第5話 とりあえず生きてみる
一章
第5話 とりあえず生きてみる
朝。
「おなかすいたー」
あいりの一言で、
その日が始まった。
「さっき食べたでしょ」
のんちゃんが苦笑する。
「でもなんかおなかすくー」
こはるも眠そうな顔で言った。
たにしは焚き火の前で、
干し肉を齧りながら眉をひそめる。
「……なぁ」
「ん?」
「子どもら、ちゃんと足りてんのか?」
空気が少し静まった。
のんちゃんとひーちゃが顔を見合わせる。
「美味しいって食べてはいるけど」
「昨日から気になってた」
ひーちゃがこはるの頭を撫でながら言う。
「ゲームみたいに“食べたらOK”じゃないよね、多分」
「むしろ体に影響あるものは食べられない仕様であって欲しいな」
たくろーが腕を組む。
「栄養とか睡眠とか、普通に必要そう」
「育ち盛りだしなぁ」
たにしは二人を見る。
こはるはパンをもぐもぐしている。
あいりは干し肉と格闘していた。
「かたーい」
「顎鍛えろ」
「やだー」
その時。
「あ」
あっくんが小さく声を漏らした。
「ん?」
「ステータス」
全員が顔を上げる。
あっくんは空中を払った。
青白いUI。
その中の項目を指差す。
【空腹度:78/100】
「そんなんあったのかよ」
たにしが呆れる。
「ゲーム時代こんなんあったっけ?」
「生活アプデ後に追加されたやつ」
れんかが答えた。
「途中で辞めた人知らないと思う」
「うわ古参マウントだ」
「別にしてないし」
れんかは淡々としている。
のんちゃんが子ども達を見る。
「こはる見せてー」
「んー」
【空腹度:92/100】
「あいりは?」
【空腹度:89/100】
「……大丈夫そう?」
「一応、数値的には?」
ひーちゃが少し安心した顔をする。
たにしも息を吐いた。
「まぁ数値見えるなら対策のしようあるか」
「問題は今後だねぇ」
のんちゃんが言う。
「この人数、毎日食わせるって結構大変だよ?」
「倉庫の初期物資にパンや果物や甘味もあるけど、微々たるもんだしなぁ。」
「急に村運営の現実見せるな」
「現実だもん」
たくろーが井戸水を飲みながら言う。
「保存食もいるな」
「肉ばっかじゃ限界あるし、子どもたちには可能な限りバランス良くは食べさせてあげたいしなぁ」
「畑いるかぁ……」
たにしが空を見る。
すると。
【新規開拓ミッション】
【畑を修復しよう】
「うわタイミング」
「絶対聞いてたろこのゲーム」
たにしが嫌そうな顔をした。
ソニアが慌てて走ってくる。
「た、大変です!」
「お前毎回走ってくんな」
「畑が、その、ほとんど枯れてて……!」
「知ってた」
「あと倉庫のお芋、虫さんが……」
「最悪!」
のんちゃんが顔を歪める。
ジージは縁側でお茶を飲んでいた。
「ほっほっほ。昔はもっと畑あったんじゃがのぉ」
「お前も働けぇ!」
たにしのツッコミが村に響く。
その横で。
こはるが、
たにしの服をちょんと引っ張った。
「たにしー」
「ん?」
「ごはん、なくなる?」
たにしは少し黙る。
小さな手。
不安そうな顔。
それを見て、
たにしは頭を掻いた。
「……なくならんようにする」
「ほんと?」
「村長だからな」
口にした瞬間。
全員がちょっとだけ驚いた顔をした。
「あ」
「今ちょっと村長っぽかった」
「うるせぇ」
たにしは顔を逸らす。
だが、
その横で。
ソニアは少し嬉しそうに笑っていた。




