第60話 戦闘開始
第三章
第60話 戦闘開始
轟音。
爆炎。
山道が炎に呑まれる。
「っぶな!?」
たにしが転がるように飛び退く。
熱風。
木々が燃える。
地面が焦げる。
「うおぉぉぉっ!?」
後ろの山賊達が半泣きだった。
「だから言ったんだよドラゴン怖ぇって!!」
たにしが叫ぶ。
「言ってる場合ですかぁ!!」
スズも叫ぶ。
その時。
のんちゃんが、
岩場を蹴って飛んだ。
「よっこらしょっっとぉ!!」
連射。
ガガガガッ!!
矢が、ドラゴンの顔周りへ。
だが。
硬い。矢は弾かれる。
「うわ硬っ!!」
「ドラゴンだからな!!」
たくろーが叫ぶ。
だが。
ドラゴンの視線が、
完全にのんちゃんへ向いた。
「お、釣れた」
「楽しそうだなお前!?」
次の瞬間。
ドラゴンが大きく息を吸う。
「ブレス来るぞ!!」
たにしが叫ぶ。
「たくろー正面!!」
「おう!!」
たくろーが前へ出た。
大盾。
地面へ叩き込む。
魔力障壁展開。
轟炎。
真正面から、
爆炎が盾へ激突した。
轟音。
熱。
衝撃。
「っぐ……!!」
地面を削りながら、
たくろーが踏み止まる。
「のんちゃん牽制!!」
「はいよっ!」
さらに矢が飛ぶ。
ドラゴンの視線が揺れた。
「今!! あっくん!!」
「うん」
低い返事。
炎の横。
あっくんが前へ出る。
巨大な大ハンマー。
両手で振り上げた。
そして。
ドゴォォンッ!!!
轟音。
ドラゴンの前脚へ、
重量そのものを叩き込む。
衝撃で、
地面が揺れた。
ドラゴンが、
わずかによろめく。
さらに。
バキィッ!!
一枚。
黒赤い鱗が、
弾け飛ぶ。
「剥がれた!!」
スズが目を輝かせた。
「うおぉぉぉ素材ぃ!!」
「お前危ねぇから下がってろ!!」
たにしが叫ぶ。
「戦えるです!!」
スズが小型ハンマーを振る。
「鍛冶師なめないでください!!」
「いや知ってるけど前出んな!!」
その瞬間。
ドラゴンの尾が、横薙ぎに振るわれた。
「っ!?」
狙い。
前に出ていたスズ。
「スズ下がれ!!」
だが。
間に合わない。
次の瞬間。
ギィィンッ!!
たにしの剣が、
強引に尾を逸らした。
直後。
「うおっ!?」
衝撃。
たにしの身体が、
そのまま吹き飛んだ。
地面を転がる。
「たにしさん!?」
スズが青ざめる。
「っっってぇ……!!」
たにしが顔をしかめながら起き上がる。
「うっぷ…酒戻ってきた…」
でも。
尾は逸れた。
スズには、
届いていない。
ドラゴンが、
再び大きく息を吸う。
「二発目来る!!」
即座。
たにしが叫ぶ。
「全員散れ!!」
「たくろー左寄せろ!!」
「のんちゃん上取れ!!」
「あっくん足狙え!!」
全員が、ほぼ反射で動く。
長年の連携だった。
その時だった。
「たにしさぁぁぁん!!」
遠く。
山道の下。
「……は?」
全員固まる。
ひーちゃ。
れんか。
あいり。
こはる。
そして、ハナ。
「なんで来たぁぁぁぁぁっ!?」
たにし絶叫。
「ご、ごめんなさぁい!」
ひーちゃが困ったように叫ぶ。
「こはるが止まんなくてぇ!!」
「れんかまで何してんだよ!!」
「保護者役」
れんか真顔。
「ひーちゃだけだと不安だった」
「たにし絶対怒るし」
れんかは、燃える山を見上げる。
「うわぁ……」
「普通に災害」
「冷静だなお前」
その時。
こはるが、ハナを抱っこしたまま前へ出た。
「おい!!」
たくろーが止める。
だが。
こはるは、ドラゴンを見上げたまま言う。
「ハナがね」
「どらごん、たすけてって言ってる」
空気が止まる。
ドラゴンの瞳が、
わずかに揺れた。
「……きゅぅ」
ハナが小さく鳴く。
そして。
こはるは、ぽやっとしたまま続けた。
「だいじょうぶ。こわくないよ」
ドラゴンが、
低く唸る。
「グルル……」
敵意。
怒り。
でも。
それだけじゃなかった。
こはるが、
じっと山奥を見る。
「……たまご?」




