第6話 畑と行商人
一章
第6話 畑と行商人
村の外れ。
放置された畑は、
想像以上に酷かった。
「うわぁ……」
のんちゃんが顔をしかめる。
土は固い。
雑草だらけ。
半分くらい石まで転がっている。
「これもう畑っていうか空き地じゃ?」
れんかが冷静に言った。
「元畑だからセーフ」
「何が?」
たにしは鍬を肩に担ぎながらため息をつく。
「なんで異世界来てまで農作業なんだよ……」
「生きるためでは?」
「正論やめろ」
その横で、
たくろーが土を触っていた。
「水戻ったから多少マシになると思う」
「井戸って大事だったんだなぁ」
「インフラ舐めんな」
たくろーが笑う。
ひーちゃは雑草を分けながら首を傾げた。
「でも、この世界の作物ってどう育つんだろ」
「ん?」
「だって現実なら収穫まで何ヶ月とかだよ?」
空気が止まる。
「……あ」
たにしが嫌な顔をする。
「そういや」
「このゲームの小麦、三日で育ってたよね」
のんちゃんが言った。
「ゲームだからな」
「でも今って現実寄りじゃん?」
「確かに」
たくろーが腕を組む。
「じゃあどうなるんだこれ」
沈黙。
その瞬間。
全員の視界に、
青白い文字が浮かんだ。
【成長予測:72時間】
「ゲームだったわ」
「助かったような怖いような」
たにしは空を見上げた。
「いや怖ぇよ。三日で育つ小麦」
「異世界だからねぇ」
のんちゃんは気楽だった。
◇
「村長ー」
「今度はなんだ」
「種足りん」
「また俺ぇ!?」
たくろーが笑う。
「倉庫にチュートリアル用の初期種ちょっとあったけど、全然足りん」
「まぁそうなるか」
「森で採れる芋系植えれないかな」
たにしが言う。
「野生種ならあるかも」
「あっくん、食えるやつ分かる?」
「あー……多分」
「“多分”が怖ぇんだよ」
たにしが頭を抱える。
その時だった。
遠くから、
声が聞こえた。
「おーい!」
全員が振り向く。
のんちゃんだった。
「ただいまー!」
「早かったな」
「あと人拾ったー!」
「犬猫みたいに言うな!」
馬車を引いた男が、
慌てて帽子を取る。
「ど、どうも……」
痩せた男だった。
茶色の外套。
荷馬車。
商人っぽい。
「行商人のベルクです……」
「なんで連れてきた?」
「西の街道でスライムに馬車止められてた」
「そんな軽いノリでイベント起きる?」
ベルクは周囲を見回し、
驚いた顔をした。
「……井戸、直したんですか?」
「昨日な」
「この村、ずっと放置されてたのに……」
「お前そんな過疎村来て大丈夫なん?」
「本当は素通り予定でした」
「だろうな」
ベルクは苦笑した。
「でも井戸が直ってるなら、話は別です」
「ん?」
「水がある村には、人が集まりますから」
たにし達は少し黙る。
その言葉は、
妙に現実味があった。
◇
夕方。
ベルクの荷馬車の前に、
全員集まっていた。
「塩ある!」
「砂糖も!」
「服だ!」
あいりが目を輝かせる。
こはるは干し果物を見ていた。
「甘いやつ……」
「美味しいよー」
ベルクが笑う。
たにしは馬車を覗き込みながら呟いた。
「普通に文明だ……」
「村だけ原始生活だったからねぇ」
のんちゃんが言う。
ベルクは少し真面目な顔になった。
「ただ、この辺は魔物が増えてまして」
「へぇ」
「定期的に来る商人、かなり減ったんですよ」
「つまり?」
「この村へ継続して来るには、契約が必要になります」
その瞬間。
【定期交易ルートを開放しますか?】
【必要開拓ポイント:100】
「うわ出た」
「高っ」
たにしが顔をしかめる。
「今何ポイントだっけ」
「井戸で50」
「足りねぇ……」
「でもいるよねぇ」
のんちゃんが塩を見つめる。
「塩はいる」
「服も欲しい」
「釘も足りん」
「薬瓶も欲しいなぁ」
ひーちゃも呟く。
ベルクは苦笑した。
「まぁ、急ぎませんよ」
「いや」
たにしは畑を見る。
荒れた土地。
子ども達。
空っぽの倉庫。
「……多分これ、必要経費だわ」
村ゲーの現実が、
じわじわ押し寄せていた。




