第7話 はじめての収穫
一章
第7話 はじめての収穫
畑仕事を始めて三日目。
「……なぁ」
朝。
たにしは畑の前で固まっていた。
「どうしたの?」
ひーちゃが隣に来る。
たにしは無言で畑を指差した。
「いや、成長早すぎん?」
「おぉ」
たくろーも目を丸くする。
昨日まで芽だった小麦が、
もう膝くらいまで伸びていた。
葉も青い。
明らかに育ち方がおかしい。
「怖っ」
れんかが真顔で呟く。
「72時間ってマジだったんだ……」
「ゲームだからねぇ」
のんちゃんは慣れた様子で畑を見ていた。
「いやお前順応早すぎだろ」
「でも助かるじゃん」
「まぁそうだけど」
その時。
【収穫可能】
青白い文字が浮かんだ。
「出た」
「便利UI」
「あっくん、これ食えそう?」
「あー……大丈夫そう」
「その“そう”やめろ」
たにしが頭を抱える。
◇
「すごーい!」
あいりが小麦を抱えて走る。
「こら転ぶ!」
のんちゃんが慌てて追いかけた。
その横で、
こはるはじゃがいもを持っていた。
「まるい」
「芋だからな」
「かわいい」
「そうか?」
たにしは苦笑する。
畑の規模はまだ小さい。
だが、
確かに“収穫”だった。
自分たちで直した井戸。
自分たちで耕した畑。
そこから、
ちゃんと食べ物が出来ている。
それが妙に嬉しかった。
「村っぽくなってきたねぇ」
ひーちゃが笑う。
「まぁな」
たにしは空を見る。
青い。
異世界に来てから、
まだ数日。
でも、
少しだけ。
ここで生きる感覚が出てきていた。
◇
夕方。
焚き火の周りには、
湯気の立つスープが並んでいた。
「うっま!」
のんちゃんが目を輝かせる。
「あっくん天才じゃん!」
「……普通」
「普通ではない」
たくろーが断言する。
採れたての野菜。
ベルクから交換した塩。
森のキノコ。
野ウサギの肉。
たしかに、
今までで一番まともな食事だった。
こはるも夢中で食べている。
「あむあむ」
「あいり、それ肉ばっか食うな」
「やさいもたべてるよ!」
「芋だけじゃねぇか」
笑いが起きる。
その空気を見ながら、
ひーちゃがぽつりと言った。
「なんか……ちょっと安心した」
空気が静まる。
「ちゃんと食べれてるなって」
「あー……」
のんちゃんも頷く。
「子ども達、元気そうだしね」
たにしは少し黙った。
正直、
自分も不安だった。
ここが本当に異世界なのか。
元の世界へ帰れるのか。
そもそも、
生きていけるのか。
でも。
目の前では、
子ども達が笑っている。
飯を食っている。
それだけで、
少し肩の力が抜けた。
「まぁ」
たにしはスープを飲む。
「とりあえず、生きれてるな」
「タイトル回収みたいに言うな」
「うるせぇ」
たくろーが笑った。
◇
その夜。
村の石碑が淡く光る。
【開拓レベルが上昇しました】
【新規施設を解放】
【簡易宿屋】
【簡易浴場】
「風呂!?」
れんかが即反応した。
「作る」
「食い気味だな」
「あいり毎日汗臭いし」
「れんかもだよ!?」
姉妹喧嘩が始まる。
その横で、
たにしは表示を見ていた。
「……宿屋か」
ベルクの言葉を思い出す。
水がある村には、人が集まりますから
少しずつ。
本当に少しずつ。
ルノア村は、
“村”になり始めていた。




