第4話 喉も渇くし腹も減る
一章
第4話 喉も渇くし腹も減る
翌朝。
「……んぁ?」
たにしは硬いベッドの上で目を覚ました。
「ちゃんと身体いてぇ……。つか向こうの俺等どーなってんだろうな…。」
見上げた天井は木製。
聞こえるのは鳥の声。
そして。
「きゃあああっ!?」
悲鳴。
「うるっさ!?」
たにしは気だるく起き出す
◇
「す、すみません!また落としましたぁ!」
村の中央。
井戸の前で、
ソニアが半泣きになっていた。
井戸の中を覗くと、
木桶が落下している。
「朝から何してんの……」
のんちゃんが呆れる。
「水汲みを……」
「それは見れば分かる」
たにしが頭を押さえた。
井戸を見る。
石造り。
だが、
ロープは途中で千切れ、
滑車も歪んでいた。
「あー……これ完全に壊れてんな」
たくろーがしゃがみ込む。
「使えないの?」
ひーちゃが聞いた。
「使えなくはないけど、毎回桶落とすと思う」
「わ、私そんなに落としてません!見ててください!」
ソニアが反論する。
その瞬間。
ボトン。
井戸の奥から、
さらに何か落ちる音。
「今落ちたよね?」
「……はい」
「何個目?」
「七個目です」
「落としすぎぃ!」
たにしがツッコむ。
すると、
全員の視界に文字が浮かんだ。
【チュートリアルクエスト】
【枯れた井戸を修復しよう】
「出たよ」
「生活系チュートリアル」
「これ長いやつだ」
たにしが嫌そうな顔をする。
その横で、
たくろーは井戸を触っていた。
「んー……滑車とロープ交換したらいけるな」
「出来そう?」
「材料あれば」
「よし村長」
「だから俺を見るな」
たにしは即座に返した。
「木材は西の森で取れると思う」
のんちゃんが言う。
「あっくん、斧系持ってたっけ?」
「あー……ハンマーなら」
「破壊寄りだなぁ」
「でもいける」
「いけるんかい」
れんかは井戸を覗き込みながら呟く。
「水ないとお風呂入れないじゃん」
「そこ!?」
「大問題だけど?」
「女子つえぇな……」
たにしはため息をついた。
◇
「村長ー」
「なんだ」
「釘足りん」
「だから俺に言うな」
「村長だろ」
「万能役職じゃねぇんだよ」
たくろーが笑う。
村の空き倉庫。
そこで、
たくろーは古い木材を解体していた。
「使えそうなのは再利用するわ」
「器用だなお前」
「DIY動画めっちゃ見てたからな」
「現代知識の使い方が地味」
その横で、
あっくんが無言で木を割っている。
ゴッ!!
「怖っ」
「……楽しい」
「ハマってんじゃねぇか」
のんちゃんは外から蔦を抱えて戻ってきた。
「ロープ素材になりそうなの取ってきたー」
「仕事早ぇな」
「採集者舐めんな」
ひーちゃは薬草を仕分けしている。
「これ傷薬に出来そう」
「ママみたい」
あいりが言う。
「実際ママだしねぇ」
こはるは、
ジージの隣でぼんやり座っていた。
「じーじー」
「なんじゃー」
「おなかすいた」
「ワシもじゃ」
「こはるはともかく、ジジィは働け!」
たにしのツッコミが飛ぶ。
「ジジィじゃないジージじゃ。最後にハートをつける感じで呼んどくれ」
「うるせぇよ!老害NPC!」
「ほっほっほ。昔はのぉ、この村も賑やかじゃった」
たにしは少し黙る。
村を見る。
崩れた柵。
空き家。
雑草。
確かに、
放置されたゲームの初期村そのものだった。
「……まぁ」
たにしは頭を掻く。
「少しくらいマシにしてやるか」
その時だった。
「たにしさん!!」
ソニアが駆けてくる。
そして。
ズデン!!
「ぎゃっ」
盛大に転んだ。
「お前毎回転ぶの?」
「い、勢いよく走るとたまに……」
「たまにの頻度じゃねぇ」
ソニアは涙目のまま、
何かを差し出した。
「こ、これ倉庫にありました!」
古びた鉄の部品。
たくろーがの目がキラリ。
「お、これ滑車の軸やん」
「使える?」
「いけるな」
空気が少し明るくなる。
◇
夕方。
ギギギ……と音を立て、
新しいロープが回る。
木桶が、
ゆっくり井戸の底へ落ちていった。
静寂。
そして。
ちゃぷん。
「……!」
ソニアが目を見開く。
たくろーがロープを引く。
重い。
だが、
確かな感触。
やがて。
木桶いっぱいの水が姿を見せた。
「おぉぉぉ!」
あいりが歓声を上げる。
ソニアは震える手で桶を抱えた。
「……水、です」
「そりゃ水だろ」
「そうじゃなくて!」
ソニアは泣きそうな顔で笑った。
「また、みんなで使えるんだって……」
その瞬間。
【村のインフラが改善されました】
【村経験値を獲得】
【開拓ポイント:50】
「うわゲーム出た」
「ほんとに村ゲー始まったなぁ」
たにしは空を見上げる。
夕焼けが、
ルノアの村を赤く染めていた。




