多くの村人で賑わっていた。


焼き串の匂い。


野菜を並べる声。


値段交渉。


子供達の笑い声。


活気。


「おー、今日魚多いねぇ」


のんちゃんが露店を覗き込む。


「朝イチでハッチャン漁師達が戻ったんすよ」


若頭が答える。


「橋できてから流れ良くなったんで、最近かなり安定してるっす」



カエデは周囲を静かに見回していた。


行き交う村人。


笑い声。


荷運び。


武装した見回り。


市場として成立している。


「……思ったより整っていますね」


「ん?」


「もっと急造集落のようなものを想像していました」


若頭が軽く笑う。


「最初はそんな感じだったっすよ?」


「今はもう普通に村ってか町っすね」


「最近、人増えたもんねぇ」


のんちゃんがたこ焼きを買いながら言う。


「はいこれ」


カエデに渡す。


若頭へは投げる。


「お、あざっす」


自然にキャッチ。


「ああ、これがたにしさんが作ったっていう……」


「そうそう。もう今は村人にやらせてるけどね」


フランチャイズウッハーするって言ってたけど。


とのんちゃんは笑う。


カエデは一口食べる。


「すごく……おいしいです」


「なんかくやしいけど、そうなんだよねぇ」


とのんちゃんが笑った。



市場を抜け。


畑区域へ向かう。


広い耕作地。


整備された水路。


働く村人達。


「ここら辺は最近かなり安定してきたかなぁ」


のんちゃんが言う。


「保存食も増えたし」


「見張りも置いてるんで、盗難もほぼ無いっす」


若頭が続ける。


「自警団運用までしているんですね」


カエデが静かに呟いた。


「元山賊が自警ってウケるっすね!」


お前が言うな。



その後。


住居区画。


貯水設備。


順番に見て回る。


歩く度に、カエデの視線が少しずつ変わっていった。



「次、温泉いこっか」


のんちゃんが言う。


「はい、姉様が特にじっくり見てこいと」


「この前、すごく入りたがってたもんねぇ」


「はい。近々、湯治には来るかと」



ルノア温泉。


木造温泉旅館。


なのだが、銭湯のような感覚で村人にも愛されている。


今も、昼だというのに、それなりに人がいる。


風呂上がりの村人。


牛乳を飲んでいる山賊。


縁側で寝ているおっちゃん。


完全に生活の一部だった。


「おー、若頭ぁー。おつかれーっす」


「昼からサボってんなよ」


「仕事前の一風呂っす」


だらけていた。



「はい、ここの名物はこれ」


のんちゃんが、カエデへ冷たい飲み物を渡す。


「これは?」


ありがとうございます。と受け取りながらカエデが聞く。


「ルノアフラペチーノ。れんかが作ったやつ」


「れんか……娘さんが」


と言いながら飲む。


「美味しいです。タピオカ?みたいなものも?」


「そうそう。なんかその辺も企業秘密?とかで一人でやってたんだけど、限界来たらしくて、ベルクのとこに技術ごと売ったらしい」


だからあいつ今、金持ってる。


とのんちゃんが笑う。


「たにしさんみたいに、フランチャイズにはしなかったんですね」


「一過性の流行りだし。値がつくうちに売る」


れんかの喋り方を真似して、のんちゃんが言う。


「姐さん!お嬢の真似上手いっす!」


「母娘だっつの!当たり前だ!」


二人して大爆笑。


「経済理論しっかりしてますね……」


カエデは、聞こえないくらいの声でつぶやいた。



「まぁ、温泉はいいよねぇ。疲れ取れるし、病気減ったし」


「飯も美味いし……あ!あっくんの蕎麦も美味いよ?食う?」


「いえ、それはまたの機会の楽しみに」


食い倒れツアーになりそうだ。


カエデが少し慌てる。


「そっか。そんじゃひとっ風呂浴びる?」


「いや、姉様より先に頂くわけには……」


「確かに!お豆ちゃんスネそう!」


のんちゃんが笑う。



カエデは周囲を見渡す。


村人達の表情は明るい。


余裕がある。


それは。


“ただ生き延びている村”ではなく。


“暮らしている村”の顔だった。


「露天風呂とか、夜かなり綺麗だよー。今度、泊まりでおいでね!」


のんちゃんが笑う。


「はい。ぜひ」


カエデも自然に微笑んだ。



温泉を後にし。


東の橋へ向かう。


巨大な木製橋。


荷車が安定して行き交っている。


「これ、全部村で?」


カエデが橋を見上げる。


「うん」


「スズとたくろーさんが主体だけど、ルノア組と村民も総出でやったねぇ」


若頭が橋を軽く叩く。


「自信作っす!」


「あんた大体流されてたじゃん」


「26回っす。殿堂入りっす!」



橋の中央。


カエデは足を止めた。


遠くに村が見える。


煙。


畑。


増え続ける家。


人の流れ。


平和だった。


「……不思議な村ですね」


カエデがぽつりと呟く。


「そう?」


「はい」


少しだけ間を置いて。


「姉様が気に入る理由が、少し分かりました」



「んじゃ最後、工房見てく?」


のんちゃんが振り返る。


「お願いします」



ルノア組の隣。


そこには巨大な工房区画が広がっていた。


工房区画へ入った瞬間。


空気が変わる。


熱気。


鉄の匂い。


飛び交う怒号。


鳴り響く金属音。


ここだけ、まるで戦場だった。


カンカンカン!!


忙しく走り回る職人達。


木材。


鉄材。


加工途中の部品。


大量の道具。


その中心で。


スズが、職人達へ次々と指示を飛ばしていた。


「あ、おかえりです!!」


スズがこちらに気付き、大きく手を振る。


「おつかれー」


のんちゃんも軽く手を振り返した。


「さっきまで師匠来てたんですけどね!!」


「最近よく来てるねぇ」


「不動のカンカンが頻繁に……」


カエデが少し驚いたように呟く。


「あの、山引きこもりじーさんそんな大仰な呼び名なん?」


のんちゃんが素で引く。


「優秀な鍛冶師なので、何度も足を運び招聘したんですが……未だにですね」


カエデが小さくため息をついた。


「なるほどねぇ」


のんちゃんは苦笑する。



工房の奥では。


たくろーが図面を広げ、職人達と何かを話し込んでいた。


その横では、巨大な木材が滑車で吊り上げられている。


声をかけるのも忍びない雰囲気だった。


「それじゃ、組戻ろっか」


のんちゃんが振り返る。


「はい」


カエデも静かに頷く。



そして。


ルノア組へ戻ってきた三人は。


少し異様な空気を感じ取った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ