第66話 ドラゴンが居る村
三章
第66話 ドラゴンが居る村
「……また増えてねぇか?」
朝。
村長宅の窓から外を見て、たにしが言った。
「増えてるねぇ」
のんちゃんが苦笑する。
村の入口。
見慣れない旅人たちが立ち止まり、上を見上げている。
視線の先にあるのは、ルノア組本部の屋上。
そこにいる巨大な影。
ドラゴンだった。
「完全にアレ目的だな」
たにしがため息をつく。
「噂、広がるの早い」
れんかが淡々と言った。
◇
「うわ、本物だ……」
「でか……」
「マジでいるんだな」
そんな声が村のあちこちから上がる。
そっちはまだいい。
問題は——
村長宅の窓の外。
知らない顔がじーっとリビングを覗いている。
そして。
「うわっ!卵見えた!」
「こっちからも見えてんだよ!」
「すみません!!」
去っていく。
「普通に怖ぇよ」
◇
「これさぁ」
のんちゃんが笑う。
「もう完全に観光地じゃん」
「やめろその言い方」
たにしが即答する。
「すごく鬱陶しい」
れんかが気だるそうに言う。
◇
表では。
「あ、窓は見学ポイントじゃないので!!」
スズが誘導していた。
「導線整備します!!案内板も建てないと!!」
「案内すんじゃねぇっ!」
「大人気です!!」
「話を聞けっ!」
◇
また。
コンコン。
窓が軽く叩かれる。
「すみません、卵って写真撮っていいですか?」
「ダメに決まってんだろ!帰れ!!」
たにしが叫ぶ。
「あとここ民家な?」
「民家なんですか!?」
「民家だよ!!」
◇
「これさぁ」
のんちゃんがぼそっと言う。
「村っていうより、テーマパークよね」
「やめろ」
「温泉とドラゴンとたこ焼きの村。ドラタコワールドへようこそ」
れんかが色々諦めたように言う。
「微妙にダサいネーミングセンスだなっ!」
その横で。
あっくんが真顔で言う。
「ドラゴン見ながら食べる朝食、需要あると思う」
「ドラゴン饅頭とか作ちゃう!?」
「…のんちゃん気軽に言うな。あっくんは作っちゃう子だ」
「…こしあんかな…カスタードも…形をハナにして…」
ブツブツ言いながら、あっくんはキッチンへ戻っていく。
「ハナの形にしたら、それはもうハナ饅頭だろ…」
「中にドラゴンの肉詰めるのかも」
「それならドラゴン饅頭か!じゃねぇわ!」
「まぁでもさぁ」
ひーちゃが少し笑う。
「人が来るのは悪いことじゃないよねぇ」
たにしは窓を見る。
ドラゴン。
それを見上げる人々。
そして。
窓の外から覗いてくる顔。
「だから覗くなっつの!」
たにしが叫ぶ。
のんちゃんが笑う。
「人気者って大変だねぇ」
たにしはため息をついて言った。
「……これ、絶対そのうち受付とか作るやつだろ」




